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CIAから自民党への資金提供に関する特大スクープの意味?
[日本の政治]
2016年1月17日 23時57分の記事

西日本新聞がスクープ記事を新春から出しました。米紙ニューヨーク・タイムズが1994年10月に米中央情報局(CIA)が1950〜60年代に自民党に資金援助していたと報じていますが、この資金提供に関する米機密文書を公開することに、当時、日本の外務省が強く反対し、現在も未公開になっていると西日本新聞が報じています。このことを証言したのは、米国務省刊行の外交史料集「合衆国の対外関係」の編纂に携わったマイケル・シャラー米アリゾナ大教授で、この編纂過程において上記の一連の出来事があったと言うことです。
ただし、2006年7月刊行の「合衆国の対外関係」の第29巻第2部「日本」では、政党名や個人名については明かされてはいないものの、CIAの資金提供の概略は編集者の注釈の形で明記されていると記事では書かれています。したがって、資金提供に関しては間違いなく米機密文書には書かれているということです。
この記事の問題については、本ブログ「CIAから自民党への資金提供に関する特大スクープの意味」(2016年1月10日)で一度、触れていますが、他、様々なことも含めてもう少し詳しく見つめていきたいと思います。前回と重なる部分が少しありますが、数回に分けて書いていきましょう。

「『外務省が機密解除に反対』 CIAの自民政治家へ資金 米元諮問委員が証言」2016年1月6日 西日本新聞)

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この報道はメガトン級のスクープです。なぜなら、この記事が語っているのは、このことだけではないからです。つまり、この記事に書かれている事実が、他の様々な事柄も肯定していきます。
また、この記事は1990年代の出来事についてのものですから20年前、そして資金提供がなされていたのはそのさらに30年から40年前で、現在からすれば60年から70年前のお話です。しかし、現在の私たちに直結するお話であると言うことが、もう一つのポイントであるのです。だからこそ、現在もこの資金提供に関しては秘密とされ、公開されないのです。つまり、現在もその時からの系譜がつづいていると言うことなのです。
国家間でのお金のやりとりは極めて長期間の中で行われ、そのことが国家を縛っていきます。長期間とは40年、60年、100年という長さで、人の一生の期間を超えるスケールで行われます。だから、ものすごい昔に見える出来事でも現在進行形のことが多々あるのです。日露戦争(1904年−05年)の時に、日本が国債を発行して調達した資金を返済し終えたのは、なんと80年後のバブル期の1986年です。その間、二つの世界大戦を挟んでいますが、ずっとこの返済に関わることに日本は縛られているのです。これらのことは拙著『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015年 ビジネス社)で書きましたが、このように長期でなされるのが国家間のやりとりなのです。国家や外交の問題は、このように長期でなされるという視点でまず見なくてはなりません。したがって、上記の記事も、現在進行形のお話として考える必要があり、またそのように見ないとことの本質はわかりません。
昨今、自民党が戦争直後の米国をはじめとする連合国による占領期の検証をすると言っていますが、この記事を見る限り、自民党は戦後の米国と関わった自民党政治を検証する必要があるでしょう。それが最終的に先の大戦に関わる日本の検証でしょう。

45年前、同種のことを日本人が証言している
この西日本新聞のスクープ記事の内容については、何も米国人だけが言っていることではありません。45年前、日本人も証言しています。この西日本新聞の記事と45年前の日本人の証言という二つのことによって、このCIAによる自民党などへの資金提供は事実と言うことが確定的と考えます。
しかし、45年前に語られていることはこのことだけではなく、他に様々語られていますが、今回の西日本新聞のスクープ記事は、それらのことまでを確定的と考えられるものにします。それでは、その45年前に語られた証言とは何かを追っていきましょう。
1971年、『富士ジャーナル』という雑誌上で、小日向白朗という人物が、今回の西日本新聞のスクープ記事と同様のことを言っています。小日向白朗は、1900年、新潟県三条市に生まれ、戦前、若くして単身、中国に渡り、捕虜から中国全土の馬賊の総頭目になった人物です。戦後は日本で池田内閣のアドバイザーもつとめ、戦前、戦中、戦後の日本や東アジアの裏と表を知り尽くした人物です。
この小日向氏が1971年、富士ジャーナルという雑誌で、米中接近やベトナム戦争などニクソン・ドクトリンや、沖縄返還、そして戦後、日本が1950年代初頭、30億ドルを米国経由で借り受けていることなど、当時の日本の政治の裏表を語っています。その中に上記のCIA資金の話が出てきます。
1970年、小日向氏は米中接近や沖縄返還にかかわり渡米し、かなり大きな役割を果たしますが、これらのことは後段、触れるとして、まずこの資金に関する証言を長いですが、以下に掲載します。
この証言で言われている日本が米国経由で借り受けた30億ドル(当時)ということが、拙著『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015年 ビジネス社)で取り上げたもので、この借り受けたお金の「契約」は2013年まで続いたと拙著で書きました。つまり、ほぼ現在進行形のお話で、この2013年を境にして日本の政治、日米関係が変容していると考えています。つまり、私たちの生活に極めて大きく関係するお話であるのです。
また、以下で語られている「30億ドル」といえば、現在では約3600億円程ですが、当時にしては30兆円以上の価値を持ちます。括弧内は筆者注釈です。


本誌(富士ジャーナル) 財界へのアメリカからのひもつき資金というのは――

小日向 これは問題なんですが、戦後吉田さんがアメリカへ行き「戦争で破壊されて、日本には工場も、発電所も、道路や鉄道もない。そこで日本の産業を復興するには、どうしても金を貸して欲しい。最低、電源開発に十億ドル、産業復興と国土開発資金に十億ドル、それにモノを外国から買わなければならないから、その輸出入資金として十億ドル合計三十億ドル貸してくれ」と頼みこんだわけです。ところがアメリカ政府としては、融通のきく金はないわけですよ。そこで、政府が保証して民間の資金、これはサッスーン財閥が出したといわれてますが、それを貸してくれることになった。勿論、表向きでないかたちですよね。これは、昨年アメリカに行ったと時に、ハーバード大学グループとの話し合いで聞いたわけだが、とにかく、この資金のおかげで戦後の復興が進んだわけだ。
今では、八十八億ドルにも元利がなっているというんだが、元金、利子をのけて、儲けた金は、全部金に直して日本においてもいいということになっているそうだ。
例えば、或会社が一千億円を借りたとすると、その主力銀行がその保証をし、それを更に日銀が保証するかたちをとるんだが、その時一〇%が政治調整金という名目で天引きされるんですよ。その一〇%のうち、三・五%=三十五億円は、金利分として元金の方にくり入れられ、日本銀行の口座にいく。次の三・五%、三十五億円は、大統領の名において日銀の口座にふりこまれるが、それはキリスト教伝道基金という名目でCIAが使っているらしい。というのは、伝道基金の事務所は、神宮外苑にあるが、CIAの連絡所も同じところにあるという話だ。残りの三%は与党の政治資金ということかな。
そうして日本の通常金利は六・五%だからその中の三・五%は扱い銀行のリベートで、それを除いた残りの三%、三十億円は、日本とアメリカとが共同でためになることに使わせるということだ。その内容をアメリカ大使館が調べ、政府に報告して使わせるわけだが、こんな金が、これまで何百億使われたかわからんですよ。(『富士ジャーナル7月号』1971年 P.24−25)


CIA資金とともに「残りの三%は与党の政治資金ということかな」と述べているわけで、西日本新聞のスクープ記事の本質はここにあるのでしょう。そして、そのお金の流れが小日向証言では詳細に語られているわけです。
西日本新聞の記事の注釈では、「2006年7月刊行の『合衆国の対外関係』第29巻第2部『日本』は、CIAが58年から60年代にかけ日本の保守政権安定を目的に資金提供したと公表した」2016年1月6日 西日本新聞)と書かれていますが、具体的な政党名や政治家名は明らかにされていません。しかし、「研究者の調査などで岸、池田政権下の自民党有力者らが対象だったことが判明している」(同上)と書かれています。小日向氏は池田政権のアドバイザーでしたからこのあたりの情報とも符合します。
このような資金が当時の自民党の活動に使われ、その額は相当大きかったと言うことです。また日本企業にも銀行にもこの紐付きの資金が行き渡り、電源開発にも使われています。さらに小日向証言では、日銀がこの資金においてマネーロンダリングの機能を果たしているともとれることが言われています。この証言を読むと、戦後日本の銀行の護送船団方式や日本企業の興隆、また電源開発の意味も一般に思われているものとは違うことがわかります。
小日向氏はこの30億ドルの「復興資金」があって日本は戦後の焼け野原から復興したと述べています。その通りだと私も考えますが、しかし紐付きである以上、裏があるわけです。そして、借りたお金だから貸し主の「サッスーン財閥」に利子をつけて返す必要もありますし、保証した米国にもお金が払われていたと考えるのが自然です。そして、さらにこの資金の隠された側面を以下のように小日向氏は証言しています。


(小日向) ところが、この復興資金三十億ドルの借りも背景にあってか、講和条約を結んだ時に、吉田さんは日本の航空権、国防権、電波権を売り渡し、その自由使用をアメリカに認める特別覚書きを密かに入れているんだ。
今年の四月二十六日にニューヨーク・タイムズが“核戦力の通過問題”の密約説を発表したが、それは、その中の一つにすぎない。この記事も漠然としているが、一応発表したということは、密約問題を僕がしゃべってもいいというようにうけとったので、いってしまうわけだが、この密約によって、日本の自衛権は一たん戦争が始まれば、全部アメリカの指揮下に入らなければならないわけだ。また日本は、アメリカ軍の施設には、アメリカの許可がないと自衛隊でも入れないが、逆にアメリカ軍は、自衛隊の施設でもどこでも自由に入れるという不平等な状態がいまでもつづいているわけなんだ。
だから、憲法も安保条約も、実は見せかけにすぎないんで、日本をしばっているのは、この密約なんだよ。
したがって、日本の国内にも核はあるんだ。
先頃問題となった沖縄のVOA放送、これは何のためにあるかと言えば、中国が原爆をもっている。中国はそれを使う気は全くない、よその国にその技術を売ろうとさえしているんだが、ソ連は、日本と中国を牽制するためにICBM網に懸命なんだ。そこで、これを防ぐには、迎撃して空中でおとすABM網が必要なんだが米ソはお互いに相手が、それをもっていることを知っている。そのABM網の電波探知機の触覚になるのが、あのVOAですよ。(『富士ジャーナル7月号』1971年 P.25−26)


拙著『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015年 ビジネス社)は上記の小日向氏の証言を元に論を展開しています。つまり、「復興資金」を60年返済で借り受けたと考えれば、この融資の起点は日本が国際復帰した1952年4月28日で、満期になるのがその60年後の2013年4月27日ということになり、このことにまつわる日本の政治や日米関係の変容が確認できると述べました。日露戦争の「戦後」が1986年に終わっていますし、ドイツが第一次世界大戦(1914年−1918年)の戦後賠償を支払い終え「第一次大戦の戦後」が終わったのは2010年です。そう考えれば、2013年に太平洋戦争の「戦後」が終わるということは、別に突飛なことではありません。それが、国際政治なのです。そして、この国際政治が国内政治を縛っているのです。
次回は上記の小日向証言にある核密約について触れたいと思います。

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先の大戦も、現在も日本国民を大切にしない政治。この2冊がそのことを雄弁に物語ります。

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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