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TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?
[日本の政治]
2016年2月9日 23時50分の記事

本ブログ「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月7日)の続きです。

「世界と日本はどうなる? 仏学者E・トッドの“予言”」(2016年2月1日 TBS)
「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月7日)
「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月6日)
「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月4日)

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本ブログ前回において、トッド氏が今後20年で欧州が分散・分解の道をたどると予言したことについて、その本当の問題は難民問題でもイスラム問題でもなく、再分配・利害調整機能の不全にあると申し上げました。そして、そのことに欧州の指導者がしっかりと対処していないから欧州は将来、分散・分解するとトッド氏は言っているであると申し上げました。
このような政治状況では当然、格差や貧困という問題が至るところで浮上します。トッド氏は、欧州の指導者は本来の問題を直視せず「イスラム教の問題」としてすり替え逃げていると述べています。これは日本でも同じことがあると考えます。「イスラム教」を他の言葉に代えて考えてみればいくらでもあるでしょう。
このようなことをトッド氏は西欧社会の麻痺状態と言っていますが、別に西欧に限ったことではありません。そして、これはトッド氏も言うように文明の衝突でも宗教戦争でもないのです。これは本ブログ「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月6日)で申し上げたように「文明の衰退や文化・宗教性の衰退」なのです。「文化・宗教性」とはもちろん今の自民党などが言っている復古主義のことでは全くありません。
トッド氏は、欧州で、指導者が本来すべき政策をせずに、民衆の目を他に向けるために移民・難民の問題やイスラムの問題を引き合いに出して利用し、それらが政治的に利用される代替物となっていて、これはナチスなど反ユダヤ主義が台頭した暗黒の時代と同じだと述べています。これもその通りでしょう。ナチスが台頭したのも、当時、ドイツ国内が荒廃している中で生じています。問題を直視せず、他に転嫁し、最終的に滅びました。日本の過去もまた同じです。
しかし、上述したようにこれも欧州だけの話ではありません。トッド氏の西欧社会の麻痺と指摘している、本来の問題を直視しない政治、自らの政策の失敗に責任をとらない指導者というのは、今の日本の政権と全く同じではないかと言えると思います。そして、そこには国民との対話は本質的にないのです。したがって、問題解決能力もまた皆無であり、国民と国家を危険な方向にただただ必ず引きずっていきます。

哲学の時代、抽象性の時代
トッド氏は、このような麻痺状態の状況の根底にあるのが、社会に蔓延する「エゴイズム」、「ナルシズム」と言っています。まさにその通りで、これを一言で言うと消費主義・快楽主義と言うことです。そうのような状態では当然、他者との絆や連帯感ということが失われ、人々は分断されていきます。
もちろん、このことも欧州だけではなく、日本も同じです。この「エゴイズム」、「ナルシズム」、また消費主義・快楽主義というキーワードで、今の日本の社会や政治を見れば本当にそのことがよくわかります。そして、この病が社会を覆うとき、トッド氏が指摘するように凡庸なリーダーが出現するだけではなく、危険な指導者もまた生まれるのです。
このように社会が「エゴイズム」、「ナルシズム」という消費・快楽を起点とした精神構造になることが、国境を越えて日本や欧州に見られるのは、その精神性を形づくる明らかにグローバル資本主義の蔓延にその原因があります。その元は同じなのです。再分配や利害の調整を否定するトリクルダウンという発想もそこから出てきます。そして、かつてもまた同じなのです。グローバル資本主義というのはずっと昔からあるのです。
このような時代に対していかにすべきかと言うことについて、トッド氏は「善き人生とはどういうものか」という根本的で倫理的な問題について考えるべきと言っています。これを一言で言えば「哲学」です。それは、また復古主義ではない本来あるべき姿の宗教性と道徳でもあります。このようなことを実際、『ザ・フナイ』で「ローマ法王フランシスコの『福音の喜び』を読む」で書かせていただいています。トッド氏の考えと本ブログでの私の分析が同じになるのはこのような背景があるからで、連載ではさらにかみ砕いて詳細に半年前から『ザ・フナイ』において書かせていただいています。上記の消費主義・快楽主義などについては『ザ・フナイ』で既に分析していますし、「21世紀の哲学」についてもそこで明示しました。それはこれからの時代において必然的に必要ななものであるのです。
トッド氏は「各国があるべき姿を模索していかなくてはならない」と述べていますが、このことについても『ザ・フナイ』で書かせていただきました。このことのキーワードは、アイデンティティです。これからは全体性とアイデンティティの並立と融合が非常に重要になります。是非、『ザ・フナイ』をお読みいただければと思います。特に2016年1月号から4月号(来月発売)まではこれらのことについて書きましたので非常に重要です。そして、私がこのように書いているというのは、トッド氏の述べていることは何も欧州だけのものではなく、日本も直面しいてることということなのです。

日本について
トッド氏は、今後、日本がどうあるべきかを述べています。日本の最大の長所は最大の問題点と述べていますが、この言い方をする場合、あまり分析の準備をしていない可能性を考えます。
トッド氏は、この日本の今後について、日本は不完璧さを受け入れ、また最低限の無秩序を受け入れるべきと述べています。子どもを持つことも無秩序と表現し、このような意味で移民やその子どもを受け入れるべきと述べています。秩序的であることは悪いことではないと考えますが、「もっとワイルドに」ということはその通りでしょう。思考に柔軟性を持たせたり、多様性を発揮させるための思想や方向性は、今の日本において非常に重要でしょう。
しかし、日本人が秩序的なのが、完璧さの表れと考えるのは少し早計かもしれません。日本人が秩序的なのは不安定な状況に置かれている不安心理の裏返しの側面があると考えます。東日本大震災の時の日本人の秩序さは、まさにそのようなものであったと思います。それが高じると逆に保身となっていきます。
日本の秩序的なことは、実は欧州と同じように不安の心理という側面があると言うことですし、上述してきたように両者とも共通の現象を確認できるわけです。
このような状況に対する処方箋はやはり哲学であるのです。その哲学において再分配や利害調整が欧州と同様に日本に必要という考えになっていくでしょう。そして、その哲学は最低限の無秩序をどのように考えるか、そしてそれを生産的なものに変えていくにはどう考えるべきかという思考の起点でもあるのです。そのためには、社会科学の研究や知見をもっと深める必要が日本にはあります。そして、社会はどうあるべきかを学び研究していくと、最終的には生命とは何かという深遠な思想・哲学に繋がっていき、それは社会とは何か、国家とはどうあるべきかという政治思想になっていきます。社会(国家)と個人が平和で安寧に生きて行くためにはどうすべきかという起点がすべての哲学の出発です。これが方向感を失った現代の日本に必要なことでしょう。そのようなことを上述した『ザ・フナイ』でたっぷりと書きました。トッド氏のインタビュー番組は、日本に必要なものは何かをはっきりと明示する非常に重要な思考の起点と指標になると考えます。

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○ 『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』



内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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