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NHKの秀作
[日本の政治]
2017年5月1日 10時15分の記事

4月30日、NHKスペシャル「憲法70年 “平和国家”はこうして生まれた」がNHKで放映されていました。大変な秀作であったと思います。現在の私たちの社会が何によって築かれているかがはっきりとわかる大変に貴重な歴史的な番組であったと考えます。5月3日午前0時10分からNHK総合テレビで再放送されます。

「NHKスペシャル「憲法70年 “平和国家”はこうして生まれた」」(2017年4月30日 NHK)

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今回のNHKの番組は、昨年、テレビ朝日・報道ステーションで報道された憲法9条(戦争放棄)は、幣原喜重郎の発案であるということからさらに踏み込んだ核心に迫るものでした。
番組の冒頭、昭和20年9月2日にミズーリ号上で日本が降伏文書に調印した2日後の9月4日に招集された戦争終結後初の帝国議会の冒頭で昭和天皇が読み上げられた詔の中で平和国家の確立という目標が出されことが紹介されています。これが、戦後の日本のスタートであるわけです。そして、その御意が、明らかに今上陛下に受け継がれていることもわかります。戦後の全てはここからなのだと改めて認識します。
この番組の詳細は、書きませんが、いかに憲法、特に9条ができあがっていったかが、この番組を観るとよくわかります。そして、戦前、なぜ戦争に日本が突き進んでいったかということも併せて考えれば、この憲法の帰結は当然のことであり、戦後そのものの意味、米軍の意味もはっきりすると考えます。
また、平和国家建設が理想論ではなく、また憲法及び戦後体制が押しつけられたわけでもなく、国が滅びるまでに至った戦争の辛酸をなめ尽くした先人達の現実感と切なる想いが土台であることがよくわかるものです。現在の日本はその土台の上にあるものであり、今を生きる私たちは、この約70年前の先人の誓いを忘れるべきではないでしょう。私は憲法を変える必要は、現状、全くないと考えます。
平和国家の確立が、非現実的、理想論という人々はいるでしょう。しかし、約70年前の当時の日本人からしたら、平和国家の確立を非現実的・理想論という方が、非現実的でしょう。平和ボケと批判的によく言う人がいますが、むしろ一番の平和ボケは、戦争に対して甘く見ている人間のことをいうのだと私は考えています。一番の愚か者はリスクを考えずに甘く見て盲進する者です。そういう者がもたらす惨禍は計り知れなく、実際、戦前がそうでした。そういう者に比べたら、何もしない者の臆病者のほうがはるかに国家運営に適しています。
日本の近現代には、二つの国家体制があり、二つの憲法がありました。日本近代の国家体制も、戦後の現代の国家体制も長さは約70年とほぼ同じになりましたが、明らかに明暗を分けています。前者は戦争に明け暮れ、最後は滅びました。後者は、一度も戦争は行われず繁栄し、今に至っています。そして、現状は、その近代に戻そうとする政権になっています。実に愚かしいことです。
戦後は、戦争の辛酸をなめた者が出した平和主義からスタートし長らく続き、現状は戦争を知らない者が出している復古主義です。どちらが非現実的で、平和ボケであるかは一目瞭然です。
そして、今の日本人は、戦争を甘く見ているという点で、実は満州事変からはじまる先の大戦へと突き進んでいった当時の日本人と同じ感覚なのだと思います。それが本当の意味での日本の陥穽と考えます。戦前の日本人に1945年8月15日の日本の姿が突きつけられていたら戦争への歩みを止めただろうかと考えることがあります。多分、止めなかったでしょう。それはどんなにその姿がはっきりとしたビジョンであっても、現実として体験していなかったから、そんなことはないと戦争を止めることはなかったと考えます。
しかし、現在の私たちはそのことを日本の歴史として体験しています。教訓を引き出すに十分な体験も資料もあるはずです。そして、このことが何より重要であると考えます。復古主義というのは、そのことを打ち消すものですから、必然的に同じ過ちを繰り返すことになるのは、子どもでもわかることです。愚かしいの一言ですが、それが歴史を学ばない民族の必然的な末路であると考えます。

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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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