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国民に平気で嘘をつく政治家?
[日本の政治]
2019年7月29日 0時10分の記事

国民民主党代表の玉木氏が、改憲の議論を進め、党で意見集約し、自民党と党首会談をして協議したいとの考えを示したと報じられ、このことが焦点となっています。同氏は7月25日のインターネット番組で「私、生まれ変わりました」と述べ、この報道となるわけです。
しかし、この問題には、玉木氏はそもそも生まれ変わったのかというポイントがあり、このことは、同氏の国民への姿勢において重大な問題点があることを示しています。国民民主党は参院選中に自民党と選挙共闘をしているのです。

「玉木氏『生まれ変わった、改憲議論進める』 一転火消し」(2019年7月26日 朝日新聞)

「国民 玉木代表 憲法改正めぐり首相と党首会談で協議へ」(2019年7月26日 NHK)

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玉木氏がこのような考えを示したのは7月25日、それは野党共闘をした参院選直後であるので、同氏は豹変したと受け取られているわけです。上記朝日新聞の記事でも、この玉木氏の方向性について同党幹部が「そんな説明は受けていない」と同氏に問いただしたとあります。これは明らかに玉木氏の発言が党内において豹変と受け止められているということですし、一般的にもそのように受け止める人は多数いるでしょう。
同党が野党共闘を行った参院選直後ですから、報じられた玉木氏の考えは明らかにその共闘の逆を行くものです。そして、玉木氏は豹変したのかといえば、一般的には間違いなく豹変しています。その上さらに、それを「生まれ変わった」ためと修飾して肯定をしているということになります。実際、これだけでも、国民をあざむいていることになりますから、政治家として大問題なのですが、さらに選挙中の報道を観ると、この玉木氏の言葉の背景には確信犯的な国民への裏切りがあることがわかります。

実は国民民主党は自民党との選挙共闘をしていた
7月11日の時事通信は、先の参院選・静岡選挙区の情勢について、「立憲が国民に『刺客』=官邸参戦で対立激化−静岡【注目区を行く】」と報じています。この選挙区では本ブログで取り上げた徳川家広氏、自民党の牧野京夫氏、そして国民民主党の榛葉(しんば)賀津也氏が今回の参院選での主要候補者で、2議席を争っての闘いでした。
静岡は元々保守が強いところで、今選挙前には自民党が牧野氏の他にもう一名候補者を立てることを模索する動きがありました。しかし、その後結局、その動きはなくなり、これまで通り自民党の牧野氏と国民民主党の榛葉氏で2議席を分け合うという構図で動く状況となり、これが今回の選挙での構図と考えられていました。このこれまでの構図を時事通信の記事では「ぬるま湯」との評価で載っていますが、もちろんそれは榛葉氏にとっての“ぬるま湯”であり、この表現は同氏と自民党との関係を明確に表しています。そもそも榛葉氏は対自民党の野党共闘とは真逆の存在でずっとあったわけです。
しかし、そこに突如、徳川氏の立候補表明があり、このぬるま湯の構図に異変が生じ、榛葉氏は苦境に追い込まれたわけです。徳川氏の主張は、強烈な護憲、反原発、経済政策は反アベノミクス、反新自由主義で、とても良いものでした。
このような状況を念頭におくと、この時事通信の以下の記述がよくわかります。因みに榛葉氏の政策は徳川氏とは真逆と考えます。表向きはそうは言っていませんが。


◇「ほぼ自民」
 苦境に陥った榛葉に思わぬ強力な援軍が現れた。自民県連関係者は「官邸が榛葉にてこ入れしている」と声をひそめる。複数の関係者によると、榛葉と親しかった官房長官菅義偉が企業や公明の支持母体・創価学会に榛葉支持を働き掛けたという。徳川陣営も察知しており、関係者は「山が動いた。公明が怪しい動きをしている」と警戒を強めている。
 憲法改正に意欲を燃やす安倍は、参院選後も自公や日本維新の会などの改憲勢力で発議に必要な3分の2を維持することが難しいと認めている。このため、新たな改憲勢力を求めており、与野党から異口同音に「ほぼ自民」と呼ばれる榛葉は格好のターゲットと映っているとみられる。
「立憲が国民に『刺客』=官邸参戦で対立激化−静岡【注目区を行く】」(2019年7月11日 時事通信)


与野党から異口同音にほぼ自民と言われているのですから、榛葉氏はそもそも自民党から出馬すべき人物であるのは、この記事を見てよくわかります。そして、榛葉氏の存在そのものを考えれば、徳川氏が時事通信の言うような野党共闘を壊すような立憲民主党からの刺客ではまったくなく、むしろ榛葉氏の存在そのものが野党共闘を否定するものなのです。
そして、今回の参院選において、このように自民党が榛葉氏を支援する動きが厳然とあったわけです。このことを以下の地元紙・静岡新聞はさらに詳しく報じています。

「参院選静岡選挙区 野党激突に『不思議』な動き、官邸介入か」(2019年7月13日 静岡新聞)

記事ではスズキ自動車の鈴木会長がこれまで自民党支持であったのを変えて、榛葉氏支持を明言し、関係企業を含めて榛葉氏を支援すると報じています。また、大手企業や団体の一部が榛葉氏支持に回り、徳川氏が脱原発を主張しているので、それを阻止したい思惑が透けると報じています。
今回の選挙結果から観れば、スズキ自動車などが護憲の徳川氏を落選させたのは明らかと記事から判断できます。それにしても、静岡ではいまだに古い田舎選挙をしいているのかと思いますし、今回、そもそも静岡の人々は自分の頭で考えて投票をしているのかとも記事を見て思います。東京では考えられない状況です。また、この記事を見ると榛葉氏が原発推進であることは論理的に必然の結論となります。
いずれにせよ、このような選挙情勢の中で、国民民主党企業団体委員長の桜井充参院議員が「榛葉氏が厳しいから、自民党の静岡県選出の元大臣に『票を回して』とお願いした」(同上)ことを明らかにしたと静岡新聞は報じているのです。企業団体委員長というのは、選挙で票をまとめる存在ですから、明らかに国民民主党が自民党に選挙協力を要請していますし、上記の時事通信では官邸が榛葉氏支援をしていることが書かれているわけです。
つまり、この時事通信と静岡新聞の二つの記事をあわせて観れば、国民民主党から自民党に選挙協力をお願いし、一方、自民党・官邸も榛葉氏への選挙協力で動いているわけで、完全に国民民主党と自民党の選挙共闘が成立しているわけです。そして、その対抗が強烈な護憲、反原発、反アベノミクス、反新自由主義を主張する立憲民主党の徳川氏であるわけです。徳川氏の主張は、対自民の野党としては至極まっとうなものです。
一方、榛葉氏は上記の時事通信の記事で「ほぼ自民」と呼ばれ、自民党と選挙共闘をしているのですから、そもそも同氏が記事上で改憲における取り込むべきターゲットと言われるているのは正確ではないでしょう。正確な表現は、ターゲットではなく、自民党のために動く別働隊と考えるべき存在であるのは明白と考えます。そうでなければ、このような共闘は成立しませんが、このような動きは国民をあざむくもの以外の何ものでもありません。
しかし、榛葉陣営は自民党の選挙協力の動きを「いい迷惑。選挙妨害だ」(同上)と不快感を示しています。ほぼ自民と言われる榛葉氏を考えれば、空々しいとしか言えないでしょう。実際、同氏は自民党の選挙協力がなければ、今回、当選には至っていないでしょうし、また上述のように国民民主党幹部の桜井氏が自民党に選挙協力を要請し、榛葉氏も同党の一回生ではなく、参院幹事長で幹部ですから、党ぐるみで自民党と選挙共闘をしていたのは明らかなのです。それでいて、「いい迷惑」とは、空々しいとしか言い様がありません。
国民民主党は野党で対与党の野党共闘を言っていますから、その理由で多くの有権者から票を集めているわけです。そのような票が静岡選挙区では榛葉氏にも入り、票を積み上げているわけです。しかし、その実は自民党と共闘をしていて、結果、当選をしているのですから、それは有権者をあざむくものというのが正確な評価でしょう。
このような国民民主党の動きがすでに選挙中からあったわけです。
因みに、上記静岡新聞の記事で、この静岡選挙区の情勢について自民党の石破茂氏は「野党候補を支持するよう働き掛けたとする首相官邸の動きについて『私自身は良しとしない』と述べ、官邸を暗に批判した」(同上)とあります。良いことを言っています。これが国民に判断を仰ぐ政治家の本当の姿勢です。
「国民に平気で嘘をつく政治家?」(2019年7月29日)へ続く。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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