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エンゲル係数が上昇中
[日本の政治]
2016年1月31日 23時52分の記事

エンゲル係数が上昇していると報道されています。収入が伸びず、税金や社会保障費などが上がり、それで政府がインフレ政策をしているのですから、当然、エンゲル係数はあがります。もちろん、このことは個人的な話ではなく、全体として生じていることであり、だからこそ統計としてエンゲル係数が上昇しているのです。これは明らかに構造的な問題です。

「エンゲル係数が急上昇、日本の家計はそろそろ限界か?」(2016年1月27日)

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現状はこの構造的な問題に直接施策を施す政策がとられていません。生きる上で食費は必須のものですから、使えるお金はまず食料に消えます。その残りが他の消費へとなるわけですが、本ブログ「状況と原因を直視できない経済失策が日本を滅ぼす 」(2016年1月30日)で指摘したように、消費は深刻な状況になっています。これは明らかに可処分所得の減少が問題であるわけです。そして、これが個人の話ではなく、全体として生じているわけですから、構造的、政策的な問題点が浮き彫りになっているのです。
また、このような状況は、日本の経済・社会の中心である国民の生活状況が明らかに悪化していると言えるものです。このような状況でいくら株価が上がっても、それは単なる幻のようなものでしかないでしょう。この3年、株価が以前より上がってきていますが、しかし、経済の実態、国民生活の実態が改善されていないと言うことは、株価が上がってもそれらの問題に対して恩恵とはならないと言うことと考えます。

問題は可処分所得
エンゲル係数が上昇していることと消費支出が落ち込んでいることは同じことで、それは可処分所得の減少を意味しています。これが現状、日本経済や社会の最大の問題であり、この問題が一過性の「暖冬」などという理由ではなく、構造的であるのは明らかで、だからこそ問題なのです。
この問題は、別の側面では貧富の格差と言われます。これらはすべて同じ現象を他の言葉で言っているだけのことであり、同時にその症状は様々なところで確認できるわけですから、いろいろと報道されるということになっているのです。バブル後の不況で90年代は、お金はあるが先行き不透明なので所得は貯蓄にまわり消費が落ち込むという状況でしたが、現状は先行き不透明だろうと株価が上がろうと使えるお金がなさ過ぎるという状況でしょう。
これは、構造的な問題によって生じていますが、このことに対して政治的、社会的に対処することが非常に重要です。しかし、政治レベルでのリーダーシップはほぼ皆無と考えます。先日、導入が発表されたマイナス金利については、市中に借金を増やす政策と本ブログ「新機軸ではないマイナス金利の実相」(2016年)で指摘しましたが、可処分所得が少ない中で、このような政策がとられると小口で高利の融資と言うことが多数生じると考えられます。しかし、それは将来的な大きな問題を示唆するわけです。可処分所得が増えない構造での借金増加は確実にリスクになります。それは貸す方にも借りる方にも双方にとって大きな問題となって将来、確実に現れます。

富の再分配の必要性
現状、日本で行わなければならないのは、富の再分配です。貧富の格差をなくす方向で政策を行わなくてはなりません。富める者がさらに富んでも、それ以外への富の移転はありません。貧富の格差をなくすことは、実は双方にとってメリットになります。富の再配分をすると富める者が日本から出て行くという理由が浮上するかもしれませんが、出て行くなら出て行っても問題ないでしょう。そもそも再配分しないのですから、いてもいなくとも同じです。むしろ、そこで搾取が生じているのなら、いない方が良いでしょう。そのような人はどこの社会へ行っても実は同じなのです。
富者は、貧者を別世界のものと思うかもしれませんが、そうではなく、貧者がいるからこそ富者として存在できるのです。社会というのは富者も貧者も一体となっている生き物なのです。そこから貧者を切り離すと、今度は富者の中で同じような格差が生まれ落ちていく層が出てきます。
米国にゲーテッド・シティと呼ばれる、お金持ちだけの塀で囲われセキュリティ万全の居住地区があります。そこは外部からの脅威がないので全くの安心・安全の地域と思いきや、実は内部で凶悪事件が起きていきます。人間の集まる集団(社会)というのはそういう生態をもっているわけで、だからこそ社会的な弱者を包摂することは実は強者にとって必要なことであるのです。弱者がいかに包摂されているかによって強者や富者の状況が決まると言うことです。弱者を包摂しなければ、いずれ強者が弱者となっていく、そしてだれも残らなくなるというのが、社会の生態なのです。社会の生態は経済原則では動きません。生命の法則は経済原則では動きません。そして、人間というのは生命なのです。
バブル以降これまでの日本は全く反対をしてきましたし、トリクルダウンを首相が率先するまでに至っていますから、日本の社会の崩壊は加速しても、減速することはないのです。
国にとって必要なのは社会基盤です。この基盤を強化すること以外に日本の復活への道はありません。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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