ステグリッツ氏とクルーグマン氏? | |
[日本の政治] | |
2016年3月24日 23時54分の記事 | |
昨日の本ブログ「ステグリッツ氏とクルーグマン氏?」(2016年3月23日)の続きです。 「世界経済は弱さ蔓延、収支気にせず財政出動を=クルーグマン教授」(2016年3月22日 ロイター) ー)
昨日も引用した上記のロイターの記事において、実は非常に問題がある箇所があります。それは以下のところです。 〔クルーグマン氏は、〕金融政策に限界があるなかで、財政政策は有効と強調。金融政策を助けるためにも財政出動が重要として、5月の伊勢志摩サミットに向けて「各国は財政出動を調整すべき」との意見を強調した。内閣官房参与の浜田宏一・米イエール大学名誉教授によると、「各国が財政で協力すべきときに消費増税は問題がある」と指摘したという(2016年3月22日 ロイター)。(〔〕内は筆者注) 問題の箇所は、内閣官房参与の浜田宏一・米イエール大学名誉教授の「各国が財政で協力すべきときに消費増税は問題がある」という発言です。 積極財政政策の必要性については本ブログで何度も申し上げていますし、本ブログ「G20、積極財政政策の必要性を明示 」(2016年)で申し上げたように、世界的に積極財政政策の必要性が認識されていることは今や明確な潮流となっています。 なぜ浜田氏の発言がおかしいかというと、そもそも積極財政政策はアベノミクスの第二の矢として入っているからです。つまり、積極財政政策をやるから消費税は良くないと浜田氏は言っているのですが、それなら当初、アベノミクスなるものを始めたときから消費税増税は問題があったと述べていることになります。即ちこの発言は、安倍政権における経済財政政策において非常に齟齬があり矛盾した政策運営が行われてきたということになります。 第二次安倍政権で、積極財政政策(第二の矢)をやるとうたっているわけですから、当然、消費税増税はそもそも中止すべきであったと、浜田氏は発言は言っているのです。しかし、現実にはそうならなかったわけです。しかし、浜田氏は内閣府参与と政権のアドバイザーであり、国民にそのアドバイザーとしての役割を期待されているわけですから、イエール大学の高名なお方なのでしょうが、アベノミクスとうたった経済財政政策において消費税を容認したことは、不見識ということであり、責任問題であると言うことです。安倍首相は民主党政権における消費税増税に賛成しているのですから、そもそも見識がないわけで、参与が今頃になってごまかしの論理を使って消費税増税を否定しても、それは責任転嫁でしかありませんし、国民は途方に暮れるだけです。まあ、そこまで要求するのは酷なのかもしれませんが。 それともアベノミクス第二の矢は実はあまりやっていなかったということなのかもしれません。だから、このようなロジックが登場するのかもしれません。実際、クルーグマン教授に今回、積極財政政策を強調されていますから、これはアベノミクスでの積極財政政策(第二の矢)が評価されていないと言うことと考えます。つまり、そもそもアベノミクスは中身の無いものと言うことです。 浜田氏はGPIF損失問題について「(国民を)教育しなければいけなかった。損をするんですよ、これだけ儲けるんだから(と)」((2016年1月19日 日刊ゲンダイ) と述べた方ですが、これは今回と同じようなロジックであると考えます。責任転嫁の論理です。本来は参与がしっかりとアドバイスすることこそが求められているはずです。国民一般は影響力は行使できませんし、だからこそ参与という立場が置かれ任されているわけですから、しっかりと責任を果たすのは当然のことです。ただ、実際はそうなっていないことが明確なっているものと考えますし、ロイターの記事は明確にそのことを物語っています。 政治的な意味 もちろん、このような発言が出てくるのは政治的な意味があります。現状、首相が消費税増税を実施しない理由として挙げていたリーマンショック級の経済クラッシュがないですから、増税を実施しない理由として上記のようなへんてこな論理が出てくるわけです。そして、このようなへんてこな論理が出てくるには理由があって、それは消費税増税を実施しないことを選挙の争点にしようとしているからと考えます。 しかし、一度、2014年の選挙でこれが争点になっているのですから、選挙の度に争点にするのはあまりにもおかしいでしょう。選挙の度に争点にして集票の目玉にするのは、政治の私物化であり、あり得ないことです。争点として成り立つのは2014年の選挙の時だけであって、既に消費税増税が経済に極めて深刻な影響を与えることは明白なのですから今回は、最低でも中止を言わなくてはいけないはずです。それも選挙の前にです。 そして、選挙の争点にするのではなく、この増税がそもそも大連立で成されたものですから、大連立で、選挙前に片付けるべきであるのは明らかです。このことが今回、二人のノーベル経済学賞受賞者を招いて意見聴取した紛れもない結論でしょう。 政権がそのようにできないなら、政権が消費税増税見送りと言うなら、野党は中止を言うべきでしょうし、政権が消費税増税中止と言うなら、5%への減税と言うべきでしょう。野党は今国会で法案を出して対応すべきでしょう。 このように消費税増税中止しても、または減税しても経済には問題がないと考えます。二人のノーベル経済学賞を受賞した専門家が言うのですから間違いありません。もちろん、私もそう考えます。今や中身の無いパフォーマンスだけの政権の経済財政政策よりも、消費税減税をした方が、景気対策として最も効果的であると考えます。なにせ、減税したパーセンテージ分だけ国民の可処分所得を増加させ、購買力を高めることがはっきりしているからです。そして、経済に好循環が生じれば、税収も増えて行くわけです。そして、その方向でしか現在の日本が抱える経済・景気問題と財政問題を解決できる可能性はありません。 このようなことは、二人のノーベル経済学賞を受賞した専門家に聴くまでも本当はないことです。そもそも予期できる範疇のものでしかありません。しかし、日本においてここまで迷走しているのは、政治家の不見識だけではなく、一般においても間違った認識があるからです。そうなる理由は、またいつか別に書くことにしましょう。ただ、そのヒントはマクロの視点です。現状の問題点は、個別事項に焦点が行き過ぎて、その個別事項が全体に拡大されて、全体(公共)において深刻なゆがみを生じさせていると言うことです。政策的にものをよく知っていても正しい判断が出来るものではないのです。それは問題が知識ではなく見識にあるからです。ものの見方が重要なのです。部分に拘泥しすぎると全体のバランスを崩し、生命力を失います。これをこの20年、日本はしてきたのです。このようなことは『ザ・フナイ 2015年10-11月』で書きました。 | |
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