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北朝鮮が怒っているのはイージス・アショア配備を停止したこと
[日本の政治]
2020年6月17日 14時23分の記事

北朝鮮が開城の南北連絡事務所を爆破したと報じられています。日本でもこのことは盛んに報じられ、様々な解説がなされています。

「北朝鮮が開城の南北連絡事務所を爆破 韓国統一部」(2020年6月16日 聯合ニュース)

(※ 本記事は掲載から1週間が経つと有料記事になります)

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報じられているように6月16日にこの南北連絡事務所が破壊されたわけです。折角、建てた建物なのですから、別の用途に単に転用すれば良いものを、そうしないで爆破したわけです。まったくもってもったいない。
ただ、ことの実相は、破壊することに意味があり、そうする必要があったというだけなのです。では、そうする理由は何かというと、韓国をはじめ各国に、北朝鮮は危なく、やばい国だとアピールして、そういう危険国に対するのに相応しい軍事力増強や体制強化などを各国にしてもらわないと困るということにあるのです。だから『爆破』しないといけなかったわけです。ポイントはそこにしかありません。ホントにそれ以外にはありません。
北朝鮮が国交を結んでいる国の数は、韓国のそれとほぼ同じですから、南北関係を断絶するのなら、二度と口をききませんと言って、扉を閉じてしまえば良いわけです。それで何も困ることはありません。しかし、そんな簡単なことをしないで、わざわざ爆破したわけです。そして、さらに以下の記事のように軍を展開したわけです。これも意味することは同じで、“北朝鮮のために”、北朝鮮に対する軍事力をお願いですからエスカレートしてくださいと、単に言っているだけなのです。本当にわかりやすいですよね。

「北朝鮮『軍事境界線近くに軍を展開させる』国営メディア」(2020年6月17日 NHK)

さてさて、この爆破の前日に何があったかと言えば、それは日本におけるイージス・アショアの配備停止です。イージス・アショアほどムダなものはないと考えますが、いずれにせよ、北朝鮮を主たるターゲットにしているイージス・アショアの配備を日本は停止したわけです。普通に考えれば、北朝鮮が主たる脅威でなくなったので配備停止となるわけです。
そして、普通なら、この配備停止は北朝鮮にとっては願ってもないことですよね。日本から北朝鮮への脅威・マイナス要因が減ったわけですから、北朝鮮には願ったりかなったり、北朝鮮は狂喜乱舞しなくてはならないことなのです。
だから、北朝鮮はこの配備停止が、確定的になるまで平和の国をアピールすれば良いわけです。そうすれば、さらに北朝鮮への脅威が減るという形に確実に繋がります。なぜなら、このイージス・アショア配備停止は米国の意向を反映したものだからです。このことは以下でもう一度、触れます。
であるのに、開城の南北連絡所を早速爆破して、北朝鮮は危なく、やばい国だと大々的にアピールしているわけです。えっ、なんで? バカじゃないの? そんなことしては、“世の中の常識”で考えれば、イージス・アショア配備の動きが再開する可能性を作ってしまうことになるではないですか? それでは、“世の中の常識”で考えれば、北朝鮮の国益にまったく適わないじゃないですか。これはまさしくおかしいのです。
普通に考えれば、現状は、北朝鮮は笑顔で黙っているべきで、それもイージス・アショア配備停止が完全に確定するまで黙っているべきなのです。風林火山の動かざること山の如しなのです、今は。
まあ、イージス・アショアが何の意味ないものということを北朝鮮が言っているというこじつけはできます。イージス・アショアの意味のなさはまさにその通りなのですが、でも、そう言ってしまうと困るのは、配備を推進してきた日本の右翼(安倍政権)と北朝鮮なのです。ここで北朝鮮といういう意味は以下をご覧いただければお分かりになります。

同じことは去年、中東ですでに起きていた
イージス・アショアは米国・米軍とリンクしているシステムです。そうなるとこのイージス・アショア配備停止の決定は、日本の決定と言うより米国の決定なのです。もちろん、これは日米安保条約に関わるものですが、日米安保条約・日米同盟は本質的・根源的に朝鮮戦争に関わるものです。停戦でも朝鮮戦争のために日米安保条約はあるのですが、これまでの70年間、日本は朝鮮戦争における後方支援基地・戦場なのです。そこに日米同盟があり、イージス・アショアもあるわけです。そして、そのイージス・アショア配備が停止になったと言うことです。これ、意味深なのです。
で、イージス・アショア配備が停止になったのなら、普通、北朝鮮は喜ぶでしょう。これで北朝鮮が懸念してきた体制維持の問題もクリアされたとなるわけです。だから、北朝鮮は歓迎してあとは友好にことを運びましょうといえば、良いだけなのです。まさに北朝鮮の体制維持にとっては千載一遇のチャンスなのです。
しかし、そうせずに南北融和の象徴を爆破し、国境付近に軍事展開して、北朝鮮は怒っているぞ、北朝鮮はとても危険なやばい国なんだぞと猛然とアピールしているわけです。イージス・アショア配備停止が表明された時点でその必要は無くなっているのに、なぜか、わざわざそうするのです。繰り返しますが、わざわざそうしているのです。
このことを普通に分析すれば、イージス・アショア配備停止をお願いだからやめろ、米国は朝鮮戦争に関与し続けて、米軍を撤退させるなと言っているのです(こう確定的に分析できるのは、北朝鮮をあまりにも国民が貧しく、非力な国に“設定”しすぎたためです)。さもないと朝鮮戦争が終わってしまい、北朝鮮の存在が意義がなくなると。
因みにこの北朝鮮の動きは米国の動きが確定的ということを前提に動いています。なんでそのように確信をもって動けるのか? 考えるのなら、実はそこにもおかしさはあるのです。

ところで、この北朝鮮と同じ類いのことはここ数年、実は世界で頻発しています。特に中東ではこのような現象が先駆けて起きています。それは、米軍の世界展開の順序にポイントがあるのです。
以下の記事のように昨年1月にシリアで米軍を標的としたテロが行われ、ISが犯行声明を出しています。しかし、この時、すでに米軍のシリア撤退は決定していたのです。記事にもそう書かれています。つまり、このテロの本音はシリアやISは危険だから米軍は撤退してはならないと言うことなのです。えっ、なんで? バカじゃないの? それ、やはり、おかしいですよね。ISのやっていることは。

「シリアで自爆テロ、16人死亡 米兵も、IS犯行声明」(2019年1月17日 西日本新聞)

本当ならISを掃討するためにシリアにいる米軍がいなくなることは、ISにとって千載一遇のチャンスであるのに、米軍が残るように仕向けているわけです。このシリアでの出来事についての分析はすでにザ・フナイ2019年4月号で書きました。本当におかしなことですが、このことの本質は上述の北朝鮮と同じなのです。そのようにザ・フナイの連載で書いてあります(166頁)。
つまり、昨年は中東、今年は朝鮮半島ということです。これは米軍の世界展開(撤退)の順序のためなのです。
もちろん、昨年のシリアでのテロのようなことが起きれば、マスコミも一斉にISは危険、中東は危険、米軍は撤退してはならないと論調を張るわけです。なんとISが意図したとおりの模範的な論調が作られるわけです。実は、このマスコミの方向性は、シリア、北朝鮮、ISと同じになっているのです。さあ、今回もどうなるか、日本のマスコミの論調に注目しましょう。

お互いに模範的な反応をする仲良しこよし
現在の朝鮮半島の状況があるとき、以下の記事のように、自民党の右翼からイージス・アショア配備停止への猛烈な批判が起きるわけです。この批判は、もっともらしく見えますが、上述したことなどを良く考えると、この反応は北朝鮮にとって模範的な反応・論調なのです。北朝鮮の意図通りなのです。
そして、一方で北朝鮮の爆破や軍事展開のニュースは、この自民党の右翼の人々にとって模範的なアクションなのです。北朝鮮がそのように動いてくれれば、北朝鮮の脅威を煽ってイージス・アショアを配備できるし、他の軍備も増強することが非常にたやすくなります。本当ならば、このように日本が動けば北朝鮮の国益には適わないはずなのにです。そして、同様のことは、上述のように、すでに中東で米軍の撤退をめぐって生じていることなのです。やっていることは同じなのです。そこには、皆さんが知らないとても大きな背景があるのです。
要するに北朝鮮の動きと自民党の右翼の動きの利害は完全に一致しているのです。いっそのこと、本当はこの両者は繋がっていると言った方がわかりやすいでしょう。まあ、だから最大級に『対立』しているのです。そして、日本ではこの対北朝鮮強硬派が米中対立をしきりに叫んでいる人たちなのです。香港騒乱を画策しているのは明らかに日本(右翼)と考えますが、目的は同じです。ただ、それはあまりにも無理ですよね。はやく気がつけよ。

「イージス・アショア配備停止 自民党内から批判相次ぐ」(2020年6月16日 NHK)

金与正氏については、6月4日に勉強会のメンバーに出したメルマガに書いたとおりと考えます。近々、この北朝鮮問題などについての続編を勉強会のメルマガに書きます。

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内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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