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状況と原因を直視できない経済失策が日本を滅ぼす 
[日本の政治]
2016年1月30日 23時51分の記事

1月29日、総務省が発表した昨年12月の個人消費と企業生産の統計はいずれも悪化し、家計調査(速報)では、消費が前年同月比マイナス4.4%となり、4ヶ月連続のマイナスを記録したと報じられています。昨年末には既に消費が非常に低迷していることが様々なところで言われていましたが、改めて数字として見ると非常に深刻なことが明白です。年末というのは、消費が活発になる時期だけに、その時期におけるこの数字は、明らかに構造的な問題点があることが浮き彫りになっているものと考えます。

「12月の個人消費と企業生産悪化、景気に停滞感」(2016年1月29日 読売新聞)

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この数字を見ると、昨日の本ブログ「新機軸ではないマイナス金利の実相」(2016年1月29日)で指摘したように、現状の経済が相当悪く、マイナス金利を打ち出さざるを得ない状況がよくわかります。日銀総裁などが昨年から寝言のように景気は回復したと言っていたと思いますが、実際には言っていることとやっていることが違うわけで、社会の実相はまさに大変な状況であるわけです。このような状況なら当然、GDP算出方法を変えようとするでしょう。もちろん、その理由は誤魔化すためと考えます。
NHKのBS放送で1月30日朝に放送されていた「ワールドニュース アジア」でのシンガポール・CNAのニュース番組で、このマイナス金利導入について報道されていますが、導入の理由として言われていることは「日本の景気低迷」、「日本の経済は弱まったまま」です。そして、この景気低迷は「暖冬」などではないのは明らかです。史上希に見るマイナス金利を導入することが、暖冬のために景気が低迷しているからとそんな馬鹿なことは普通はないでしょう。そこには明らかに構造的な問題があると世界は見ているわけで、それは当然です。
上記の記事でも消費の落ち込みは「暖冬」という要因を挙げていますが、このようなことを言っているうちは本当の原因がわからないので、経済の低迷は当然、続いていきます。

年末はお金を使う
年末というのは、クリスマスがあり、年末の様々なイベントがあり、新年への準備とお正月があります。忘年会など年末は人と会食する機会も増えますし、家族で年末はちょっと良いものを食べようという気持ちににもなります。そして、クリスマスにはプレゼントやパーティーをしようとなりますし、クリスマス後の休暇は旅行に行こうと言うことにもなります。
また、新年を迎えるために様々な準備で出費がかさみます。そのような時期に消費が振るっていないのは「暖冬」のためではまずないでしょう。
昔は、年末というとボーナス商戦というのがありました。しかし、今や労働人口の4割にはボーナスはありません。それではボーナス商戦など成り立つはずもないでしょう。
出費が強いられたり、出費をしたくなる時期に消費が振るわない端的な理由は、出費するお金がないからです。出費したくともできないという状況があるからです。暖冬であるなどという理由はあるはずがなく、むしろ暖冬で浮くお金があるはずですから、その分、他のことにお金を回せるはずです。
このような状況になるのは、明らかに構造的な問題があります。だから、4ヶ月連続でマイナスになるのですし、そこに中国経済云々も直接関係はないでしょう。本質的に一般の人々にお金が回っていないから消費ができないのであって、非正規社員が労働人口の4割以上では当然、生ずる状況と考えます。
その他、消費税以外の税金なども上がっていますし、物価も上がっています。そのような状況で賃金が上向いていない人が圧倒的に多ければ、全体として消費が低迷しているという深刻な数字に表れるのは当然でしょう。消費が低迷すれば企業も収益が落ちますから、マイナスのスパイラルに現状、陥っていると考えられますが、このような問題点に直接施策を行うというような抜本的な経済対策がとられていません。これまで本ブログで指摘してきたように上部だけと思われることや貧富の格差を広げる施策、そして企業収益だけを見るような政策だけが横行していると考えます。これはで表面的には一時はよく見えても、全体性の崩壊は時間の問題でしょう。明らかに経済政策の失策と考えます。

人が「コスト」である限り経済は伸びない
昔の経営者は、社会のことをよくわかっていたもので、年末にボーナスを支給するというのは生活に根ざした良い慣行であったと思います。年末にボーナスを支給すれば、消費は促進され、世間の金回りが良くなって、みんな安心してお正月を迎えられるわけです。そして、新年、気分を新たにスタートを切れるわけです。かつては、経営者も、政治家も、日本のリーダーは社会の基盤、社会の営み、人々の営みを理解していたと思います。
それが年末に消費が落ち込んでいるようでは、その負の要因が翌年に持ち越されてしまいます。そういうことをこれまで何年も繰り返してきたのではないかと思います。
このようなことになるのは、人が「コスト」になったからでしょう。帳簿上では帳尻が合ったように見えても、実は近視眼的である故に、全体性が落ち込み、そのため実際の帳尻が合わないということではないかと考えます。これは、日本の社会の実情を見ないで海外(特に米国)で知ったことをそのまま日本に移植するような浅知恵が招いた結果であるとも考えます。このようなことは既に90年代から続いていますから、これが変わらなければ日本は変わることはないでしょう。そのような浅知恵なら、海外で学んだというような経歴や知識はもはや意味のないものでしょう。人々を苦しめるだけです。

問題点から目をそらしても問題は解決しない
このような状況で、昨日指摘したように、マイナス金利というバブルをつくり出す施策、市中の借金を増やして金回りを良くしようとする施策は、今ある傷口をさらに大きくするだけでしょう。
また、景気の低迷を外部要因を言ってごまかすのも、結局、それは政権の延命には力を貸しても、日本のためには全くならないと考えます。このようなものは、単に政治的な発言でしかありません。
現在の経済を人体で例えるなら、病状が悪いのに、「健康です、大丈夫です」といってモルヒネを打っている状況ではないかと考えます。普通ならそれは末期症状に近いということです。
現状、体の各細胞に栄養や血液が行きわたっておらず、新陳代謝が悪く、体自体が弱っているのですが、各細胞に血が巡ってきても、出血したり、血が他のところに言ってしまえば、細胞が活動する栄養は不足します。それでは、活性化しませんし、各細胞の再生もなされず、どんどん細胞の数が減っていきます。それでは各細胞だけでなく、体全体も不全を起こしますし、体力も機能もどんどん弱まります。それが現在の日本でしょう。
それならどうして、血流を回す施策を行わないのか不思議でなりません。マイナス金利も体全体で借金を増やすだけなので、抜本的な回復にならず、将来的な負の要因を増幅させるだけですし、株価があがってもそれはモルヒネに近いものでしかないでしょう。
これまで指摘しましたが、消費税を思い切って下げたりすることが現状は必要です。それにしても、これまで消費税を上げる理由などが、もっともらしい説明でなされてきましたが、どれも説明しているだけで、それが正しい施策というわけではないと改めて思います。このことは、甘利氏疑惑においても通じるものと思います。説明をしているだけで、本質ではないということです。このようなことが政治などで横行しているのではないかと思います。だから説明責任ということがよく言われるのでしょう。説明すれば、それで良いという間違った考えです。
日本を人体として考えれば、本当の問題は、問題点の本質や直面している状況から目を背け直視することができず、必要な解決策を考えられないとういう思考力・判断力に障害があるのかもしれません。それは、実は最も致命的な病状ではないかと私は考えます。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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