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イクメン議員の虚構
[日本の政治]
2016年2月10日 23時53分の記事

「育休宣言」をした宮崎謙介衆院議員が、妻が出産において不安定な状況にあるときに、なんと不倫をしていたと『週刊文春』に報道され、問題となっています。漫画のような低劣なお話しで、政治の話としては何とも情けない限りのものです。

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この問題には二つの側面があると考えます。一つは妻に対する不貞行為という不倫、そしてもう一つは国民に対する政治家としての姿勢です。
妻に対する不貞行為という不倫行為は、妻との関係における問題です。しかし、それを人々がどう判断するか、宮崎氏の人物像がどのように判断されるか、政治家として人間性が信頼性できるのかというポイントになっていきます。
もう一つのポイントは、女性だけに子育てをさせないと言って「育休」という政策を政治家、それも国会議員として国民に対して主張し、その実践として自らの妻に対して献身的な姿をアピールし育休をとり、しかし実は妻の状態が安定的でない時に不貞行為を働いていて、妻への献身が疎かになっていたという、国民に対して述べられたことからは国民が想像すらできないほどに宮崎氏の言動にはギャップがあるわけです。これを簡単に言えば、政治家の国民に対する嘘ということですし、欺きと言うことです。
その虚構において今回の問題は重大であるわけです。つまり妻への裏切りだけではなく、国民への裏切りがあるわけです。したがって、浮気をしてしまったから政治家は身を律するというレベルでは明らかにないのです。

平気で嘘をつく
今回の件については、明らかに宮崎氏の国民に対して平気で嘘をつく姿勢があるものと考えます。本人も育休宣言をしたときに、売名行為かということに対して肯定はしていませんが、実は否定をしていません。そのような流れの中で今回のような件があったわけですから、国民に嘘をついても平気という心情が明らかにあるでしょうし、その本質は国民をなめていると言うことであると考えます。そのような方が政治家で国会議員をしていたのですから、その議員生活で一体、何をしてきていたのかと思います。多分、何もしていないでしょう。
きれい事を言って、その実、国民を欺くようなことをして、それが発覚し、説明責任を果たすという一連の流れがあるわけですが、週刊文春に記事が掲載されて、そのためのクライシスマネージメントをいかにするかをずっと考えていると思います。そこに国家・国民への政治家としての責任感はないでしょう。
この一連の流れ、実は甘利氏の賄賂疑惑の時と全く同じであると考えます。政治家として我が世の春を謳歌されていたお二人ですが、甘利氏は政策を語りながら裏では現金授受と権力を不当に行使したしてと疑惑を持たれ、宮崎氏は上述したようなことをしていたわけです。そこには確実に国民を欺くという本質があると考えますし、権力に溺れていた、もしくは権力をかさにきていたという姿があると思います。同時に、そこには微塵も公共性という観念はないものと考えます。それで説明責任を果たすというのですが、何を説明するのかと首をかしげます。説明をしたところで、国民の利益の何がはかられるのかわかりません。説明ではなく個人的な身の潔白の証明なのですが、甘利氏の場合は、それができませんでした。
また、今回の宮崎氏の件で「ハニートラップ」などという珍説がどこからともなく聞こえてくるのですが、これも甘利氏の疑惑において「嵌められた」ということがまことしやかに言われる構造と酷似しているものと考えます。
概観して、現状の与党の政治姿勢において、国民に平気で嘘を言ってもまかり通るという勘違いがあるのではないかと考えます。そのような雰囲気が蔓延しているように思います。これは国民と対話をする意志がないということも同時に意味しているものと考えます。

ナルシズムとエゴイズム
本ブログ「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸? 」(2016年2月9日)で、「エゴイズム」、「ナルシズム」、消費主義、快楽主義が社会に蔓延するとき、凡庸なリーダーであふれると指摘しましたが、まさに今回のケースはその典型でしょう。宮崎氏の言動にはナルシズム、エゴイズム、そして快楽主義、消費主義というものが非常に付きまとっています。そして、そこには当然、国民との絆や連帯はありません。彼にとって国会議員というのはステータスで、上記の4つのキーワードを満たすための道具でしかなかったでしょう。要するにセレブ気分の国会議員であったわけで、彼が政治をしてきていたとは到底思えません。だから、国会議員という職務において「育休」という概念が通用すると考えるのでしょう。
国会議員は、育休を世間に広げることをすべきと考えますが、当人がそれをすべきではないと私は考えます。これは子育てをないがしろにしろということでも、妻を助けるなという意味でもありません。ただ、政治家は国民の「命」を背負っている、そのような立場の人間が職務において空白は作るべきではないと私は考えるのです。場合によっては、そのような空白を作った故に、人の命が左右されるということになることもあると考えます。あまりにその責務は重いわけです。それに、国会議員に立候補するときにそもそもそのような責務が重い立場になることを承知であったのではないでしょうか。
もちろん、そんな覚悟はなかったから今回のようなことも生じるのでしょうし、国会議員において育休という概念も成立すると考えるのでしょう。すべては、セレブで軽くて、ナルシズム、エゴイズム、快楽主義なのであると考えます。
今回の件は、昨年の元自民党で暴言を吐いた武藤氏の件と人物像が酷似していると考えます。今や自民党にはそんな政治家しかいないのでしょうか。
上述したように「エゴイズム」、「ナルシズム」、消費主義・快楽主義ということが蔓延するとき、リーダーは凡庸になりますが、同時に危険な指導者も生まれる可能性が非常に高くなります。今の自民党をこれら4つのキーワードで見るとまた全く違う側面が見えてくるのではないかと考えます。もしくは、本質がみえるのではないでしょうか。そして、これが今の与党の政治の上から下までの本質であると私は考えます。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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