円安が進むと、輸出が有利になります。海外での売上高の円評価が大きくなるからです。海外からの観光客も増加し、日本の大型量販店や百貨店などでの買い物が増えます。
たとえば、輸出が有利になる理由としては、8,000円の製造コストの商品を10,000円で売る考えてみましょう。米国で販売する際には1ドル=80円なら125ドルで販売できます。
しかし、5月終盤のように1ドル=125円まで円安ドル高が進むと、その商品を80ドルで販売できます。125ドルで販売していた商品を、80ドルまで値下げしても、日本円では10,000円の売り上げを確保できるわけです。
つまり、日本円で同じ金額の売上や利益を確保でき、しかも米国での販売市場では大幅な値下げを実施でき、米国製の同等性能の商品に比べ販売力が大幅に向上します。同じ価格で販売し続ければ、売り上げや利益が増加します。
たとえば、1ドル=80円から同125円まで円安ドル高が進行し、米国内市場で100ドルで販売していた商品をそのまま100ドルで販売した場合、売上高は8,000円から12,500円に増加します。
日本円で同じ売り上げと利益を確保でき、米国内市場での値下げも同時にできるわけです。現地での価格を同一に維持しながら、日本円での売り上げと利益を増やすことができるわけです。円安の進行は、輸出で外貨を稼ぐ日本企業に有利に働きます。
日本企業でも米国内に生産工場を持っていれば、米国市場で毎期に1億ドルの利益を上げていると試算した場合、「米国内では1億ドルの利益のまま」ですが、1ドル=80円から同125円まで円安ドル高が進行すると、利益の円換算は80億円から125億円にまで増加します。
円安が進むと、為替差益の恩恵を受ける輸出企業の利益伸長を期待でき、株価が上昇しやすくなるという構図です。半面、ドル高が一気に進行した米国では、14年から15年にかけて、米国企業の利益が伸び悩み、国際通貨基金(IMF)が米国の成長率を引き下げる見通しを立てる事態を招きました。
輸出する日本企業とは正反対に、米国企業の商品販売力はマイナスになってしまったわけです。円安基調で日本の代表的な電機メーカーや自動車メーカーは、米国で「日本企業叩き」や「日本製品の不買運動」などを経験しています。
一方では日本企業は1990年代後半、円高ドル安が急激に進行し、1ドル80円を割り込む事態になり、国内生産体制を180度見直さなければならない状況になったことがありました。現時点とは正反対な状況です。
この時、石油化学プラントや自動車、電機製品の輸出を行っていた企業は、海外での調達率を80%以上に引き上げたり、海外に生産拠点を作ったりして、輸出コストと為替差損の両面からコストを抑える方策を採っていました。
当時の日刊産業紙の見出しは「海外調達率を○○%に引上げ」という見出しが、媒体こそ違え、日替わりで出ていたのを記憶しています。
生産拠点を海外に移転した結果、高度経済成長を支えた下請との取引を切ったり、到底不可能な取引価格を指値で提示したりするなどのマイナス面が強く出て、経営が行き詰まったり、工場を閉めたりする下請の中小企業が増えた事態になったのは、つい20年くらい前のことです。
現時点では円安ドル高に外国為替市場は振れていますが、何かのきっかけで同市場が反転し、円高ドル安が急激に進んだ場合はどうするのか――政府は全く考えていないでしょう。早い話、「ほどほどに」が一番いいわけです。
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