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ブレーキという名のアクセル
[日本の政治]
2016年3月29日 23時45分の記事

昨今、ブレーキとアクセルを踏み間違いた事故ということが良くニュースで報道されます。しかし、今回はもちろんそのことではありません。

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私がブレーキという名のアクセルと考えるのは、連立与党における公明党のことです。
連立政権というのは、二党以上が連携する政権です。その場合、どのように振る舞うのが効果的かと考えると、通常はそれぞれ違う性格を持っていますから、それを利用することがすぐに頭に浮かびます。これはどういうことかというと、一方が推進役なら、一方は反対に回るということです。そうすると世間はその二党だけに焦点を当て、他の野党の存在は完全に視界から消えます。これは連立だけではなく、例えば、単独政権でも党内で議論が白熱して闘えば、世間の目はそこだけに注がれ、それは大いなる宣伝の機会になります。政治がそこだけで行われていると錯覚させます。マスコミなどにおける露出を独占できるわけです。
また、推進していることと反対の方向性を出せば、世論に対して一定の緩衝材的な効果を発揮します。つまり、「反対している人もいるのか」と(連立)与党に対する反意が軽減されます。同時に一定のバランスがあっての「推進」という印象を与えることができますから、(連立)与党に対する支持につながり取り込みの効果も生まれます。
現在の連立政権において、このようなことを意識的に行っているかどうかはわかりませんが、普通ならこのようなことは当然、考えることと考えます。
例えば、昨年の安保法制について、公明党は反対していたというイメージはありますが、最終的に反対の方向において何か役割が実質的にあったかと言えば、何もなかったでしょう。しかし、公明党という存在がなければ、この安保法制はさらに強烈に国民の目に映ったでしょうし、このことへの反意も一層激しくなっていたものと考えます。
来年4月に実施される消費税について、昨年末から軽減税率についてすったもんだのやり取りがありました。結果、軽減税率は行われることになったわけですが、これは連立与党の性格・イメージに「庶民のことを考えていますよ」というものを付与したと考えます。
しかし、それから3ヶ月も経たないうちに消費税増税を実施しないという声が出てきています。このような増税をしないということは、この3ヶ月で急激に浮上しているとは考えいにくいものです。実際に1月からそのような声は既にありました。つまり、軽減税率を議論しているときに、既に増税実施をしないというシナリオは明らかにあったものと考えますし、調整も行われていたと考えます。増税実施をしないということは軽減税率の議論が何の意味もなかったことになりますが、イメージとしてはプラスのものが印象づけられたと考えます。
連立政権の出し方にこのように性格の違いを利用して行う方法もあるということは、政治を考える上での一つの視点にしておくと良いと考えます。そして、このようなやり方は、反対の意見の緩衝材もしくは取り込みの役割を成し、しかし結果としては全体として効果的な推進剤となるのです。
ただ、このような効果がありますから、ブレーキ役を装ったアクセルは、結果としてブレーキとアクセルを間違えて踏んでしまったと同様に、暴走を最後は引き起こすことになるのです。そのことは忘れるべきではないでしょう。このことは、今の日本の重大なポイントであると考えます。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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