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今年はテレビの報道には気をつけるべき
[日本の政治]
2016年1月6日 23時46分の記事

昨年は政権と報道と言うことに関して非常に問題になった1年でした。果たしてその問題が解決されたのかと言えば、解決されたということが確認できる兆候はないように思います。テレビに対する許認可権を持つ総務大臣と経済再生担当相が正月からテレビ番組に呼ばれてマイクを握って歌い、白熱した議論が売りの番組では与党の議員が身分を隠して政権擁護をしていたことが問題になっています。選挙イヤーの今年、早々から政権と報道ということに関連していると思われることが、次々に出てきています。今年はそういう年と言うことを意識してテレビの報道やさまざまな発言を見る必要があるのは間違いないでしょう。そのような視点で見ると、実質がないものが誇張されていたり、論点の設定が偏狭で誘導的であったり、作為があることが目につくでしょう。

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さて、上記の白熱した議論が売りの番組とは「朝まで生テレビ」ですが、この問題となった件については、早期にテレビ朝日が謝罪をしています。早い段階で認めたことは良かったものと思います。

「朝まで生テレビ、議員の肩書伏せ意見紹介 田原氏知らず」(2016年1月4日 朝日新聞)

ただ、以下の記事には、自民党区議を制作サイドが依頼をして観覧させていたとはっきりと書かれていて、さらに制作サイドと区議とは20年来の関係とも書かれています。単なる観覧希望者と制作者というだけの関係ではないことは明らかです。

「『朝生』で肩書伏せて観覧し意見述べた大田区議『言う必要はない』」(2016年1月2日 スポーツ報知)

政治の世界ではよく街頭演説を行いますが、色々な場所で行う演説会にコアな支持者が来てくれます。何度も顔を合わすので、自然と気心が知れてきてスタッフなどと話すようになります。そして、何度もそのようなことが重なると、党首など街頭演説で顔となる人と挨拶をしてもらったりします。人と人との関係ですから、自然の成り行きでそういう流れになります。
上記の記事などを読んでいると、制作者であるディレクターと件の自民党区議は気心が知れている関係と思われるので、もし私がそのディレクターの立場なら、この20年間に一度くらいは番組の顔である田原総一朗氏にその区議を引き合わせ挨拶くらいはさせているのではないかと思います。想像の域を脱しませんが、そうであっても不思議ではないでしょう。
田原氏は知らなかったと言うことなので、知らなかったのでしょうが、制作サイドは件の自民党議員の素性を知っていて、観覧を依頼しているのですし、観覧者の意見を訊く時間も番組で設定されていることを知っているわけですから、今回の番組が一種、つくられているという可能性はどうしても否定できません。ここに番組の中立性が成り立たない要素があると考えられます。25年以上続く番組の顔である田原氏が制作サイドと意思疎通ができていないというのも少し驚きますが、田原氏は別としても番組自体の問題点はどうしてもぬぐいきれないものがあるでしょう。
今回のような問題が浮上したのは、明らかにネットの時代だからでしょう。五輪エンブレム問題と同じ構造であったのではないかと思います。そういう意味ではネットが発達していなかった時代に、この番組で今回、問題になったようなことが、もしかしたらあったかもしれないと推測します。実際、見ていて観覧席で発言する人が何か違和感があると思ったことは何度かありますから、そのような可能性があるとも考えます。いずれにせよ、これからはこれまでと同じようなやり方では通用しないと言うことは間違いが無いように推測します。報道番組なら批判精神やジャーナリズムが失われれば、大きな問題となるのがこれかではないかと思います。これはテレビ局だけではなく、政治や官庁なども欺瞞やごまかしがあれば大きな問題になるということです。

あきれた内容のNHKの予測番組
以前、本ブログでご紹介した「『日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦 』(NHKスペシャル取材班)」(2015年11月9日)など、NHKの報道番組の質は高く評価できるものが多くありますが、元旦に放送された「NHKスペシャル『大予測! 2016世界はどうなる?』」は、さすがに評価できるものではありませんでした。私は再放送された1月6日深夜のものを途中から見ましたが、見ているのが苦痛なほどのできでした。
出演していた女優の長澤まさみさんの受け答えは取り立てて問題視するようなものではないのですが、番組で扱われていた世界情勢についての解説は、かなり単純化されていて池上彰さんがかつて行っていたこどもニュースと変わらないもので、明らかに未来を予測するには稚拙で不十分なものでした。中国の海洋進出に関しては私が3年前、別冊正論に書いたようなことが、今さらという感じで解説されていました。今はもう少し事情が違うのではないかと思うのですが、この解説で大丈夫なのかと見ていて率直に思いました。
その他、ウクライナとロシアの問題は、単純明快に解説をしているのですが、それが本当の実情なのかとも思いました。出ている知識人の方の解説は、きっと色々な論文をよく読んでいるのだろうなと思うだけで、内容があるのかと疑問に思うレベル。このような単純化されたことで、未来が見通せれば楽なのだがと心から思います。
さまざまなところで、世界は大きく変わり始めたということは既に3年前から私は言い始めましたが、その変化とは時代を画するものです。一種の特異点を経ての変化なので、どんなに常識を積み重ねても実は次の時代は見えてきません。昭和15年当時の日本人に、戦後の日本のことを話してもたいていは夢物語か、非常識と思われたことでしょう。しかし、時代の変化とはそういうものなのです。それまでの常識が常識でなくなるということですから、実はこれまでの常識では将来はわからないのです。そういう意味では、今回の番組は明らかに常識的すぎるものであったと思います。そういう常識的なものは視聴者にとっては理解しやすいのですが、本当に大きな変化があるときは、実は多くの人が最初は理解できないものなのです。
ただ、見ていて思ったことは、このような番組でわかりやすく間違ったことを解説すれば、大衆をミスリードすることになるということです。そのような思惑があったかはわかりませんが、NHKはまず正確で多面的な情報を国民に知らせることが第一なのではないかと思います。その情報を見て国民が正確な未来像を把握できる、そういう報道が必要なのではないかと思います。

多様性の喪失が危機を増幅させる
経団連会長が政権に寄りすぎではないかという指摘に対して、現在は未曾有の経済危機なので無責任に政府を批判することは国のためにはならないと発言したと報じられています。

「経団連会長『賃上げ経済界の意思』 政権寄り指摘に反論」(2016年1月1日 朝日新聞)

しかし、現在の実相は政権が財界に寄りすぎているということではないかと考えます。未曾有の危機だからこそ政権が財界にとってマイナスのことをすれば間違いなく財界は批判をするものと思います。ですので、この発言は詭弁ではないかと考えます。
現状の問題は、この政・財が寄りすぎていると言うことが、実は日本国内での危機をつくり出しているということと考えますが、どうもそのことに気がついていないようです。政治の原理を忘れた政治が、財界と同じ方向性で政策を行えば、一見、良いように見えても、長期的には凋落をする構造になることになるのです。経済の原理と政治の原理は違うのです。
もう一つのポイントは、多様な視点の重要性です。未曾有の危機だからこそ、多様性を確保しなければ、解決策や方向性が先細りになっていきます。先の大戦でもそうでしたが、エリートがエリートだけで解決できると考えて行っても、実際は全く悲惨な状況になるということなのです。それは思考が一面しか見なくなるからです。個人でも思考が単調になると鬱になったりしますが、社会や国でも同じです。経団連会長の発言はそのような非常に単調な思考を感じさせるものです。これでは、未曾有の危機を招くのではないかと正直、思います。

今年の正月は、今年1年、どのようにして物事を見つめ、考えて行かなくてはいけないかというヒントが満載でした。

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先の大戦も、現在も日本国民を大切にしない政治。この2冊がそのことを雄弁に物語ります。

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◎ 拙著です

○ 『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』



内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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