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米国大統領選について考える--日本に突きつけられているもの
[日本の政治]
2016年3月16日 23時56分の記事

米国大統領選での民主・共和両党それぞれの候補者指名選挙では、昨日、ミニ・スーパーチューズデーを迎え、開票の結果、民主党はヒラリー・クリントン氏、共和党はトランプ氏が善戦し、優勢な状況になっています。

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このことを報じた本日のテレビ朝日『報道ステーション』に東京財団の渡部恒雄氏がコメンテーターとして出演していました。渡部氏のコメントは、ほとんどトランプ氏や共和党のダークホースについての説明になっていましたが、解説の中で「自由貿易」という言葉が頻出していて非常に違和感を覚えました。自由貿易は価値あるものというメッセージが何度も出てきていましたが、恐らくそのことを一番に言いたかったのでしょう。本ブログ「日本の政治は時代の変化を理解しているか?? 」(2016年3月13日)で指摘しましたが、米国大統領選挙でのトランプ氏、サンダース氏の善戦は、自由貿易の歪みが現象として現れと考えますし、日本でもTPPなど行き過ぎた自由貿易や新自由主義・グローバル資本主義に疑問を持つ傾向が強くなっています。自由貿易はある程度必要でしょうが、問題なのは一般の国民にその恩恵が還元されず、貧富の差や生活の劣化などがもたらされることです。
このことにはそろそろ対策が必要なことは自明ですが、それでも渡部氏はこの政治的にまた一般国民において恩恵ではなくなっている行き過ぎた自由貿易を擁護したかったのでしょう。
また、トランプ氏を引きずり落とすための秘策が共和党にあると番組で解説していましたが、渡部氏は自由貿易を推進する米国共和党の代弁者なのかと思えるコメントでした。このような政治的に偏った人をニュース番組のコメンテーターに出す必要があるのかは甚だ疑問に思います。
渡部氏と言えば、日本の旧民主党の渡部恒三元衆議院議員のご子息ですが、民主党政権時においては、この方が米国との窓口であると言われていました。政権内部でそう私は聞いていました。とてもキーマンと言われていますが、恐らくTPPや安保法制の推進者として極めて大きな存在なのではないかとも推測します。その上に自民党も旧民主党の一部も乗っているのではないかと推測します。

トランプ氏の問題は何を日本に突きつけているか?
今回の大統領選挙ではトランプ氏が問題視されていますが、本当の問題点はトランプ氏ではありません。このような発言をする候補者は何時の時代にも、そしてどこにでもいます。もちろん日本にもいます。ただ、これまでは大抵の場合、泡沫候補にしかならなかったわけで、ほとんど問題にならなかったのです。
しかし、今回は違うと言うことです。どこが違うかと言えば、それはトランプ氏を支持する人が非常に多いと言うことで、その動向が社会的なムーブメントになっているわけです。このような状況で、トランプ降ろしを共和党が行えば、それが適っても、トランプ氏を支持していた半数近い人々は間違いなく共和党から心が離れるでしょう。それは共和党の崩壊を意味します。そして同時にその離れた人々が消えるわけではないので、新しいどこかに行くわけです。そして、また新しいムーブメントを起こしていくことになります。このことの本因は、本ブログ「日本の政治は時代の変化を理解しているか?? 」(2016年3月13日)でグローバル資本主義・新自由主義でできあがってしまった貧富の格差などの社会のゆがみですが、それが解決するまで様々な形をとってムーブメントとなっていくことは必定でしょう。自由貿易がなくなるとは思いませんが、グローバル資本主義や新自由主義という激烈な形をとって世界各地の社会を破壊していくのなら、遅かれ早かれその見直しは世界的に必ず生じます。そして、最悪の場合、それは革命と言うことになるでしょう。
今回、トランプ氏の旋風が日本に突きつけていることは、米国が間違った方向に、例えば非常に排他的になりまた好戦的になったり、そういう場合、どうするのかと言うことです。昨今の安保法制や日本版NSCなどはそういう「米国の異常」を「想定」していません。あくまで米国は間違いをしないことが前提になっています。原発事故同様、ここにも「想定外」があるのですが、その想定外のことが現状、米国でトランプ旋風として生じているのです。だから、それを皆、問題視しているわけです。しかし、トランプ氏は象徴であって本質ではなく、このことの本当はトランプ氏を支持している人々なのです。その人々の動向次第では日本にとって非常に危惧する状況が出現すると言うことがあるということなのです。それが現状、米国の構造的問題点として浮上しているのです。
日米同盟は重要と考えていますが、このようなことを想定し、体制を整えることは必要なことと考えます。今の自民党や旧民主党の一部においてこのようなことを考える力はないものと正直、思いますし、自力で状況をコントロールするだけのビジョンや能力もないものと考えます。ただただ危なっかしいだけです。それを本日の報道ステーションを見て率直に思いました。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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