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政界の転換期――今は正常性バイアスがとても危険な結果をもたらす
[日本の政治]
2024年11月6日 1時34分の記事

小沢一郎さんが、自民党の現状についての分析を、Xに以下のように投稿しています。とても正しい。


「おかしいなあ。表紙を人気者に変えて選挙をやればいつも通り大勝できるはずだったのに。表紙を間違えたかなあ。まあいいさ。来年の参院選直前にまた表紙を変えれば今度こそ大勝できるはず」。今、多くの自民党議員の頭の中はこんな感じ。自民党は懲りもせず、必ず、また同じ手を使う。どうか刮目を。

・ 『午後4:13  2024年11月3日 』



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こういうのを正常性バイアスというのでしょう。ウィキペディアには以下のようにあります。


自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい[2]、都合の悪い情報を無視したり、「前例がない」「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる[3][2][4]。「正常化の偏見」[5]、「恒常性バイアス」とも言う。

・ 『正常性バイアス 』(ウィキペディア)




これを自民党の状況に当てはめると『これまでの政治手法(アベ政治)が国民に大きな不信感を持たれていて、そのままで選挙に臨めば大きな被害・損害に直面するのに、『まったく何も変わっていないから大丈夫』とこれまでの政治手法(アベ政治)を踏襲して、大変な結果を招いてしまった』ということになります。これまでの政治手法(アベ政治)がいつまでも通用すると思っていたい『正常性バイアス=恒常性バイアス』。
問題となった早期解散も、2000万円問題も、国民がこれまでアベ政治において見てきたものだったのです。だからとても大きな拒否反応がでたわけですが、この上さらに、裏金政治家をすべて『公認』していれば、裏金に関係ない自民党政治家まで評価を大きく落としますから、自民党は壊滅的な状況に追い込まれていたことでしょう。自民党にとってアベ政治とその残党はすでに極めて大きなお荷物なのです。もちろん、日本の政治にとっても大きなお荷物です。
そして、もう一つのお荷物は、この小沢さんが指摘する、これまでアベ政治において大丈夫であった政治手法が、現在も通用するというバイアスなのです。このことがある限り、自民党は浮き上がれない。そう言う意味で、石破さんにとってこの小沢さんのアドバイスはとても的確と考えます。
ただ、すでに石破さんはこのことをとてもよくわかっている。石破さんは総選挙の翌日の10月28日に行なった記者会見で、以下のBBCの記事のように語っています。


「国民の皆様方から、極めて厳しいご審判を頂戴をいたしました。痛恨の極みであります。これを真摯に厳粛に受け止め、わが自民党は心底から反省し生まれ変わっていかなければなりません」

・ 『石破首相、続投の意向  自民党が「心底から反省し生まれ変わる」必要強調 』(2024年10月28日 BBC)




この『わが自民党は心底から反省し生まれ変わっていかなければなりません』という言葉は『生まれ変わって過去を捨て去る』ということであり、すなわち、それはアベ政治において大丈夫であった政治手法やバイアス、思い込みを捨てるということです。そして、発言は以下のように続きます。


選挙結果を大きく左右したとされている党内の政治とカネの問題については、「身内の論理や党内の理屈だと、国民の皆様から思われていることを今後は一切排除し、私自身も原点に返り、厳しい党内改革を進め、なかんずく政治とカネにつきましては、さらに抜本的な改革を行ってまいります」と述べた。



党内の政治とカネの問題とは、基本はアベ政治のことです。ですので、この言葉はまさしく『アベ政治において大丈夫であった政治手法やバイアス、思い込み』を排除、捨て去ると言うことなのです。しびれます。もう一回。本当にしびれます。やはりこの人は本当にとても頭が良い。
この石破さんの言葉を見る限り、国民の不信・不評となった早期解散も、2000万円問題も『アベ政治において大丈夫であった政治手法やバイアス、思い込み』であったと10月28日の時点ですでに石破さんは結論していたということと考えます。
石破さんの言葉を見ると、国民と政治に対する真摯な姿勢が伝わってきます。このことを続けていけば、いずれ近いうちに国民の心を必ず捉えると考えます。
石破さんの方向性は、自民党にとって利益があることですが、それ以上に日本国民と日本にとって利益があることと心から考えます。


○ 小沢さんの正常性バイアスは何か?
小沢さんは誠に的確な指摘をしていますが、小沢さんには弱点というか、別の正常性バイアスがあるのではないかと考えます。それは、政治思想をしっかりと考察していないと言うことです。言い換えると、政治思想を軽視しても大丈夫という正常性バイアスがあるのではないかと考えます。
これまで、小沢さんは2回ほど政権交代に関与してきました。私は2度ともその側にいて関わってきましたが、小沢さんの特徴はまさに『豪腕』にありました。その豪腕の本質はプラグマティズム、現実主義であり、政治思想とは対極をなすもでした。
そして、その豪腕のポイントは、政局においての数の論理で、政権交代という状況を作り出してきました。
ただ、その政権交代は長くは続かない。それは、そこに『政治思想』がないからです。ですから、政権交代という目的が達成されてしまった瞬間、その新体制は崩壊が始まっていき、その崩壊の過程はとまらず最後まで行きます。そしてそのあげく、『破壊』だけが残る。そうなるのは国民を救済し、平和をもたらす『政治思想』というベースがないからなのです。
そして、今回もこの小沢さんの正常性バイアスがある。数の論理で政権交代を果たすことが第一で、政治思想なんて無視しても大丈夫という正常性バイアスです。
しかし、この正常性バイアスからは政治の混乱しか生まれないのです。そして、それは国民の利益に反する。絶対的に反する。


○ 石破新体制の足を引っ張る『安倍チルドレン』
安倍チルドレンと言われた元衆議院議員の金子恵美が、『裏金議員、衆院選当選で『みそぎは済んだ』』とテレビで発言して批判の声が上がっていると以下のように報じられています。

・ 『裏金議員、衆院選当選で『みそぎは済んだ』 金子恵美さん発言が波紋 「国民の皆さんから批判はあるかもしれないけど」 』(2024年11月3日 中日スポーツ)

・ 『「選挙は裁判所じゃない」元女性議員 当選した裏金議員は「禊が済んだ」発言に疑問続出…一部で擁護の声も 』(2024年11月5日 女性自身)

・ 『“安倍チルドレン”金子恵美氏が追悼「まぶしい存在で、いつも1人輝いていらっしゃいました」 』(2022年7月13日 日刊スポーツ)


裏金政治家問題とは、政治家が政治資金の収支を公開することを規定する政治資金規正法に反したことを行なうことです。ただ、お金の流れを国民に公開しないことは、お金が民主主義政治を破壊する買収などに使われる可能性があると言うことですから、大変な問題なのです。脱税の可能性もある。
しかし、政治資金規正法に違反しても罰則が軽いというか、政治家に甘いので、これだけ多くの裏金政治家が出てきても、ほとんどおとがめなしということになっているわけです。
とは言え、違反した『前科』は消えないわけです。法律に違反した『立法議員』という過去が消えるわけではありません。
選挙に当選したということは、主権者・国民が代議士として信任したということです。今回の総選挙では信任された議員も多くいますが、信任されず、代議士という身分を失った政治家が非常に多かったわけです。それが、国政における国民の判断です。
ただ、どちらにしても政治資金規正法に違反した過去が消えるわけではありません。いつまでもつきまとうことなのです。
であるのに、この金子の発言である『裏金議員、衆院選当選で『みそぎは済んだ』』では、そういう過去が消えて、あたかもまた同じことが繰り返されることが許されたということに聞こえてしまいます。
ですから、この金子の発言に対して、上記の記事では以下のような批判の声が出ています。


しかし、金子さんの発言にX(旧ツイッター)では「ちっとも済んでないよ。勝手に済んだことに無理矢理してるだけ」「組織票で当選した議員が『みそぎは済んだ』とホンマに思ってるならコメンテーター辞めたら?」「国民の印象と真逆の、不正議員の都合のいい解釈を正として解説」「そもそも逮捕もされずに、堂々と選挙出来るのがおかしかったんだけどね〜!」「簡単に復党させたら夏の参院選またそこ突かれて惨敗するだけやん」など、批判的な反応が目立っている。




至極当然な反応でしょう。
これでは、自民党は『政治とカネの問題』について反省していない、すなわちまた『アベ政治』が相変わらず大きな存在としてあると国民の眼にうつるわけです。
この金子の発言の本質は、上述したアベ政治において大丈夫であった政治手法をやれば大丈夫というバイアス・思い込みなのです。アベ政治の時代は、このように強気に発言しても大丈夫だったのです。しかし、今はそうではない。少なくとも先の総選挙ではそういう結果となった。
であるのに、この金子の発言では、上記のように決意をした石破さんの足を引っ張ることになるのです。無論、金子の本意はかなりの部分、石破さんの足を引っ張ることが目的のようにも考えます。
まあ、いずれにせよ、金子という人物は、政治家としては本当にレベルが低い。こんなのでよく国会議員になれたのものです。国民のためには何一つ役に立たないと考えます。そういう国民のためというベースがない。
石破さんにとって、また自民党にとっては、敵は外ではなく、過去の栄光を引きずり、そこから脱却できない内部の人々であることは明らかなようです。

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◎ 拙著です

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内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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