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床屋談義、居酒屋談義
[日本の政治]
2016年2月19日 23時37分の記事

自民党の丸山和也参議院議員が、2月17日に参院憲法審査会で行った発言が問題となり、同氏は同審査会委員を辞任しています。

「自民・丸山和也参院議員の参院憲法審査会での発言詳細」(2016年2月17日 朝日新聞)

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この件に関して一般に言われている論点もあると思いますが、私は違う部分に問題点を見いだします。
憲法審査会での丸山氏の発言を見ると、実際、何を言っているのかよくわかりません。米国と同じようにすればすべての問題が片付くと言うことなのでしょうか? それとも日本を米国に合併させてその51番目の州にすれば、日本人が米国の大統領になるのでその方が良いと言うことなのでしょうか? 
日本国の憲法について議論をする場、それも国民の代表である国会議員が議論する場で、このようなことを議論する必要がそもそもあるのか非常に疑問です。これでは、自立的な思考をしないで米国と同じようにした方が良いと言っているようなものですし、また国を放棄した方が良いと言っているようなものです。憲法ということを考える場にしては、枠組みを明らかに逸脱しています。議論には国民が不在ですし、立憲主義ということも見られません。
昨年、安倍首相が米国を訪問し、ホワイトハウスでオバマ大統領と会見を開いている際、安倍首相はマーチン・ルーサー・キング牧師の演説を引用してスピーチをしていました。しかし、その時、その場から数十キロのところでまさに黒人の暴動が起きていました。
米国にも多くの問題はあるわけです。犯罪の問題、テロの問題、その他様々な問題があるわけで、日本にはあまりない問題も多く抱えているわけです。米国と同じようにすれば何でも問題が解決するというのは、自らのことを省みない思考の怠慢、思考停止であるわけで、むしろこれでは問題をこじらせるだけでしょう。本人も述べていますが、これは夢想にすぎません。米国の良い部分だけを見て考える稚拙な思考であると考えます。このような方が自民党の法務部会長というのですから本当に恐ろしいことだと考えます。
米国には見習うところも沢山あると思います。いつもそう思っています。しかし、それをそのまま日本に移植するのではなく、まず自らの頭でそのことを解釈・解析して自らの国・社会にあうように取り入れていくというのが当然の思考過程でしょう。だから、その結果は米国とは必ずしも同じものにはなりません。それで良いのです。しかし、実際、日本の政治リーダーがこのような思考の怠慢、思考停止なら、そもそもそのようなリーダーは必要がないものと考えます。
また、仮に日本が米国に合併され51番目の州になったところで、日本人の大統領が誕生する保証はあるのでしょうか。現状、日本と米国の人口比は3:1ですから、彼らがそのような大統領は出したくないと手を結べば、いつになっても日本人の大統領は生まれないでしょう。もしかしたら100年後、そのような大統領が生まれるかもしれません。しかし、それまでの100年間、日本人は自らの意志を政治に反映させる余地が非常に小さくなるのではないでしょうか。これは、最近よく見られる、思考に時間軸がない非常に問題ある思考と考えますが、このようなことを少しでも考えれば、憲法調査会という場で今回のような頓珍漢な議論を口にすることはまずなかったと思います。
なぜ、日本を世界の中心にすると考えられないのでしょうか。よくわかりません。丸山氏は自民党の政策幹部ですから、恐らく、上記のように考えているのが自民党の本音なのでしょうか。またTPPというのは、実質的に日本を米国と同じ制度にし、日本を米国の51番目の州にするということなのでしょうか。それを自民党は本気で考えているから憲法審査会で自民党の法務部会長がこのような発言をするのでしょうか。それなら合点がいくと思っている人は多いでしょう。このような議論が国家の最高法規を議論するところで言われているというのも世も末という感じがします。
さらに日本の人的流動性もしっかりとあります。米国だけではないでしょう。江戸幕府をつくった徳川家康もその幕府が最後には薩長によって覆されるなど思っても見なかったでしょう。米国ことだけで日本のことは考えていないのも、単なる丸山氏の思い込みにすぎません。

床屋談義、居酒屋談義
丸山氏の今回の発言を、参議院議員で自民党の法務部会長による憲法審査会での発言としてではなく、居酒屋でちょっと知識があると自負する学生の発言としてでも、実は違和感がないのです。また、どこかの床屋で物知り顔のおじさんが、大声で持論を展開している発言としててでも、また違和感がないのです。つまり、この丸山氏の議論の実相というのはその程度のものであるということなのです。単に無知と思い込みの持論をご披露されたということであって、床屋談義なら聞いている方は苦笑いですみますが、国政、それも憲法を議論するところではそうは行かないと言うだけのことです。これが今回の問題の実相と考えます。
したがって、この質問をぶつけられた参考人はまともに返答をしていません。していないのではなく、できないわけです。
そして、無知と思い込みの持論のご披露ですから、いろいろと批判があっても中々引かないし、変えられないわけです。本人に悪気はないのです。
自由な議論はあってしかるべきですが、本当にこの程度のレベルのことを議院の憲法審査会でまじめに議論しているというのは本当に驚きです。今回の丸山氏の発言をきっかけに調べれば、丸山氏は自民党の法務部会長と言うことです。自民党の法務に関する政策の責任者と言うことですから、これにはさすがに驚きました。この程度のレベルの方が自民党の「憲法草案」なるものを作ったりかかわったりしていたのでしょうか。本当に暗澹たる気持ちになります。
国民の代表として「立憲主義」に基づく憲法について、そのことを議院において議論をするという意識があれば、今回のような発言は出てこなかったでしょう。しかし、丸山氏の議論には国民が不在であり、それはあくまでも立憲主義を否定する立場であるわけです。
小室直樹氏の『憲法とは国家権力への国民からの命令である』(2013年 ビジネス社)で、小室氏は憲法改正の必要性を述べていますが、一方で「但し日本人は未だ憲法とは何かを理解していない。だから日本人には未だ憲法を書く事は出来ないだろうね」(P.339)と述べていることが記載されています。
私は憲法を改正する必要はないと考えています。しかし、改めて今回の丸山氏の件を見て、政権与党の法務部会長がこのレベルですから、小室氏の感想と同じものを強く持ちます。社会科学や歴史学のレベルを、国として社会としてもっとしっかりと上げてからではないと憲法改正など言う必要はないでしょう。それに現憲法が自主憲法ではないとどうして言えるのか私には疑問ですし、70年間、この憲法で平和をつくり出してきたのは明らかに現憲法が機能し、成功しているということです。明治憲法ではそうならず滅びましたし、米国と同じ憲法にしていたらやはりこのような平和は築けなかったでしょう。それは、米国に安全保障をただ乗りをしていたからではなく、現憲法下での日本が世界において相応の役割を果たしたからに他なりません。米国も日本がなければやってこれなかったわけですし、だからこそ米軍基地をずっと日本においてきたわけです。両者の関係は成立していたわけですし、その中で日本国憲法が安定化のために世界において大きな役割を果たしてきたものと考えます。このことがはっきりするのがいずれ来るものと考えます。

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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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