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一文惜しみの百知らず
[日本の政治]
2017年6月15日 3時18分の記事

安倍政権の外交政策というのは、既に破綻をしていると言ってもよいのではないでしょうか? 第二次安倍政権発足当時に比べると方向転換を余儀なくされています。

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朝、何の気なしにテレビをザッピングしていて、韓国のドラマが目に止まりました。BS朝日で朝8時半から放送している『家族を守れ!』という番組です。昨年暮れから韓国政局が焦点となっていましたので、韓国や韓国の人々とは一体どのようなものなのかということが少し気になっていたので、その番組に目がとまりました。
このドラマの全ては見ていないのですが、他の韓国のドラマと同様に、ストーリー展開はとても刺激的、強烈で一度見始めると、次の回を見なくてはならなくなるという虜にされてしまいます。日本で言えば、倍返しの『半沢直樹』や『下町ロケット』にその要素があったと思います。しかし、このドラマは韓国において月曜日から金曜日まで毎日35分ほど放送され、それが5ヶ月も続く大作です。5ヶ月もこの強烈なストーリー展開が続くとなるとちょっと精神的な体力がもたないという気持が芽生えます。
この『家族を守れ!』は、日本で言えば『渡る世間は鬼ばかり』のように家庭を舞台にしたもので、動きがあるものではありません。また登場人物の顔や表情、様々な設定が韓国のテイスト(味)が色濃く、見ているだけで別世界にいるような錯覚すら覚えます。ただ、それはそれで美味しいのですが、他文化の料理が口に合うのは人それぞれのように、この韓国テイストもその好みは人それぞれでしょう。とは言え、韓流ドラマにはまる人の理由はこの強烈さにあるのだろうと得心します。
テレビドラマというのはどこの国でも、一種の虚像です。ただ、日常生活を舞台にしたドラマというのは虚像であっても、やはり現実の日常生活に密着している部分があります。そういうものを視聴者がのめり込んでいくようにドラマがつくられているわけです。それは、韓国の人々の習俗とともに、人々が求めるものや大事にしていることが自ずとその中に盛り込まれているということなのです。
私は韓国の生活に詳しいわけではないので、日常生活を題材にしたドラマのどこが虚像で、どこからが実像なのかはわかりません。しかし、テレビドラマであっても見方によって色々な示唆を与えてくれます。このドラマはKBSという公共放送局で放送されたものであり、視聴率が28%を超えるようなかなり人気があったものですから、示唆に富むと考えました。そして、やはり、このドラマが韓国世論においてどのような意味があるのかという視点で見てしまいます。もちろん、このドラマには世論誘導という要素もあると考えますが、そういう点もまた興味の対象になります。

まず、見ていて非常に感じたことは、それぞれのキャラクターの自己主張の強さ、その主張の辛辣さというのはあるでしょう。大抵の日本人ならそう感じるように思います。
その他に目につくことは、老人を敬う、上下関係が非常に厳しい、嘘を嫌う、貪欲(嘘、冷酷)と清貧(正直、暖かさ)の対比、謝ることが多いというのがありました。日本と韓国は全く違うという意見もありますが、必ずしもそうではないでしょう。このドラマを見ていてもどこか懐かしく感じる部分もありますし、共通項も多いと思います。ただ、大きな違いもあります。そして、その共通項や大きな違いが意味することをよく考えることは、今後の日本人にとっては重要になることと思います。
いずれにせよ、見ていて謝ることが多いというのは意外でした。誰かの代わりに謝るというフレーズも結構あります。“ビアネ”という謝罪の言葉が多く出てきて、この言葉はドラマを見ているだけで憶えてしまうくらいです。書き方とかはわかりませんが。

さて、この「家族を守れ!」での山場の一つが、主人公の女性が営む小さな総菜屋さんで人気があった「魔法のタレ」を、大手の食品会社がレシピを盗んで、同じ名前で売り出したことです。この盗用を知った総菜屋さんは食品会社に抗議するのですが、逆に名誉毀損という理由でスラップ訴訟をその食品会社から起こされて、盗用を示す証拠がないので、泣き寝入りをしてしまいます。韓国の人が一番、怒りを感じる要素なのでしょう。
このストーリー展開を見ていて、2015年の日韓の慰安婦合意もきっと韓国の人々は、このドラマのあくどい食品会社と日本がオーバーラップしたのではないかと率直に思いました。同じ手法で日本は対してきているそう思ったろうと思います。
文韓国新大統領がこの慰安婦合意について、選挙中は見直しに言及し、就任後も焦点の一つとなり、韓国ではやはりこの合意に関して風当たりが強いことが報道されています。

「文大統領が二階氏との会談で慰安婦合意に難色、日本は反発」(2017年6月13日 朝鮮日報)

「韓国大統領 “慰安婦問題の解決には時間が必要”」(2017年6月12日 NHK)

「『慰安婦合意の再交渉』 発表文から削除=韓国大統領府」(2017年6月13日 聯合ニュース)

国と国との問題ですし、この合意によって、日韓における無益な非難合戦を避けたことにはなりました。しかし、一方で無理に幕引きをしたという感情も報道の通り残っています。そして、慰安婦の当事者がいまや高齢者ですから、上記のドラマのように高齢者を敬う文化にあってはやはり怒りの火がつきやすいものです。さらに、韓国は被害者の立場で考えますから、この慰安婦合意とその後の経緯は、上記のスラップ訴訟を起こされて、黙らされるという受け止め方をすると考えます。
一度、合意を結んでしまっているのが現状ですが、この合意後のことをしっかり見つめないと、かえってマイナスに作用するものと考えます。むしろ、かなりのマイナスになっているのが実相と考えますし、現状、日本の対応は未来志向というにはほど遠いもので、その結果として未来へ残すものは禍根というレベルと考えます。
上記、朝鮮日報の記事には、菅官房長官が「国際社会も高く評価する合意であり、着実に実施していくことが重要だ」と述べたとありますが、このかなり曖昧な国際社会の評価というのも国連事務総長の発言などで一悶着あったわけです。そして、日本からこのように言われた韓国側の立場も少し考えないと事態は悪化するだけと考えます。
安倍政権の外交政策は、第二次安倍政権が発足した頃と比べると方向転換を多くし、随分と変わっています。そして、実に実りがないのです。しかしそのことへの責任感はありません。対中政策にしても、中国包囲網といってはばからなかったものが、今やAIIBや一帯一路に協力するとまで言っています。協調路線はよいことですが、安倍政権は確実に禍根を既に残してきているです。そこには確実に責任がありますし、同時にそのような政権が日本の外交環境を今後、良好にすることはできないものと考えます。
このようになるのは、近視眼的な手前勝手な政策を推し進めたことにあると考えます。「一文惜しみの百知らず」という言葉が会うように思いますが、目先の利益にとらわれて大損をするということが、あると考えます。やはり地球儀しか俯瞰していない外交と考えますが、そのことによって日本が失うものは多かったと考えます。そして、このことはまた安倍政権の経済政策でも同じなのです。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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