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米国大統領の一般教書演説に見る日本の立場
[日本の政治]
2016年1月14日 23時54分の記事

1月12日(日本時間では13日)、米国のオバマ大統領が、米国連邦議員に向けての施政方針演説である一般教書演説を行いました。この演説は8年に及ぶオバマ大統領の任期中最後の演説となります。
この演説を聞いていて、随分、論調が変わったなと率直に思いました。米国の力、米国が世界一というメッセージが頻繁に出てきていました。もちろん、米国の力が世界一なのは事実です。しかし、この演説が連邦議員だけではなく、基本は米国民に向けての大統領のメッセージということを考えれば、このようなメッセージを頻出しなくてはならないのは、逆に米国民の中に米国の凋落を考えている人々が多いことを示しているものと考えます。
1980年に米国大統領にロナルド・レーガン氏がなったときも、同様のメッセージを出していました。それは70年代に米国の凋落が生じていた裏返しでありましたから、今回も同様の構造があるものと考えます。

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今回のオバマ大統領の演説は、大変にタカ派的というか強硬路線に感じられる要素が多くありましたが、しかし演説の放送中に映し出されたオバマ大統領の対局にいるマケイン上院議員の表情が浮かなかったことを見ても、オバマ大統領の路線の変化はあまりないものと考えます。
この演説でもう一つ、印象に残ったことは、バイデン副大統領の表情です。演説中、副大統領は演説者の後ろに座わりますが、演説しているオバマ大統領を同副大統領が我が子を見るような表情と視線で見つめていたことは非常に印象的でした。もしかしたら、このことはそのまま2人の実質的な関係であったのかもしれません。
この一般教書演説で特徴的なのは、一つのトピックが説明され終わったときになされる議場のスタンディング・オベーションです。1時間に及ぶ演説で何回、立ったかは数えていませんが、見ていてこれは大変だなと率直に思わされます。ただ、スタンディング・オベーションといっても、満場総立ちということもあれば、議場の半分の人しか立たないということもあり、トピックごとにそれぞれの人が評価をしていることが、はっきりとわかります。この一般教書演説でのスタンディング・オベーションはアメリカらしくて好きですが、現状の日本の政治のように行政府が、議会無視に近い軽視を行っていますから、これが米国であったなら大変な事態になっていたと考えられ、一般教書演説どころではなかったでしょう。

TPPに対する議会の反応
この演説でTPPのことが言われました。その部分で一言も日本というワードは出てきませんでした。そして、オバマ大統領がこのTPPに対して連邦議員に理解を求めているのにもかかわらず、このTPPの説明が終わったとき、議場前席の8人くらいがスタンディング・オベーションをしただけで、あとは誰も立たなかったのは非常に印象的でした。この反応は演説中の全てのトピックスの中で、明らかにダントツで最低のものでした。ここに明らかに米国議会の、このTPPに対する意志が表れています。実際、TPPやTTIPは、今年の米国大統領選以降の議題という議会の意志があったにも関わらず、TPPだけは前倒しに進みました。しかし、今回の一般教書演説を見ても明らかなように、実際の米国議会の反応は抗議に近いものがありますので、今後のTPPの進捗に影響がかなり確実にあるのではないかと考えます。
しかし、米国でも日本でも評判が悪いTPPをどうして進めるのか理解に苦しみます。

日本の存在・立場がない
この演説でのTPPの部分で、もう一つ特徴的であったのが、TPPに関わり米国がアジア・太平洋地域でリーダーとなると盛んに言われたことです。これは中国との対比で言われていますが、この部分の言及はまさにアジア・太平洋地域では米国と中国ということを示しているのです。つまり、その範疇の中に明らかに日本はないということで、それは米国の認識を如実に示すことであると考えます。つまり、日本は眼中に無いということです。
日本の現政権のTPPや日米関係についての説明を聞いていれば、この演説の部分で「日本とともにアジア・太平洋地域をリードする」くらいのことは最低でも聞きたかったものですが、そんなことは一切、ありませんでした。そして、この米国の認識は対中包囲網ではなく、最終的には米中による棲み分けになりますので、むしろ存在を消されているのは日本であると考えるべきでしょう。
いずれにせよ、安倍政権がこれまでTPPや日米関係についての説明や発言とは、随分、この一般教書演説は違うのではないかと思うに十分なものです。安倍政権は、国内向けにはかなり威勢の良いことを言っているようですが、実相は、そんなことはないということでしょう。
そして、この現実との大きな乖離は、日本の方が日米関係やTPPに前のめりになっていることから考えて、明らかに日本が米国に対して大幅に譲歩をしている可能性を大いに示唆しているものと考えます。TPPに関わる日米協議などほとんど報道されませんが、恐らくかなりの譲歩が、そこでなされているものと考えます。現政権の外交手腕では当然の帰結であるでしょう。
こう考えると、TPP交渉を担当していた甘利大臣は、よく正月から歌番組で歌えたものと率直に思ってしまいます。確か、この番組では、歌うほうがTPPよりも緊張したと言っていたと言われています。交渉と言ってもその程度かということなのかもしれませんが、本質的には交渉ではなく譲歩をしていたのかもしれませんし、それがTPPに対する日本の「国策」であったのかもしれません。
まだまだこのTPPに関してはしっかりと見つめるべきだと考えます。

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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