結論から指摘すると「他人の敷地の隣地を活用してインフラ管を敷設できます」。その結論を指摘すると「あー、よかった!」と言いながら、ホッとした表情を見せるご相談者がいますが、条件付きであることをきちんと説明し、その実行を求めると、さらにホッとした表情を見せてお帰りになります。
条件とは、「隣地の所有者の方との間で、上下水管やガス管といったインフラ設備の設置について同意をあらかじめ文書で取り付けておくこと」です。普通に近所付き合いをしていれば、たいていの場合は快く引き受けてくれるはずです。
その際には、設備設置の工事について、担当する建設業者とともに隣地の所有者を訪ね、建設業者の方から具体的な工事の方法と隣地にどのようにインフラ管が入るのか、隣地の敷地の原状復帰の工事はあるのかないのかなど、詳細を説明しておくと、すんなり事が運びます。着工前、着工後のあいさつなども欠かせません。ほんのちょっとした心配りで時とはスムーズに進んでいきます。
隣地をまたいでインフラ管を敷設法的根拠は――平成4年の判決では「ガス、上下水道、電気及び電話などは都市生活において必要不可欠のものといえるので、袋地の所有者等は、相隣関係を規律する隣地使用権に関する民法209条、囲繞(いぎょう)地通行権に関する同法210条、余水排泄権に関する民法220条、他人の土地に排水設備を設置できるも下水道法11条を類推して、他人の土地を通してガス、上下水道、電気及び電話などの配管、配線を袋地に導入することが許される」となっています。
また、「宅地の所有者は、他の土地を経由しなければ、当該宅地に給水を受け、下水を公流又は下水道等に排出できない場合において、他人の設置した給排水施設を使用することが他の方法に比べて合理的である時は、当該施設の効用を著しく害するなどの特段の事情がない限り、民法220条及び221条の類推適用により、当該給排水施設を使用することができる」ともしています。
何とも分かりにくい判決文ですね。端的な表現を使えば、「インフラ管は生活に必要な施設だから、隣地が水浸しになり、居住部分が浸水してしまうなど、隣地の所有者に著しい損害を与えないような通常の使用であれば、隣地を通すことができますよ」と指摘しているわけです。
そして、平成14年10月15日の最高裁判決では、「建物の汚水を公共下水道に流入させるため、隣接地(たとえば、持ち分のない位置指定道路など)を利用できる」としています。ただ、対象地が下水道の「排水区」に指定されている必要があります。
もっとも、修繕を行ったり、取引を円滑に行ったりする上で、隣接地の所有者との間で排水設備の設置について同意を取り付けておくと、後のトラブルを防ぐことができます。その前に、普通の近所付き合いの中で、隣地を使用する側がきちんと説明でき、隣地の所有者もきちんと納得していれば、問題が表面化しないと考えます。「説明責任」はきちんと果たしましょう。
そういうトラブルになる前にご相談をください。ただ、隣地の所有者が不安になるからトラブルになるわけで、専門的な部分から不安を取り除くと、安心して協力してくれるケースがほとんどです。普段の近所付き合いを大切にしましょう!『そうだね!」と思った方は、下のリンクをポチッと押してください。
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