このブログのトップへ こんにちは、ゲストさん  - ログイン  - ヘルプ  - このブログを閉じる 
新聞を軽減税率の対象――新聞は二度と財政健全化を言えない
[日本の政治]
2015年12月15日 23時57分の記事

連日、報道されている消費税の軽減税率について、連立与党である自民・公明の税制調査会幹部が会談し、国民の知る権利を確保する必要があるとして、「新聞」を軽減税率の対象品目に含める方針で一致したと伝えられています。

「自公 軽減税率の対象品目に「新聞」加える方針」(2015年12月14日 NHK)

【PR】電話相談システム開発ならイーステム


今年、あれだけ新聞などマス・メディアへの圧力発言が相次いだ連立与党が、今さら「知る権利」を振りかざすというのも非常に白々しい感じがします。この軽減税率という「特別扱い」がなされる政策では、その適用についての決断は「権力の行使」になりますから、これはマス・メディアへの別の形での権力からの圧力という側面は否定できなくなります。
消費税は消費に負荷をかけるという消費者だけの問題ではありません。消費に負荷がかかることによって、消費が落ち込み、それは生産者の収入を圧迫しますから、消費税は生産者の切実な問題でもあるのです。だから、消費税が消費を落ち込ませ、生産者の収入が減るから不景気になるのです。そして、それがスパイラルになっていきます。それでは、税収も必然的に落ち込みます。
政府はこの負の連鎖を「財政健全化」のかけ声の下、疑問もなく進めようとしているわけですが、生産者にとって死活問題の税率の問題で、新聞が特別扱いされるのであれば、新聞は国民に財政健全化が大事とはいくら何でも言えないでしょう。自分だけ特別扱いされて、他の生産者は苦しんでくださいなどと言う言論はそもそも権力の側で論調を張っていることであり、それでは国民の「知る権利」など最初から無いも同然です。
この新聞への軽減税率適用の話が、一体、どこから発生したのかは大きな問題です。政権与党からでしょうか。それとも新聞自体からでしょうか。後者であれば、なおさら「財政健全化」などという論説を張るなどおこがましいだけでしょう。新聞各紙はこの軽減税率についていかに考えるのでしょうか。
日本の生産者の誰もが国にとって必要な存在なのです。一億総活躍なのではないのでしょうか?

社会の木鐸
「新聞は社会の木鐸であれ」という言葉があります。世に警鐘をならし教え導く存在ということですが、そのような情報を新聞は世に出しているかと言うことは、現在、問われるべき日本におけるポイントでしょう。
新聞への軽減税率適用が、国民の「知る権利」を確保するためと、知る権利の一番の対象者・当事者である政権与党という権力者が言っているわけですが、それなら情報公開ということを政権与党は率先して疑義がでることがないレベルで、しっかりとしなくてはなりません。
また、この軽減税率の話では、新聞が国民の知る権利を実現させる媒体ということになっていますが、書籍や雑誌、そしてNHKの受信料はどうなのでしょうか。これらの情報は知るに値しないものと言うことなのでしょうか。これらへの軽減税率のありなしを権力者側で決めるというのは、そもそも国民の知る権利を阻害しているのではないでしょうか。
また、ケーブルテレビやCS放送での海外のニュース番組は有用な情報源ですし、ネットでも同じでしょう。そういうものはなぜ対象にならないのでしょうか。知る権利というなら当然でしょう。

参議院選挙(もしくはダブル選挙)
日本のメディアは新聞と地上波のテレビが、世論形成において影響力が圧倒的です。そして、この日本のメディア構成は、新聞社を中心に基本的に構成されています。新聞だけの軽減税率というのは、まさに日本のマスメディアの中心、つまり世論形成者への優遇措置であるわけです。
来年7月に参議院選挙(もしくはダブル選挙)があるこの時期に、政権与党という権力者からこのような優遇措置が言われるのは、明らかに政権のメディア対策と考えます。これは国民の知る権利を阻害するものと考えます。
新聞各社は、このような一種の政権とのバーターと言えるような話にどう対処するのでしょうか。バーターと見られないためには、選挙に向けて政権への批判事項に関して、当然、手を緩めるべきではないでしょう。むしろ、これまで以上に強める必要が出てきます。
そのような政権批判はできないから、選挙が終わってから軽減税率適用なんていうトリックや、優遇措置を得たので政権への批判がぱったりやんだなどということになれば、それこそ批判の対象に政権も、そして新聞やテレビもなるでしょう。そうなれば、一層、新聞の発行部数は減るでしょうし、視聴率も落ちるでしょう。世の中の人は、新聞を読むことが目的ではなく、新聞に有用な質の良い情報が載っているから買うのです。テレビもまた同じです。そのような情報がなくなれば、間違いなく読む人や見る人は少なくなります。このような本質は見誤るべきではないでしょう。

消費税は見直すべき
消費税については上述したように経済的に負の構造があり、本ブログ「消費税について考える」(2015年11月22日)などでも消費税の問題性について言及してきました。ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ポール・クルーグマンは、消費税を10%にすれば日本経済は完全に終わると昨年、述べています。当然でしょう。日本経済が完全に終われば財政再建もなにもあったものではないのですが、そういう全体的な視点が今の日本の政治にはありません。これは本当に亡国への道なのですが、大変に危険な状況と言えます。

「本誌独占インタビュー ノーベル賞経済学者クルーグマン『日本経済は消費税10%で完全に終わります』」(2015年9月16日 現代ビジネス)

クルーグマンは消費税を5%に戻すべきと言っていますが、3%にすべきだと私は考えます。上記の本ブログで言及したエコノミストの菊池英博先生が言うように消費税を無くしても良いでしょう。その方向性しか輸出依存度が低く内需型の日本の経済の復活はありませんし、その方向をとれば大きな成長を経験できるでしょう。鶏か、それとも卵か、どちらが大切かをよく考える必要があります。卵を生む鶏が衰弱してしまえば何も意味がないように、政府の税収を支える日本経済が衰弱すれば政府の機能もまた低下するのです。何が本質で、何が重要かをしっかりと考えないと、国は必然的に落ち込んでいきます。クルーグマンが言うように日本経済が完全に終わるまで、2017年4月と既にカウントダウンに入っているのです。軽減税率などと些末な議論をしている状況ではないのです。危機感があまりにもなさ過ぎでしょう。

このブログへのチップ   0pts.   [チップとは]

[このブログのチップを見る]
[チップをあげる]

このブログの評価
★★★★★

[このブログの評価を見る]
[この記事を評価する]

◆この記事へのコメント
コメントはありません。

◆コメントを書く

お名前:

URL:

メールアドレス:(このアドレスが直接知られることはありません)

コメント:




◆この記事へのトラックバック
トラックバックはありません。
トラックバックURL
https://kuruten.jp/blog/tb/katagiri/342973
くる天

◎ 必読の書

○ 『餓死した英霊たち』

○ 『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』

先の大戦も、現在も日本国民を大切にしない政治。この2冊がそのことを雄弁に物語ります。

○ 『CIA日本が次の標的だ―ポスト冷戦の経済諜報戦』


◎ 拙著です

○ 『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』



内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
本ブログについて
日本と世界の政治経済の本質を読み解く-ブロくる
片桐勇治(政治評論家) さん
日本と世界の政治経済の本質を読み解く
地域:東京都
性別:男性
ジャンル:ニュース
ブログの説明:
世界は大きく変わり、新しい時代が胎動しています。しっかりと把握していますか? この時代を読み解くには歴史を見つめ、構造を把握し、パワーの心奥を見つめ哲学を持たなくてはなりません。一緒にこの新しい時代を見つめて行きましょう! 最低週1回の更新です。
プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
ブログ内検索

カレンダー
<<2015年12月>>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
カテゴリ
全て (1460)
日本の政治 (1371)
ザ・フナイ (15)
中東情勢 (4)
アジア・太平洋情勢 (2)
戦争の構造 (3)
世界の読み方 (15)
書評 (1)
勉強会・講演会のお知らせ (3)
本ブログの重要記事

注目です!

「韓国のリベラルはとてもレベルが高い」(21年2月3日)←New!
「やはりイギリスが言い始めた」(21年2月4日)←New!
「東京オリンピックは2022年に開催すべき」(20年12月31日)←New!

値千金のブログ記事:岡田晴恵特任教授、国のコロナ対応に激怒!番組出演中に声を震わす 「このままだと3月4月にピークがきます」 (20年2月25日)
○本ブログ「この緊急時にこの政権の遅さは致命的? 」(20年4月16日)
○本ブログ「アメリカ政府が認定した当然のこと」(20年4月4日)
○本ブログ「朗報と考えられることと安倍政権の犯罪的な無能と愚鈍?」(20年4月1日)
○本ブログ「朗報と考えられることと安倍政権の犯罪的な無能と愚鈍?」(20年4月4日)
「ノーベル賞受賞者が新型コロナウイルスの早期回復(終息)を予測した理由:「我々は良くなっていく」(訳文)」(20年3月23日 ロサンゼルス・タイムズ)
最近の記事
11/28 22:44 兵庫県知事選 選挙期間中に『個人のボランティア』と確認しているのだろうか?
11/27 13:30 候補者と選挙コンサル 踏まえておくべき重要な1つの視点
11/27 10:02 兵庫県知事選 口約束ということが意味することは何か?
11/26 22:47 兵庫県知事としての斉藤氏の本質は何か?
11/25 21:33 斉藤・PR会社問題 これはちょっと安すぎるという感想
11/25 15:59 ゴゴスマでの明らかにおかしい議論
11/18 23:50 今回の兵庫県知事選の最大にしてほぼ唯一の争点は『マスコミ報道の信頼性』
11/13 08:50 石破さんの素晴らしい言葉
11/08 11:07 FRBの利下げをいかに考えるか
11/08 06:22 トランプ時代の日本には石破さん以外の選択肢はない――むしろ天の差配
携帯用アドレスQRコード
QRコード対応の携帯で、このコードを読み取ってください。


Copyright (c) 2006 KURUTEN All right reserved