求められるTPPの情報公開性 | |
[日本の政治] | |
2015年12月13日 23時55分の記事 | |
約5年前にTPPということが言われて、今年の10月5日に大筋合意がなされたとアナウンスされました。TPP交渉は漏れ伝わってくる情報以外は全くわからないという希に見る秘密主義でした。その交渉に政府が参加するという号令で、国民は政府に全権委任をする形になりましたが、国民は大筋合意がアナウンスされた時まで全くその内容を知らされていません。日本のTPP交渉参加が焦点となっているとき「バスに乗り遅れるな」という戦前、日本で言われたフレーズが盛んに言われましたが、そのバスがどんなバスで、どこに行くかも国民は知らされないまま、そのバスに乗り、大筋合意まできました。戦前、このフレーズが使われたとき、乗り遅れずにちゃんとバスに乗って最終的に日本は滅びました。
今年の11月5日、この大筋合意を受けて政府により暫定案分等が公表されました(「TPP協定の暫定案文等」)。この文書は目次を含めて97ページ、内容も「……等について規定」というように、条文が書かれているわけではありません。5年間も話し合いをしてきた割にはずいぶんと少ないなと思っていたら、実は本当は2000ページ以上あると報道されています。 「許していいのか TPP合意文書「日本語訳」がない驚愕」(2015年12月3日 日刊ゲンダイ) 実際、この2000ページに及ぶ文書は米国とニュージーランドでそれぞれの政府によって両国国民に向けに公表されています。もちろん、日本人も見ることはできますが、日本政府によって日本国民向けに公表はされているわけではありません。 既にここでTPP内で格差ができています。このような格差は日本国民として容認できるものではありません。TPPに関して日本政府が関わる場合、このような格差が生じないように国会で議論すべきでしょう。他国の横暴に格差是正を言うならわかりますが、自国の政府についてこのようなことを書かなくてはならないのは本当に情けないものです。このような格差を生じさせる政府に愛国心のかけらも感じられません。それとも詳細な条文を日本人には見せては駄目だとどこからに言われているのでしょうか。それなら、そのようなTPPからは即刻、手を引くべきです。 当然、この2000ページに及ぶTPPの文書は日本語ではありません。TPPは国論を二分するようなものですから、当然、TPP署名前に日本語で文書が公開され、国民によって広く、そして深く議論されるべきです。これまで、このTPPはあまりの秘密主義のため、国内では何も実質議論されていないまま、大筋合意まで来ているのですから、TPP合意の署名が行われる遙か前に、全文を日本語で公開することは民主主義の国であれば必須の政治過程です。米国とニュージーランドは少なくともことのことはしています。 12月3日、衆議院の内閣委員会農林水産委員会連合審査会で、民主党の福島伸享衆議院議員が仮訳でも良いから政府はこの2000ページにも及ぶ文書を日本語に訳し、国民に公開すべきだと、TPP交渉を担当した甘利大臣に問いただしています。当然のことです。 甘利大臣はのらりくらりと英語は世界共通語であり問題ないという認識を示し、TPPの公用語は英語、フランス語、スペイン語だが英語が優先するので、問題ないと述べています。これは実は答えになっていないのです。国民に広く内容を知らせ議論をし、吟味するという手続きは一切、語られていない。そして日本の公用語は英語ではないのです。民主主義国家の大臣の発言としては非常に大きな問題です。甘利大臣は訳文を署名時に出すようなことを述べていますが、それではあまりにも遅く意味がありません。まさにこのTPPの本質を自ら語ったに等しい答弁でしょう。これは政治的には極めて問題ある発言であると考えます。 TPPは太平洋新時代、アジアの成長を取り込むと言っておきながら、アジアの言語は一つも公用語になっていないのは大きな矛盾でしょう。また、福島議員も指摘していますが、日米でTPP加盟国総GDPの大半を占めています。なぜ、このようなアドバンテージを持っているのに、日本語を公用語の最後にでも入れることができなかったのでしょうか。最終的に英語での解釈が優先するとしても、日本の立場なら日本語を公用語とすることは実現すべきであったでしょうし、実現できれば様々な恩恵があったものと考えます。公用語になれば様々な面で変化が生じますが、それをみすみす逃したと考えます。これで国家百年の大計といっているのですからおめでたいとしか言い様がありません。 現政権の外交は、日本の持つアドバンテージを生かせず、お金で解決していることが多いと考えますが、その実相は交渉力のなさです。まさにこの公用語の件はこのことを示していると考えます。 それとも、現政権は日本語は国際的に通用しない言語と考えているのでしょうか。クールジャパン、クールジャパンと言っている割にこんな考えがあるとしたら、とんでもないことです。もしくは、クールジャパンとは所詮、その程度のことなのでしょうか。 TPP交渉を担当してきた甘利大臣は一体何を交渉してきたのでしょうか。非常に疑問に思います。 ことほど左様に、既に日本国民がTPPに関わる上で、米国国民などと平等に取り組むことができない格差が生じ、障壁ができています。この格差は確実に取り除くべきです。そうでなければこのTPPで日本人が大きな不利益を被ることは明らかです。 また、国民に向けて情報公開はきっちりとすべきです。そうでなければ民主的手続きは崩壊します。TPPとは民主政治をないがしろにするものなのでしょうか。現状、政治的にはそのようにしか見えません。 福島議員と甘利大臣の答弁は以下のリンクにあります。 (第189回国会 内閣委員会農林水産委員会連合審査会 2015年12月3日) 劣悪な情報環境 左様にTPPに関して劣悪な情報環境に国民は置かれていますが、ほとんどの国会議員も状況は同じです。政府が公開すべき情報を他国から、それも英語で入手しているというのが現状なのです。 このような状況で、10月5日に大筋合意した後、11月5日前に各マスメディアでTPPに関する世論調査が行われました。しかし、国民にほとんど何も知らされていないものに関して世論調査を行うとは一体、どういうことなのでしょうか。これは明らかにおかしなことです。 そして、その結果は賛成が過半数以上と出ていますが、どうして知らないものに賛成できるのでしょうか。明らかにそこに世論誘導を見いだします。 TPPは膨大な項目があり、そのことによって直接被害を被る層がいると言われているにも関わらず、その内容が明らかにされていません。それなら、そのようなものにはまず「NO」というのは当然のことでしょう。自分がその被害を受ける立場になるかもしれず、また全体として国家、社会のバランスが崩れる恐れがあります。まず、詳細を知るまでは「YES」と言わないのが、一般社会の常識ではないかと思います。民主主義制度では過度の委任は自らの首を間違いなく締めます。 このような状況で経団連がTPP早期発行を働きかけていますが、経団連と国民の利益や政治の健全性は関係がないようです。同様にこのような状況で政府はTPP大綱なるものを出していますが、TPPの内容が国民にしっかりと知らされる前にこのようなことが生じるのは明らかにおかしなことです。 大筋合意で何を合意したのか 10月5日、TPPの大筋合意が成立したわけですが、この大筋合意とは何なのでしょうか。合意したのであれば、間違いなく何かの書類に甘利大臣はサインしているはずです。そのことは一切、公開されていません。このことを公開するのは義務です。これは国会で追求すべきでしょう。先日、臨時国会招集を憲法の規定に則り野党が要請し、その要請が拒否され憲法違反の状態となっていますが、この大筋合意の中身に関してはこの臨時国会で問われるべきことでした。 もしかしたら、TPPの内容が国民に公開される前に、どんなことがあっても確実にTPPに合意しますということに同意したのが、この大筋合意の中身ではないかと考えます。だから、日本政府は内容を公表できないのではないかと考えます。TPPの中身に大きな問題があり、それを公表して国民の反対で頓挫させることができないということではないかと考えます。外交ではよくあることですが、許されることではありません。 恐らく、TPPはこの2000ページの文書以外に様々な取り決めがあると考えます。それらはすべて隠されているはずです。今年4月、安倍首相の訪米時に安保関連法案成立を米国で公約し、その後、あれだけの強引な手法で同法案を可決させていますから、今回のTPPにおける大筋合意も同様な背景・プロセスがあるものと考えます。政治において日本が中心ではなく、元は同じなのです。 「安保法案「成立すれば国民は忘れる」 強行採決の背景は」(2015年7月16日 朝日新聞) TPPのこの秘密主義・情報の非公開性がクリアされない限り、これ以上前へ進むべきではないでしょう。何のメリットもありませんし、このままだと日本人は今後、数十年に渡ってこのポイントに確実に苦しめられるはずです。それは、TPPが日本国民の利益のためになされたものではないからです。そのことは、政権与党の態度を見れば本当に一目瞭然でしょう。 | |
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