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軽井沢でのツアーバス事故に見る構造的な問題点
[日本の政治]
2016年1月15日 23時55分の記事

1月15日未明、軽井沢の一般道でスキーツアーの大型観光バス事故が発生しました。青春真っ只中の多くの若者が事故で犠牲になったことは、本当に心が痛くなる思いがしますし、心からかわいそうだなと思います。心からご冥福をお祈りいたします。
このニュースを朝から見ていましたが、朝の段階では事故の状況はよくわかりませんでした。しかし、ブレーキ痕がないなどのことは言われており、なおかつ関越道ではなく国道18号線と一般道で生じていることから、恐らくこのバス会社はよく言われるブラック企業ではないかと推測しました。そして、昼近くになると、この会社は国交省から行政処分を受けているなど「ブラック」と思われる情報が出てきました。「案の定」と思いましたが、そう思った方は結構、多くいるのではないかと考えます。

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同時に今回の事故を見て2012年4月に関越自動車道で生じたツアーバス事故を想起した方もまた多いと考えますし、だからこそ、「案の定」と今回の事故の背景をも想起するものと考えます。2012年の事故以来、制度的な変化はあり、今回の事故はそのときとは多少の違いがありますし、今回の事故の全容もまだ明らかになってはいません。しかし、やはりまだまだそこには、構造的で、また病的な日本経済・社会の問題点が背景にあるものと考えますし、利益優先主義という一部のものの、一時の極めて近視眼的な目先の利益というポイントがあると考えます。そして、そうしたものによって、様々な人、特に若者が犠牲になったとしたらと考えると、本当に切なく、やるせない思いがします。
今回の事故も、2012年の事故も、2000年代初頭の道路運送法改正に端を発しているものと考えます。このことは、ツアーバスだけではなく、タクシー業界においても大きな問題となりました。この流れは規制緩和、経済効果(効率)という近視眼的で時間軸がない「構造改革」なるものによって生み出されました。そして、確実にその犠牲者が出ているものと考えます。この構造改革を新自由主義的というのは間違いありませんし、小泉・竹中構造改革的というのもまた間違いではないと考えます。
このような構造改革で「一時の活況」はあったかもしれませんが、最終的にはその業界に多くの負担が重なり、信用を失い、崩れ、また犠牲者が出ていくということは、新自由主義の明らかな特徴と考えます。これが一業種だけではなく、広く行われれば、同様に広く社会は崩れ、その犠牲者が出ます。この範疇で生じているのが、貧富の格差拡大や非正規労働者の問題であるのは明らかなものと考えます。そして、この結果は社会のメルトダウンであり、国家のメルトダウンでしょう。一時的で近視眼的な経済効果(効率)を求めることによって、このようなメルトダウンを招き、経済効果(効率)など実現できないということは既に明らかなことと考えます。
新自由主義は目先の利益と時間軸のない思考に支配されていますが、社会は全体のバランスと連関、そして時間にそって動く生き物ですから、そのような新自由主義的な思考では是正や解決はできないのです。
今回の問題を見ていると、法律の数行の文字を変えるだけで人の命に関わるということを実感します。そして、それが政治なのです。それだけ重いものなのです。
安倍政権でインフレ政策、一方で賃金上げろと言っていますが、今回の事故を見るとそれもやはり上部だけのもので、構造はまだまだ全く変わっていないものと考えます。現在の日本は、15年にも及ぶ新自由主義的な構造劣化が染みついてしまい、かなり深刻な状態にあるものと考えます。本気で新自由主義脱却を考え、過去を顧みて新しいこと、新機軸を考えないと大変な状況になるものと考えます。そして、このことは、この20年、日本が凋落している構造をも変えることですが、現状をそのまま放置すれば、今後、様々な経済情勢から事態は急速に深刻になっていくものと考えます。安倍政権がこの脱却の方向にあるかといえば、そうではないでしょう。

同じようなことをしている
小泉・竹中改革というと、最近、さすが親子だなと思うことがありました。以下の記事のように、自民党の小泉進次郎農林部会長が、農林中金の融資姿勢を批判し、「農林中金いらない」と述べ、その100兆円にも上る資金を他の金融機関に運用させた方が良いと述べています。

「自民・小泉氏『農林中金いらない』 融資姿勢を批判」(2016年1月14日 日本経済新聞)

郵政民営化の本質については、様々なところで述べてきましたが、それは当時500兆円あったと言われる郵貯・簡保の資金の問題です。特にこの資金を外資に運用させるということが言われ、なおかつ郵政民営化スキームを作ったのが外資と言われました。私がいた国民新党はこのことに異を唱えたのです。しかし、一般では郵便局の接客が悪いとか、サービスのことがやたらと言われ、国民の大半はこの「本質」については、気がついていないものと考えます。
小泉農林部会長が今回、言及したことも郵政民営化の「本質」と同じです。この記事を見て「さすが親子だな」と思いましたが、小泉氏が農林部会長になった本当の理由は、ここにあるのではないかと推測します。
小泉・竹中路線が未だ続いているかと言えば、間違いなく続いているでしょう。それが自民党の本質でしょう。だから、TPPでも農業者の意向が反映されず、農業者が反発する事態が起こるのです。これが、自民党の本質であり、それは実は全く変わっていません。そして、このことは他のことも同様で、そこに非正規労働者の問題もあると考えます。
農林中金のお金は、以前の財政投融資のように社会や国の基礎固めに使われるべきと考えます。しかし、この小泉氏の言葉のままに移行すれば、恐らく間違いなくGPIFなどと同じように違和感がある株式投資運用が行われ、そして当たり前のように損失を計上するでしょう。その実相は合法的になされる富の移動なのです。そして、これが新自由主義の本性なのです。

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片桐勇治(政治評論家) さん
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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