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平気で嘘をつく
[日本の政治]
2016年2月15日 23時49分の記事

丸川環境相が2月7日に長野県で行った追加被ばくに関する国の長期目標を巡る発言について、それが問題となった当初、丸川氏は発言の記憶がないなどと述べていましたが、12日、一転、発言を認め、撤回しています。

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発言内容の問題性もさることながら、数日前に講演会で話したことの「記憶」がないというのは、それはそれで大臣として問題があるのではないかと考えます。普通、講演をするということになれば、必ず何を言うか事前に考えていきます。時間の制限もありますから、講演のポイントを考えていくでしょうし、大臣という立場から内容も入念に考えるでしょう。いつも番記者が張り付いていますから、やはり軽率なことは言えません。そういうことを考え、下準備があって演壇に上がるのが普通でしょう。
政治家の場合、話すのが商売という側面がありますから、講演することも日常茶飯事です。そのような場合、同じことを何度も何度も繰り返しそれぞれの場所で話しているわけです。そういうベースがあって、TPOによって多少の変化をつけます。だから、一緒についている番記者や秘書は、同じことを何度も聞くはめになり、この話題ならあと何分で講演が終わると言うことが自然とわかるようになりますし、講演内容もすべて頭に入っていきます。もちろん、言っている内容は講演している本人の頭の中にがっちりと刻み込まれているのです。
こう考えると数日前に話したことの記憶がないと言うことは、「記憶障害」という可能性は非常に大きくなります。それも東日本大震災における原発事故ということから生ずる放射能に関する人の命にかかわる重大事についての発言ですから、記憶にないというのは、非常に問題があるわけです。それは、政治家として、そして大臣として職務遂行に支障をきたすレベルの話であるわけです。これは進退の問題と言える状況です。国民の命にかかわる問題です。
もちろん、言うまでもなく、そのようなことはないですし、丸川氏は才女ですから、きっと記憶にがっちりとあったものと推測します。そうでないとこれだけの重要案件についての発言ですから、大臣の職にあるものとしてはふさわしくは当然ありません。
恐らく、今回と同趣旨の発言をこれまでも様々な場でしてきたのではないかと、私が政界で経験してきたことを思うとそう想像します。いろいろな場で発言して反応を見て、今回の講演で発言したものと想像します。政治家は大抵そういうものです。だから、今回の発言は確信して行っているものと考えます。そして、そのような確信がある発言ですから「記憶を確認する」まで「撤回」をしなかったでしょう。
恐らく、今回、講演で発言した後、その発言が問題視されてしまったので、とっさに「記憶にない」という言葉が出てきたのでしょう。恐らく、心の中で「今、どういう時期かわかっているでしょ」と先日、辞任した宮崎氏と同じことをつぶやいたのではないかと考えます。
このように一連のことを考えれば、政治家として、大臣として発言に責任感がないことが非常によくわかります。そして、すぐに確認できるはずの「記憶」をずっと確認しないまま発言を撤回しなかったのは、そこに明らかな嘘があるからと考えます。無責任と嘘は表裏一体ですが、これでは政治家として大臣としてやはり不適任であることは間違いありません。それも発言内容がたわいもないことではなく、国政において重要度が非常に高いものですから、不適任であることは間違いのないことでしょう。これが、12日に講演での発言を認め撤回したことによって明らかになるこの問題の本質と考えます。
そして、無責任な政治家は、確実に国民の命を軽視するものと考えます。それは、政治家の使命とは国民の命を守り、生活の安寧をはかることがすべてであるからです。つまり、その政治家の本質が無責任と言うことは、この使命に対しても無責任ということなのです。国民に平気で嘘をつく政治家の本質はこういうもの、すなわち国民の命を軽視するということであると私は考えます。

なぜ12日に発言を撤回したのか
しかし、記憶がないと当初言って発言の撤回はないと言っていたにもかかわらず、なぜ、12日に発言を認め撤回をしたのでしょうか。普通に考えて、育休宣言をした宮崎議員が辞職を表明したタイミングであったからであると考えます。つまり、政権与党のスキャンダルは先週一杯で幕引きをしたかったものと推測します。ということは、丸川氏の発言撤回も、本人だけの意向ではないと言うことです。
これ以上、政権与党のスキャンダルがメディアに取り上げられるよりは、丸川氏の立ち回りが無責任なものになっても良いと考えた結果と考えます。丸川氏の立ち回りが無責任でおかしなところがあっても、12日に発言を認め撤回すれば、それ以上は追求されないと考えた結果と考えます。すなわちそれだけ政権与党はメディアの報道を気にしているということなのです。「今、どういう時期かわかっているでしょ」と思っているといるということなのです。そう考えれば、総務大臣が不公平な報道をしたテレビ局の電波を止めると発言するのも、時期から考えて至極当然に出てくる発言であると私は考えます。そして、それが現在の政権与党の本質と考えます。

平気で嘘をつく
高木復興相は、窃盗疑惑が浮上してから一貫して疑惑を否定してきていますが、1月13日の『日刊県民福井』では、当時の福井県警の捜査関係者がこの疑惑は事実と証言したことが報道されています。やはり本当であったのではないかと考えます。このようなことは火のないところに煙は普通、たたないでしょう。
また、甘利氏の収賄疑惑では、新たな事実が浮上し、大臣辞任会見での発言と食い違いが出てきています。これは、発言と現実に齟齬が生まれていると言うことですが、このようなことを「嘘」と言います。まさに丸川氏の件と同様、大臣が当たり前のように嘘をつく状況が今や露呈しているものと考えます。
このように平気で嘘をつく大臣や政治家が跋扈しているのですから、その発言をそのまま報道し、国民へ伝えるというのはそもそも「不公平」ではないでしょうか。大臣などが平気で嘘をつく風潮がまかり通っている中で、その発言を検証も、疑いもなく国民に垂れ流すこと自体が、党派性を帯びた不公平であると私は考えます。これからは大臣などの会見をしている映像の下に「※ これは個人の感想です」、否、「※ この発言には嘘の可能性があります」というテロップを最低限、表示して欲しいとものと心から思います。それほど虚偽発言が当たり前のように政治の場、政権与党において横行しているものと考えます。
これほど虚偽発言が横行している中で、テレビ局の電波を停止するという発言が総務大臣からでるのは、単にそのような虚偽発言をテレビにおいて追求されたくないというだけの話であるものと考えます。政権与党としてそのような追求はイヤであると言うことであると考えます。もし、そうならそれは間違いなく「言論弾圧」というものなのです。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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