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政局のシナリオ
[日本の政治]
2016年3月28日 23時55分の記事

週が明けて来年4月の消費税増税を実施しないこと、そして衆参ダブル選挙の言説が活発になっています。増税を実施しないことと衆参ダブル選挙はセットとしてシナリオになっていますが、増税を実施しないのは延期ではなく最低でも中止でしか政治的にはあり得ないことは何度も指摘してきました。どのような形になるかはわかりませんが、まずここが一つのポイントでしょう。

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このシナリオを考えると、その中間に伊勢志摩サミットがあることになります。サミットが政権浮揚効果があるものかというのは疑問に考えています。世論動向においては一種、一過性のもので、過ぎてしまえば忘れてしまうというのが、基本的なものと考えます。相当なサプライズがあれば別ですが、世論の動向においてはその程度でしょう。
政局のシナリオから考えれば、そうなりますが、逆にサミットを中心に考えると多少、事情は違ってくるのではないかと考えます。この伊勢志摩サミットに各国の首脳が集まり外交が展開されるわけですが、議長国は日本で安倍首相が窓口です。海外から見れば、議長の安倍首相は1ヶ月か2ヶ月後に参議院選挙、もしくは衆参ダブル選挙が控えている存在です。現状、与野党伯仲で劇的な政権交代が起きるという状況ではないのは明らかですが、場合によっては衆参ダブル選挙で与野党伯仲からレームダックに陥る可能性は十分にあります。そして、最悪の場合、何かとてつもないスキャンダルなどが選挙直前にあれば、政権交代ということもあり得ます。選挙をすると言うことはそういうことですが、それを2ヶ月後に控えているのが、議長国、日本であるわけです。
そうなると日本が重要案件を話す相手と各国が見なすかどうか微妙になります。同時に米国のオバマ大統領もこのサミットが最後の出席になります。やはり新しいことを話す相手ではないということにもなります。これは、現在、行われている大統領選挙を見れば明らかでしょう。日米がこのような状況にある今回のサミットというのは、必然的に中味が希薄化する可能性を秘めているものと考えます。
実際これだと上記の政局のシナリオの途中にサミットがあるというのもうなずけるものになります。可もなく不可もないサミットということが、既にはっきりしているのではないかと考えます。
現状、外政よりも国内の選挙が中心になって政治が動いている感があります。非常に中身の無いものと考えます。

何のための解散?
衆参ダブル選挙だと衆議院を解散するということになります。2014年の解散の時も思いましたが、この解散の正当性が本当にあるのかと、今回も同じく疑問に思います。
衆議院解散というのは69条解散と7条解散があります。前者は内閣不信任決議案が成立した場合の衆議院解散です。一方、後者の7条解散は「天皇の国事行為」としての解散ですが、これは実質、内閣の意向によって成される解散です。つまり、天皇陛下が解散せよと言うことではなく、あくまでも内閣が衆議院解散をすると言うことです。そして、そのことによって、国民の信を問う、衆議院議員が選別されるわけです。
今、衆議院は与党が圧倒的多数です。そして、与党内が分裂しているわけではないので、内閣不信任家議案は成立することはありません。そうなると今回、衆参ダブル選挙と言うことになれば、7条解散ということになります。つまり、実質上、与党から選出された首相が与党が圧倒的な衆議院を解散し、国民の信を問うと言うことです。
しかし、これ、論理的におかしくはないでしょうか。衆議院の圧倒的多数の与党から選出された首相が、その圧倒的多数の衆議院を解散し、国民の信を問うとはやはりおかしいわけです。そして、衆議院において首相に造反する動きもないわけです。首相は何をもってその衆議院を解散するのか、根拠が非常に乏しいわけです。ただ、考えれば、必然的に生ずる根拠は、与党から選出された首相が、衆議院で圧倒的多数を占める与党の何かを問題点として国民の信を問うということになります。
確かに、昨今、自民党議員のスキャンダルや暴言、失言が週毎に出てきている感があります。それらは大変に問題ですが、それを問題として衆議院を解散するのでしょうか。解散の根拠はこれくらいしかない感じがします。つまり、今回の選挙は問題ある自民党議員について国民に信を問うと言うことです。これが与党が圧倒的多数を占めている衆議院を解散することの意味であり、争点です。
衆議院において与党議員が安倍政権に反旗を振りかずすことは今や皆無です。パフォーマンスとして行っている人はいるかもしれませんが、実質上皆無です。それは「政高党低」と言われ、議会軽視と言われた現政権に対する表現でもよくわかります。
2014年と同様に今度また7条解散を行うと言うことは、その実、2014年と今回も解散の意味がありませんから、解散権の乱用です。国権の最高機関に対するこれは権力の乱用であり、意味不明を根拠として2回も同じ解散をするのは許されることではありません。基本的に、衆議院において与党が圧倒的多数を占め、その与党が内閣に対して造反していないなら、衆議院解散を首相が判断する本質的な根拠はないものと考えます。つまり、衆参ダブル選挙においてもう一つのポイントは、この首相の解散の判断そのものにあります。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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