全国戦没者追悼式での天皇陛下の素晴らしいお言葉(平成27年) | |
2015年10月7日 23時15分の記事 | |
今年(2015年)の「全国戦没者追悼式」での天皇陛下のお言葉がどのようになるか、マスコミ等で注目を集めました。 式典での天皇陛下のお言葉は、普通、200文字から300文字前後です。通常、この文字数では多くのことを語れません。だからこそ、一字一句の重みは重く、戦没者とその後の時代を生きた日本人に発せられたお言葉に込められた「御心」は深く、重要なものがあると思います。
式典でのお言葉を平成元年(1988年)から追っていくと、平成10年(1998年)、平成12年(2000年)までは少しずつ表現されるお言葉が毎年、変わっています。字数は250文字前後で推移し、内容が大きく変わっているわけではありませんが、使われているお言葉が少しずつ変わります。 特に、先の大戦で亡くなられた方々の「命」を表現されるお言葉と終戦以後の「戦後」という時代とそこに生きる国民の歩みへの「お想い」についてのお言葉が変化しています。先の大戦で亡くなられた方々の「命」については「尊い命」と「かけがいのない命」という表現が使われています。そして大戦でかけがえのない命を失った人々とその遺族へのお想いのお言葉も変化しています。「深い悲しみを新たにいたします」、「つきることのない悲しみを覚えます」という表現が使われていまう。 また、「戦後」という時代とそこに生きる国民の歩みへの「お想い」のお言葉は、「感慨は尽きることがありません」、「深い感慨を禁じ得ません」などという表現になっています。他にも若干の変化がありますが、お想いを託されるそのお言葉を毎年、毎年、確かめられていたのではないかと推察します。 そして、年を追う毎に、部分部分の表現が定まっていき、平成13年(2001年)から平成26年(2014年)までは、お言葉は以下のように変化していません。平成26年のお言葉です。 本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。 終戦以来既に69年、国民のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません。 ここに歴史を顧み、戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。 文字数は258文字です。このお言葉が14年間、変化することはありませんでした。 しかし、以下のように今年は大きく変化をしました。 「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。 終戦以来既に70年、戦争による荒廃からの復興、発展に向け払われた国民のたゆみない努力と、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という、この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき、感慨は誠に尽きることがありません。 ここに過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。 文字数は330文字です。文字数が大幅に増えたことからも、特段に今年はお想いが込められたものとなっていることが明確です。 表現には5点の変化があり、それはそのまま5つのポイントと考えます。 まず、第3段落目に加えられた「さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、」という部分です。この部分については報道でも大きく取り上げられました。大きく踏み込んだ表現です。過去を省みる時、先の大戦に対する「深い反省」というお言葉は、何よりも私たち日本人が踏まえなくてはならないことであるということです。心に刻まなくてはなりません。 そして、14年間変わらなかったお言葉に、今年、このようなお言葉が加わったことは、今の時期が大変に大事であるということです。今年の初めに出された、新年にあたっての天皇陛下のご感想でのお言葉、「この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」と合わせて考えれば、今が満州事変にはじまった戦争の時代をしっかりと学び、同じ惨禍を繰り返さないこれからの日本のあり方をしっかりと見つめなおさなくてはいけない節目が今であるということです。それは、「今」が同じ過ちを犯す可能性がある時、節目になっているということの裏返しではないかと私は思います。だからこそ、過去を見つめ、反省し、同じ過ちを繰り返さない未来を考えなくてはいけないとおっしゃっているのだと私は思います。 また、上記変化の部分に「今後」という言葉が今年は加えられています。この語の後に「戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」と続きますが、この部分は前年と同じです。今年は今後ということを殊更に強調されているお言葉です。これも年初のご感想から一貫するお心であると私は強く思います。 戦後を肯定するお言葉 お言葉の表現が大きく変わり字数が大幅に増えたのは、実は第2段落です。この段落では、例年通り戦後の国民の歩みについて言及されていますが、その部分が、今年、大幅に増えました。今年は、戦争の荒廃から立ち上がり戦後70年の国民の歩みは尊いと表現され、その国民は「平和の存続を切望」し、その国民の意識によって長い戦後は支えられ平和と繁栄を築き上げてきたと表現されています。そしてその長い戦後に対する「感慨は誠に尽きることはありません」というお言葉になっています。終戦から占領、そして国際復帰と続く日本の戦後を評価されています。それは、この時代が間違っていなかったということであり、維持をしていかなくてはならないということであると私は心から思います。 今年、この部分をお言葉の中でも特段に強調されるということは、この「戦後」が非常に重要であるということであると思います。戦前を肯定し、戦後を否定する考えがありますが、そのようなことはないという強いお言葉であると私は思います。このお言葉も、上述したように先の大戦の過去を学び、反省し、同じ過ちを繰り返さない未来を考えるということなのだろうと思います。本当に重要であるということですし、同時に戦後は本当に評価すべきで、維持をしなくてはいけないということであると思います。平和憲法の維持など今の体制をそのまま続けるということが大事であるということであると私は考えます。 「深い反省」と戦後への評価が、今年のお言葉のポイントであると思います。そして、このことが、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対する「心からなる」追悼と決意であるとことなのだろうと私は思います。 カギ括弧をつけた「心からなる」というお言葉も、前年と違うものです。前年は「心から」となっていて、今年は「なる」が加えられています。強調のお想いがこのお言葉にあらわれていると思います。 お言葉に永遠性を持たせた変化 昨年にあって、今年のお言葉にないところが一箇所あります。それは、冒頭の「本日」というお言葉です。「本日」というお言葉がないのは、平成元年のお言葉以外は今年だけです。あとはすべてあります。本日というお言葉は、期間を限定をするものですが、それが今年はないと言うことです。これは非常に重要な事ではないかと思います。つまり、今年のお言葉は、「本日」に限定されるものではなく、永遠なる性質を持ったものであるということであると思います。今年のお言葉は極めて大事であり、この2文字の言葉を使われなかったというお気持ちを私は強く感じます。今年のお言葉すべては、一過性のものではなく、これからもずっと考えなくてはならないお言葉ということです。この2文字を使われなかったことで、今年のお言葉に永遠性をもたせたと私は推察します。そして、その「御心」を私たちは熟考、我がものとしなくてはならないと心から思います。 じっくりと今年のお言葉を考えると、その内容は本当に素晴らしいものであり、天皇陛下の大御心を感じるお言葉でした。 終わりに、今上陛下が平成元年1月9日に出された、即位後のお言葉を付します。 即位後朝見の儀 平成元年1月9日(月)(宮殿) 大行天皇の崩御は、誠に哀痛の極みでありますが、日本国憲法及び皇室典範の定めるところにより、ここに,皇位を継承しました。 深い悲しみのうちにあって、身に負った大任を思い、心自ら粛然たるを覚えます。 顧みれば、大行天皇には、御在位60有余年、ひたすら世界の平和と国民の幸福を祈念され、激動の時代にあって、常に国民とともに幾多の苦難を乗り越えられ、今日、我が国は国民生活の安定と繁栄を実現し、平和国家として国際社会に名誉ある地位を占めるに至りました。 ここに、皇位を継承するに当たり、大行天皇の御遺徳に深く思いをいたし、いかなるときも国民とともにあることを念願された御心を心としつつ、皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国運の一層の進展と世界の平和、人類福祉の増進を切に希望してやみません。 「いかなるときも国民とともにあることを念願された御心を心としつつ」というお言葉、「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い」というお言葉、そして「国運の一層の進展と世界の平和、人類福祉の増進を切に希望してやみません」というお言葉。即位後に発せされたお言葉から今上陛下の大御心は、今も全く変わっていないと私は思います。その大御心を我が心と同一にして歩んでいかなくてはならないと心から思います。 最終編集日時:2015年10月21日 11時14分 | |
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