「地面師」とは、不動産業界というわけではありませんが、報道の世界でも、不動産を生業とするのではなく、不動産をタネに金主を食い物にする連中たちを指す蔑称です。その意味で、人間扱いをする必要はありません。
見せられた資料のうちチェックを入れる部分は、土地部分の「乙欄」に出てくる(根)抵当権者た抵当権順位、極度額、差押の有無といったところでしょうか。
たとえば、抵当権順位の中で「4番抵当」「6番抵当」というのが入っていたら、取引物件としては権利関係が複雑で、まずは売り物にするまでに時間が掛かります。こんな紛いモノ物件にカネを出すこと自体危うい状況を招きます。「利回りがいい」とか関係ありません。いわゆる「カス物件」というところでしょうか。
こういった権利関係が複雑な物件は、弁護士すら嫌がる物件で、要は動かしようがない「塩漬け物件」なのです。だから、カネを突っ込んでも動かないわけです。
例を挙げると、地面師たちは「動かすために最初に100万円が必要」「1,000万円を売り手に掴ませて、抵当権を消す段取りができるようになればカネが生きる」だとか、何とかカネを出させようとします。
悪どい手口になると、所有者が売るつもりもないのに「売る」と信じ込ませて、カネをせしめようとします。その際には、弁護士や宅地建物取引業者らを引き合わせます。引き合わされた人物がリアルに登場することにより、「取引がリアルに行われているのだ」との錯覚に陥るように仕組まれているわけです。
ただ、ちょっと待て!地面師たちは、経営がおかしくなった法人(医療法人も含む)の所有物件のうち、不動産業界や地面師たちの間で有名な物件を引っ張ってきます。「動かしているのは自分だ」と誇示します。
そして、引っ掛けるトリックとして、東京地検特捜部検事OBや警視庁参事官級OBの名前を具体的に挙げ、これらOBたちも関わっているかのような口振りで、「自分の支援者」みたいなことをペラペラと話します。そして右翼の大物の名前や、指定暴力団の大幹部の名前まで出し、「世話になった」「若い頃にカバン持ちをやっていた」などと吹きまくります。
確かに、相手も並外れた情報力を持っており、「どこから仕入れてきた情報なのか知らないが、妙に合っている」時もあります。これは私が報道記者出身だから分かるのであり、インターネットでは決して引き出せない、フェイス・トゥー・フェイスのアナログ情報なのです。情報の扱いになれていない普通の人は、その時点でカネを出してしまうかもしれませんね。
現実に出してしまった人を見ていますが、暴力装置(指定暴力団の大幹部の名前)を使い、相手に恐怖感を抱かせる恐喝まがいの方法でカネをせしめるような、えげつない方法までやってのけます。そういう場合は、連絡を断ち切ることが一番です。
信じ込ませるために、どういう罠を仕掛けてくるかといえば、分かりやすい事例が「投資リターン」です。併せて少ない資金で大きなリターンを得る「レバレッジを利かせた仕組み」をちらつかせます。
また、地面師と不動産ブローカとの相違点は、地面師はあらゆる手段を用いて善良な市民を囲い込み、逃げられなくした上でカネをせしめようとしますが、不動産ブローカーは「ダメだ」となったら手を放します。そして次の物件に話を移します。手離れがいいといった方がいいかもしれません。
後は、地面師たちは、人の弱みに付け入ってきます。カネ(借金関係)や異性関係をタネにいろいろな揺さぶりを掛けてきます。最も付け入りやすいのは、「一発大逆転のもうけ話」です。そういう意味では、「うまい話には裏がある」というたとえは、先人たちの知恵でしょう。
さらに小銭を貸すように言い寄ってきます。貸した側は返してもらおうとするので、いつまでも付き合う羽目になり、しばらくすると100万円単位がなくなっているのなんてザラにあります。
小悪党程度なのは「地面師の風上にも置けない野郎だ」と憤る名の知れた地面師もいますが、「目くそ、鼻くそ」みたいなもので、どちらもロクなものではありません。そんな名の知れた地面師たちは、詐欺容疑で塀の向こうに落ちるか落ちないかのスレスレの所を歩いています。
つまり、逃げられる方法を考えながら動き、カモを始終探しているますので、カモになった方は罠に掛かった鴨のように、身動きが取れなくなる状況に追い込まれてしまいます。気付いた際には1,000万円以上のカネが消滅していたなんてことがないよう、細心の注意が必要でしょう。
その際は、やはり不動産の現場慣れをしているFPや、取材経験が豊富なFPあたりに付き添いを依頼するのが、地面師たちに引っ掛かるのを未然に防ぐ意味でも必要です。FP料2万円をケチって1,000万円銭失いでは本末転倒ですね。
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次回は、証券化手法を用いた地面師、証券詐欺師たちの手口を見ていきましょう。証券化手法を用いた地面師たちは、手口を複雑化し、本質を見えにくくさせます。そこにカネを突っ込む――やはり危ないですね。「参考になったかな」と思われた方は、下のリンクボタンをポチッと押してください。
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