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敗因と勝因 その2
[日本の政治]
2017年7月19日 23時59分の記事

先の都議会選挙について、投票行動という観点から見ると、実はそこに大きな変化があるわけではありません。選挙の結果は、自民党の敗北、都民ファーストの会の躍進ということが大きな話題となりましたが、その結果をつくり出した投票行動は変わってはいません。これが、この選挙でのポイントの一つとしてあります。

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しかし、このことは、特筆すべきものではないと考えます。特筆すべきことかもしれませんが、そう感じないというのが正直なところです。それは、これまでも同じことが起きているからです。自民党の敗北と都民ファーストの会の躍進をつくり出した、疾風ともいえる票の動きは、2009年の都議会選挙においては自民党への嫌気から民主党の躍進をもたらし、2013年の都議会選挙では民主党への嫌気から自民党の躍進をもたらしました。今回も自民党、特に安倍政権への嫌気から都民ファーストの会の躍進をもたらしています。都民ファーストの会は、まだ何も実績がありませんから、その躍進の背景には自民党への嫌気と、都民ファーストの会に傷がついていないからこその期待があるわけです。
この批判票というか、嫌気から動く極めて大きな票の塊は、都議会選挙という地方選挙の結果を大きく形づくり、その結果から時の政権や国政に大きな影響を与えます。つまりこの大きな票の塊は、受け皿となる政党にどっと流れ、それが国政に影響していくということです。

10年前なら民進党はその受け皿になっていたのですが、現在はそうではないということです。わかりきったことですが、民進党を見ると嫌気がさすので、嫌気が向う先としては適当ではないと言うことです。これは、旧民主党における連立政権で、鳩山内閣が退陣したときに決定的となりました。そのときから旧民主党・民進党は生き方を変えなくてはならなかったわけですが、それが今の今まで出来なかったわけです。そして、党内にその新しい生き方を引っ張ることができる才能豊かな政治家も出現せずに7年近くが経ったわけです。
それが今の民進党の現状であるわけです。そして、当然のごとく、いまだにその“受け皿”としての思考から脱却できないわけです。口では違うと言っても、やはりそれは党首の選び方からして、説得力に欠くものであると考えます。参議院の東京選挙区から選出された抜群の知名度と集票力を持つ蓮舫氏を党首として担いだのはある意味で理があるものと言えます。ただ、それはやはり受け皿としての存在した10年前の思考であって、現在に通用する思考ではないわけです。つまり、民進党は10年前から変わっていないと言うことで、当事者は10年前と同じように見られていると考えているわけです。大きなギャップがあるわけです。
民進党が、今回の都議会選挙を一通過点として、再起をかけ、新たな受け皿として存在しようとするのなら、昨年、全く違う人物を党首にすることが出来たはずですが、それが出来なかった時点で民進党には先がなかったわけです。それは、民進党は何一つ進化もしていないということを示すと同時に、現在、民進党に所属する政治家は、政治家として使いものにならないということを証明しています。これは間違いないことと考えます。

嫌気から動く極めて大きな票の塊は、民進党へも向わないが、これからは自民党へも向わないでしょう。現状の安倍政権が続く限り、この傾向は際限なく続きます。この嫌気から動く大きな票の塊は、政権をつくる力はあります。しかし、同時に政権を壊す力があります。そして、政治思想があるわけではないので、政党にはならないわけです。
この大きな票の塊は浮動票とも言えます。しかし、最大の違いは、その行動基準が嫌気、もしくは嫌気からの脱却で、その本質は問題に対して極めて敏感に反応するということであるわけです。ここに一つ大きなポイントがあります。それは“問題”に対して動くと言うことです。だから、嫌気とともに、その嫌気からの脱却なのです。それは言い換えれば、幸福の青い鳥を追いかけるということですが、この動きは消費行動と同じなのです。そして、だからこそ、その行動はつくり出すことを志向していません。その行動には、選ぶ(青い鳥を追いかける)ということにポイントがあり、だからこそ“受け皿”ということになるわけです。
この大きな票の塊は、浮動票に分類されるでしょうが、しかし、このように特質もあるわけです。そして、この特質は、時としてバランサーとして機能を容赦なく発揮します。そういう意味で悪いことばかりではないでしょう。そして、繰り返しになりますが、ポイントは問題に対して動くと言うことです。それなら、問題がいかに設定されるかが大きなポイントになります。そして、ここにマジックがあるわけです。

この票の大きな塊は、政権をつくる力もありますし、政権を壊す力もあります。そして、受け皿を探して動き回るわけです。今回、その受け皿となったのは都民ファーストの会であるわけで、その勢いに乗じて、都民ファーストの会を起点とした国政の動きがあるわけです。しかし、このように考えれば、旧民主党・民進党ともに思考は変わらないわけです。傷がついていない旧民主党・民進党というだけで、その内容、政治家の行動・思考は変わっているわけではありません。だから、まだ何も実績がない都民ファーストの会の躍進で、国政という話が出てくるわけです。そして、だからこそ、このように何の進化もない政治では、都民ファーストの会も頂点を迎えたときに、今度はこの大きな票の塊の動きによって壊されていくわけです。頂点に立ったとき、それはもはや受け皿ではないのです。そして、当事者は何があったかわからないうちに終わっていくわけです。そう考えると、都民ファーストの会やそれにまつわる国政への動きも、賞味期限があらかじめわかっていると考えるのは私だけではないでしょう。都民ファーストの会に民進党の議員が流れたことでもそのことがよくわかります。

しかし、本当に次の時代を動かす政治はこのような動きとは関係のないものでしょう。今、日本は大きな分岐点にさしかかっています。時代はどんどん変わっていきます。そのとき、生き残る政治、政治家は上記のような思考にとらわれないものなのです。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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