TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸? | |
[日本の政治] | |
2016年2月7日 23時46分の記事 | |
本ブログ「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月6日)の続きです。 「世界と日本はどうなる? 仏学者E・トッドの“予言”」(2016年2月1日 TBS) 「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月9日) 「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月6日) 「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月4日)
再分配の問題 トッド氏はインタービューの中で、欧州の今後20年はEUの分散・分解の歴史になると言っています。この発言に関してインタビューアーの方が、結構、驚いている感じでしたが、このお話しは別に新しいものではなく、1年以上前から明白なことでした。言ってみればギリシア問題が明らかになったときから、この問題は現実味を帯び、動き始めたと言って良いと考えます。このようなことはこれまで様々なところで申し上げてきました。 この原因、ポイントは極めて明白で、利害の調整、再分配がしっかりと行われていないことにあります。通貨統合をして政治統合を目指して動くのは一見、良いように見えますが、そこに再分配と利害の調整という機能がなければ確実に格差を生じ、それに付随して様々な問題が発生し、全体の崩壊をもたらします。 このことは、実は日本も経験しているのです。江戸時代から近代にかわり、日本は通貨も政治も中央集権として統合されました。そのことによって江戸時代には栄えていた「地方」も、徐々に衰退し現在に至ります。ただ、全体性の崩壊に至らなかったのは、再分配によって格差を是正してきたからです。そして、その格差是正はまた、中央にも利益をもたらし、全体として大きくなってきたわけです。 EUには実はこの機能がありません。ギリシアは既に内部で「中央と地方」の利害調整機能が破綻していますし、さらにEU全体としての中央と地方(ギリシアなど)の利害調整機能もありません。これでは、ギリシアは沈む一方です。そのような状況で、ギリシア再建に必要な資金を「融資」するとなっていますが、これでは、ギリシアはいつになって貧困から抜け出すことはできません。このギリシアの件だけでもEUの一部が壊死していく構造になっているわけで、それが他の地域にも同じ構造がありますから全体として崩壊するのは時間の問題であるわけです。 むしろEUが分解、分裂して各地方(ギリシアなど)が独自性をもって再出発をしない限り、欧州の崩壊は避けられないと言うことになります。言ってみれば、日本において近代から江戸時代に戻すと言うことです。これがEUにおいて再分配・利害の調整機能が今後、作られなければ確実にたどるコースであるわけです。これは、ユーロの通貨の本質的要素と確実にかかわる話であることは間違いありません。 TPP TPPもまたこの欧州のお話しと同じなのです。欧州で新しい方向性が既に考えられてるのに、日本はTPPに必死になっているという、まさに時代遅れも甚だしい状況なのです。そして、TPPには国家の主権をなくす方向性はイヤと言うほどあるのに、全体としての再分配・利害調整機能は皆無です。このことは、将来、TPP内において大変な格差や様々な問題が確実に生まれることを意味しています。それは、確実に全体の崩壊を招くことを意味しています。 経済的要因だけで国家や社会がうまくいくと考えているというほとんど幻想的な思考によって、TPPへの過信が生まれているものと考えます。現政権は新自由主義ですから、政治を行っているのに政治的視点がなく、再分配や利害調整という政治の役割や国家の機能を考えられなくなっています。これは政治的に非常に大きな欠陥で、政治を行う資格は全くないレベルですが、残念ながらこれが現状の日本であると考えます。TPPは遅かれ早かれ、この問題に突き当たりますから、当初、皮算用していた幻想的な利益は上げられないという本末転倒な結果へと必然的に終わると考えます。 このことを予言しているのが、このトッド氏の欧州の今後20年についての分析であるのです。欧州の本当の問題は難民でもイスラムの問題でもなく、本当はこのことにあるのです。そして、そのことに欧州の指導者がしっかりと対処していないから欧州は将来、分散・分解すると言っているのです。 「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月9日)へつづく | |
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