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米国大統領選第1回討論会
[日本の政治]
2020年10月1日 0時22分の記事

9月29日(米国時間)に行われた米国大統領選挙の1回目の討論会。今回の討論会についての評価は以下の記事のように言われていますが、ざっとポイントは3つあると考えます。

「【ノーカット】米大統領選テレビ討論会」(2020年9月30日 TBS)

「アメリカ大統領選TV討論会『ひどい討論会だった』 米メディア」(2020年9月30日 NHK)

「第1回討論会、約6割がバイデン氏に軍配 CNN世論調査」(2020年9月30日 CNN)

「大統領選討論会、“もうろくしたバイデン像”が覆される結果に」(2020年9月30日 ハフィントン・ポスト)

「トランプ氏の攻撃姿勢、再選に必要な支持遠ざけた恐れ−討論会に幻滅」(2020年9月30日 ブルームバーグ)


(※ 本記事は掲載から1週間が経つと有料記事になります)

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選挙のポイントは、人々がこのような討論会をみて、いかに思い、いかに投票するかにあります。要するにアメリカ人がどう思うかということにポイントがあるわけですが、私にはその思考の傾向と投票行動について詳細なデータや分析がありませんので、選挙結果については軽々に結論をだせません。選挙とは有権者がどう思うからですから、国際情勢において、世界の構造的問題において真実はどうなのかということとは別の話です。まず、米国の世論動向について考えるということにポイントがあります。
そして、あくまでも日本人の私がこの討論会を観て、どのように思ったかということが本文の本質ですが、このことはどのようにアメリカ人が思うかということを私が考える上での一つの基点でもあります。
さて、討論会を観ていると、言っていることは明らかにバイデン氏の方が良いと考えます。特に新型コロナウイルス防疫対策について、トランプ氏の発言は目茶苦茶です。恐らくトランプ氏の論調は、これまで右派世論にかなり引っ張られて目茶苦茶になったと考えます。以下の記事には、トランプ氏が早期の段階で新型コロナウイルスの脅威について認識していたことが書かれています。そして、パニックを起こしたくなかったので、結局、隠ぺいということになったと記事にはありますが、その本質は、大統領選挙の年、マスクを外せという右派世論にかなり引っ張られたことが大きなポイントと考えます。
新型コロナウイルスに対して記事にあるようにしっかりと危険性を認識しているのに、それとはまったく逆のトランプ氏のこれまでの新型コロナウイルス防疫対策についての様々な言動は、イカレタ右派世論に引っ張られたことを明らかに示していると考えます。ただ、いずれにせよトランプ政権の新型コロナウイルス防疫対策は目茶苦茶で、そのことによって多くの人々が犠牲になり、さらに収束していない疫病が米国経済の足を大きく引っ張っています。疫病が流行っている時に経済がまともに機能しないのは子どもでもわかることですが、まずトランプ政権がすべきことは、感染の収束であったのです。

「トランプ氏、コロナの真の脅威を知りつつ『隠ぺい』 ウッドワード氏新著」(2020年9月10日 CNN)

内政についてはバイデン氏は明らかに良いことを言っています。ただ、これは私の価値判断なので、米国人がどのように考えるかはまた別の話です。
外交においては、これまでトランプ政権の外交方針を私は評価してきました。TPP離脱は大変に評価すべきことですが、さらにそれ以上に評価すべきことは冷戦構造を終焉させることを一貫して行ってきたことです。これは世界的に行ってきていて、東アジアでは主に朝鮮戦争と日米同盟がこのことに関わります。
第二次大戦後、冷戦期を通じて、米国と同盟を結ぶことで成り立ってきた国々は基本的にこの方針に反発しています。なぜなら、この冷戦構造をベースに存在してきた人々はその基板を完全に失うからです。日本で言えば、この構造は55年体制の自民党一党独裁政権であって、産業構造はこのことに準じています。高度経済成長はそのような中にあったと言うことなのです。
アベ政権というのはこの55年体制の申し子の人々によって運営されたもので、その核心的な目的は必然、冷戦構造の延長、55年体制の延命です。
一方、この日本側の構造と双子であるのが、韓国の朴正煕元大統領をはじめとする韓国の保守派です。
どうして、アベ政権や日本のメディアが反文在寅政権となるかは、この東アジアの冷戦構造を文在寅政権が終わらせようとしていること、まさにその一点につきます。日本テレビの『ミヤネ屋』で、アベ政権への批判はほとんどしないのに、文在寅政権への批判は驚くほど良くするのは、まさにこのことに関係しているのです。ホントにバカげた番組です。

トランプ政権はこの冷戦構造を終わらせようとしてきましたから、当然、トランプ氏とアベ氏とはまったく正反対の位置づけで、そりが合うはずはないのです。
このことを象徴するのが以下の記事で、在韓米軍を撤退させようとするトランプ米大統領に対して、アベ氏がそれを止めたと書かれています。もちろん、トランプ米大統領は北朝鮮との和平を成立させた上で、在韓米軍(及び在日米軍)の撤退をしようとしているわけで、そのために何度も米朝首脳会談を行ってきたのです。そして、その米朝会談、和平、東アジアの平和を一番阻害してきたのがアベ政権なのです。この急先鋒がアベ氏と河野太郎氏であったわけですが、東アジアの平和を阻害していることは米国も周辺諸国も皆承知していることなのです。したがって、この愚行・蛮行が今後の日本に大きく影を落とすことは間違いないでしょう。このようなことはすでにザ・フナイの連載では3年以上前から指摘してきて、分析通りになっています。

「『トランプ大統領の在韓米軍撤退、安倍首相が止めた』」(2020年9月1日 朝鮮日報)

バイデン氏ならトランプ氏とは逆に東アジアの緊張緩和は行われない可能性はかなりあるでしょう。よってトランプ氏の大きな功績はここにあると考えますが、トランプ政権が新型コロナウイルス防疫対策でまっとうなことをしてきていれば、今頃、大統領選挙はすでに不戦勝の状況であったことは間違いないので、大変にもったいないことをしました。
そのような冷戦構造をいよいよ終わらせようとしてきたのがトランプ米大統領ですが、今回の討論会では使っている価値観、論理は冷戦構造そのものです。ここが彼の一つの持ち味なのだと心から思いました。このことが今回の討論会で感じたポイントの二つ目です。
そして、3つ目のポイントは、発言の内容はともかく、両者の見た目、もっと端的に言うのならこの両者を動物的に観るのなら、明らかにバイデン氏は押されていることです。動物的には明らかにバイデン氏は弱いのです。司会者のクリス・ウォレス氏の方がバイデン氏より候補者としては良かったと言えるくらいのレベルです。このバイデン氏の動物的な弱さ、そして、この動物的なポイントが、今後、どのように展開していくかは、明らかにポイントと考えます。
テレビ討論会の最初はケネディとニクソンによるものでしたが、ケネディのテレビ映りが良くてそれが大きな勝因になったと言われます。この動物的な強さ、弱さはこのことと同種のことと考えます。選挙は人がどう感じるかと言うことなので、このような部分はとても大切なのです。選挙をやるとよくわかりますが、有権者は必ずしも発言や政策の内容では判断しないのです。
今回の討論会について、目茶苦茶な討論会という米国メディアの論調がありますが、これは明らかなバイデン擁護と考えます。そして、その擁護は、バイデン勝利という決め手は今回の討論会にはなかったということを明確に示しているのです。

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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