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上皇陛下に反旗を翻した高市早苗
[日本の政治]
2021年8月18日 23時53分の記事

上皇陛下は、2015(平成27年)年1月、天皇陛下として年頭のご感想を以下のようにおっしゃられています。


本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。

「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」(2015年 宮内庁)


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拙著『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015年 ビジネス社 161頁)でこのお言葉を取り上げ、このお言葉は非常に重く、あまりにも深いと書きました。
この陛下のおっしゃったことは、先の大戦を『15年戦争』として捉えるものです。一般的な認識では、先の大戦は日米戦争(太平洋戦争)だけと考えますが、そうではなく満洲事変から日中戦争、そして日米開戦にいたったというのが、この15年戦争の意味、それが実際、正しい歴史の流れなのです。
この15年戦争の成り行きは、満洲事変、日中戦争と中国への侵略に日本が拘泥し、にっちもさっちもいかなくなり、追い詰められて日米開戦となり、完膚なきまでに叩かれ、敗北したということです。
だから、先の大戦は米英ソの連合国に中国もちゃんと入っているわけです。つまり、先の大戦では中国共産党の中国ではないにしても、日本は中国にも負けているのです。むしろ、満洲事変から15年戦争が始まっているのですから、この戦争で日本が本当に負けた相手は中国なのです。これが歴史の厳然たる事実なのです。
これが15年戦争と言う意味です。この15年戦争は、アジア・太平洋戦争と言ったりもしますが、鶴見俊輔氏(後藤新平の孫)が言い始め、その後、愛知大学名誉教授の江口圭一氏などが広めたもので、大変に素晴らしい史観です。
この15年戦争の時代に、本ブログ「8月15日だからこその苦言 その2」(2021年8月16日)で言及した狂気の時代の政治・社会状況があるのです。
上皇陛下は、満洲事変からはじまった戦争は多くの方々が亡くなった戦争で、「各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした」とおっしゃっているのです。だからこそ、「この戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なこと」とおっしゃっているのです。しっかりと歴史を学び、同じことをしてはならないとおっしゃっているのです。
本当に素晴らしいお言葉です。このお言葉を拝見する度に涙が出る想いが致します。

◎ 上皇陛下に反旗を翻した高市早苗
しかし、以下の記事では高市早苗が、満州事変以降の戦争は自存自衛のセキュリティーのための戦争であったとその戦争を肯定しているわけです。しかし、歴史の実相は、日本が中国への侵略を自存自衛のためと主張して国際的に孤立して、最終的に日米開戦となり、破滅したのです。
それに、結果としてみれば、そもそも自存自衛になっていません。まさに愚かしい話しですが、この高市早苗の言っていることは、まさに上記の上皇陛下のおっしゃったお言葉とはまったく正反対のものであるのです。高市早苗が自存自衛といって肯定するのは、また同じことをすると言うことです。


「『満州事変以降の戦争は、日本にとって自存自衛の戦争だったと思うか?』との田原さんの問いに対して『セキュリティーの為の戦争だったと思う』と私(高市氏)が答えた途端、田原さんがまくしたて始めました。『下品で無知な人にバッジつけて靖国のことを語ってもらいたくない』『こういう幼稚な人が下品な言葉で靖国、靖国って言う』『靖国神社に行ったら、下品な人間の、憎たらしい顔をしたのが集まっている』」(2002年8月27日)

「【有本香の以読制毒】“確かな言葉”“立法の実務能力”“中国と戦う意思”高市早苗さんを総理に推す 『永田町の論理』変えるうねりあるか」(2021年8月13日 ZAKZAK)


田原総一朗氏の『下品で無知な人にバッジつけて靖国のことを語ってもらいたくない』という言葉はある意味、正鵠を得るものです。

◎ しかし、やはり頭がおかしい
先の大戦は自存自衛ではありません。どうしてそう言いきれるのか? それは日本が侵略したからという答えは事実で正しいものです。しかし、実際、考えてみてください。1945年8月15日、今から76年前の夏、日本はそれまで領土としていた朝鮮半島、南樺太、千島列島、関東州(租借地)、台湾、沖縄・小笠原諸島(ともに後に返還)などをすべてを失ったわけです。
そして、本土は焼け野原となって、広島・長崎には原爆を落とされ、310万人以上が犠牲となったのです。そのどこが自存自衛なのか? 破滅しているではないか。
当時の日本が侵略を正当化するために自存自衛ということを言ったことは、間違っていますが、その行為はあり得ることと理解できます。なぜなら、その行為によって上記のような結果が、その時点ではまだ出ていないからです。
しかし、先の大戦でものすごい犠牲が生まれ、領土を失ったという結果を知っているのに、それが自存自衛のため、セキュリティーのためというのは、明らかに頭がおかしいでしょう。事実は、自存自衛と言って自己正当化して侵略を行って、破滅したということでしかないのです。
この歴史の事実をしっかりと受け止めて、これからの日本を考えなくてはならないとおっしゃっているのが、上記の上皇陛下のお言葉なのです。まさに大変なリアリズムです。本当にこうでなくてはなりません。
歴史のIfですが、満洲事変を起こさず、自存自衛の戦争をしなければ1945年8月15日時点での状態は、はるかにマシだったでしょう。そこに歴史の教訓があるのです。高市早苗はちょっとレベルが低すぎます。

◎ あてつけ
この高市早苗の文は2002年のものです。それを、この8月13日の記事を書いた有本氏が、記事で紹介しているわけです。それも高市早苗を総理に推すという提灯記事としてです。記事としてもレベルがそもそも低い。
記事をみると、有本氏は北海道から帰京して高市早苗と会って、この記事を書いたことがわかります。当然、この記事を書いた有本氏の動機は、高市早苗の総裁選出馬ということで、推挙するという提灯記事ということです。
したがって、上記の高市早苗の2002年の言葉がこの記事で出てくるのは、有本氏と高市早苗がじっくり話し合った上で意識的に出したものと考えます。明らかに高市早苗が出せと言って出していると考えますし、確信犯と考えます。何の確信犯かと言えば、それは上記の上皇陛下の2015年のお言葉に対する反旗ということです。
 
◎ 右翼の正体
本ブログ「8月15日だからこその苦言 その2」(2021年8月16日)で触れた宮城事件。1945年8月14日、昭和天皇の終戦の御聖断が下ったとき、その終戦の御聖断は間違っている、納得できないと宮城(皇居)を占拠して、クーデターを起こそうとしたのが宮城事件ですが、それこそが右翼の正体なのです。この宮城事件を主題の一つとしたのが映画『日本のいちばん長い日』(1967年版の方が圧倒的に良いです)です。
そして、その宮城事件というクーデターの首班に松岡洋右を担ぐ動きがあったのです。松岡洋右はアベ晋三氏の親戚。アベ晋三氏は言わずと知れた右翼のドンです。要するにいまだにこの右翼の系譜は厳然と続いているのです。だから、上記の高市早苗の発言と記事になるのです。とてもわかりやすい。右翼とはそういうものなのです。
そして、そういう右翼だからこそ、本ブログ「改元の必要性 大和言葉に『ラ行』から始まる言葉はない」(2021年8月12日)で書いたように、『令和』なんていうとんでもない元号をつくり出すのです。
クーデター計画の首班としての松岡洋右については、以下のように書かれています。


8月12日の夕方、阿南は久々に三鷹市下連雀にあった私邸に帰った。阿南は終戦となれば自決しようと決意しており、家族に別れを告げるための帰宅であったが、家族団欒というわけにもいかず、阿南が帰宅して早々に元外相の松岡洋右が訪問してきた。松岡は陸軍青年将校たちから要請され、徹底抗戦のための自分を首班とする軍事政権樹立の提案をしたが、阿南は拒否している。

(ウィキペディアより)

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○ 『餓死した英霊たち』

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先の大戦も、現在も日本国民を大切にしない政治。この2冊がそのことを雄弁に物語ります。

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◎ 拙著です

○ 『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』



内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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