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デタラメをテレビで言える不思議
[日本の政治]
2016年1月16日 23時49分の記事

1月14日のTBSのニュース番組・『ニュース23』で、日経平均株価の下落についての解説が、原油が安くなっているためというもので、さらにその原油安は「中東が混乱」しているからと言うものでした。前日の同番組の「論評」については評価しました(「一夜にして中国経済復活!?」2016年1月13日)。しかし、14日はあまりにもひどい解説なのでさすがに驚きました。このようなことを平気で言えるのは単に知らない故なのかもしれませんが、もしかしたら何らかの意図があるのかもしれません。

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中東情勢が混乱しているから原油安と言うことはまずないでしょう。通常、中東情勢が混乱するから原油価格が上昇するのであり、それは供給が不安定化するからです。だから、昨年の安保法制についての議論で、当初、イラン問題などで中東で問題が生じたことを「想定」して、自衛隊の派遣などが言われました。それは中東で混乱が起きたら日本へのエネルギー供給が滞り、大きな問題となるからという理由が成立するからです。これが実相であり、中東情勢が混乱するから原油が値上がりするのであり、TBSの解説は明らかにおかしなものです。
しかし、イランについては外交的に和平が成立して、平穏となり、同時にイランが原油供給を始めることからずっと原油安の傾向は続いています。つまり、中東が「平穏・安定」しているから原油安になっているのです。これは不思議でも何でもなく当然に生じていることなのです。

原油価格上昇と中東の混乱を政府は是認?
このイラン情勢の変化は、昨年、政府の安保法制における答弁にも変化をもたらしました。このイランについて外交的な和平成立で、政府は安保法制論議において「ペルシャ湾」ということを前面に出せなくなりました。
そもそも政府は、まず外交的に平和を構築することを本当は訴え、また動かなくてはならなかったのですが、このように前面に出せなくなったのは、実際には安保法制における理由付けとして「ペルシャ湾」が使われていたということなのです。外交力がない政府の実態がこれだけでも明らかですが、外交力無くしての安保論議など、ただただ危ないだけでしょう。
実際には、丁度1年前の安倍政権の中東外交を見れば、平和とは反対の方向に舵を切っていたというのが私の見解です。したがって、その当時の外交はこれまで何の実効性も示していません。そして、だからこそ、イランの和平などそもそも頭にはなかったと考えますし、だから安保法制の議論でこのような使われ方をしたのだと考えます。したがって、安保法制を議論をしていた昨年前半期などは、政府には原油が上がるという認識があったものと考えますし、同時に中東の混乱を想定していたものと考えます。そして、このことに対して有効に外交的に手を打とうとは考えていなかったのは明らかであるものと考えます。それは原油価格上昇と中東混乱を是認していたということを意味するものと私は考えます。しかし、現実は外交的に世界的な動きとして和平が実現し、現在に至ります。積極的平和主義など単なるまやかしでしょう。

原油価格が下落するから中東混乱
話を原油価格に対する『ニュース23』の解説に話を戻します。
中東が混乱するから原油価格が下落するのではなく、むしろ実相は原油価格が下落するから中東で混乱が起きる、もっと率直に言えば「混乱が起こされる」と考えます。そう考えた方が明らかに自然でしょう。
サウジアラビアなどの原油産出コストは1バレル5ドルとか10ドルと言われています。したがって、現状の1バレル30ドル前後の価格でも実は利益は出るのです。しかし、実際には損益分岐点が1バレル60ドルと言われています。その理由は、明らかにサウジアラビアなどの原油産出国が、原油以外のものに多額の投資などを行っているからです。例えば、中東の航空会社や突如現れた砂漠の中の摩天楼などの人口都市の建設などです。これらの投資を回収するのに、1バレル60ドルで販売しなければならないという構図があるものと考えます。
実際、2015年8月、以下の記事のようにサウジアラビアが財政悪化に直面し、債権で資金調達したことが報道されています。このことは、2015年6月に1バレル60ドル近くまで値を上げてから再び下落した時に生じたことです。

「サウジが財政悪化に直面 国債発行で穴埋め」(2015年8月7日 CNN)

1バレル60ドルというラインがあるのですが、さらにその時よりも現在は値が低く半分ですから、問題はさらに大きくなっているわけです。そうなると今度は以下の記事のように、国営の石油会社を上場する、つまり売りに出さざるを得ないわけです。

「財政難のサウジ、国営石油の上場検討 時価総額数兆ドルか」(2016年1月9日 CNN)

非常にわかりやすい動きをしているわけであり、サウジアラビアなどはかなり無計画な国家経営をして、今、ここに大きな問題を抱えるに至っているわけです。
こうなると原油価格が上がってもらわなくては困るというのが、実情になりますから、原油価格を上昇させる「中東の混乱」が必要になるのは自然な流れです。そこで生じたのが、先日のイランとサウジアラビアとの外交問題であったと考えるのも、また自然なことです。実際に本日、1月16日、イランへの経済制裁を欧米諸国が解除することが報道されています。このことによってさらに原油供給量は増えますから、原油の値段は下げ圧力が強まります。そして、まさにこのことを阻止したかったのが、サウジアラビアなどの国ではないかと考えます。先日、イランとの外交問題でサウジアラビアと歩調をともにした諸国は、サウジアラビアが抱えている同種の問題を抱えているものと分析します。

「米 イラン核合意履行確認後に経済制裁解除へ」(2016年1月16日 NHK)

このように、中東で混乱を起こすことで原油価格を上げるということがあるから、本ブログ「レバノンでの大量薬物押収事件に見る戦争と薬物の関係」(2015年11月3日)で指摘したように、サウジアラビアの皇太子が薬物輸送に関わるという不可思議なことが起こるのでしょう。このことは、これまでの中東の混乱と密接に関わるものと分析します。
現状、サウジアラビアなどの財政が悪化すると、それらの国々のファンドによって世界中に投資されていた資金が引き揚げられて混乱するという論調がありますが、そのような混乱が起これば原油も間違いなく上がるでしょう。そして、そのような論調が出てくる背景と発端に砂漠の中の摩天楼や航空事業が絡んでいるとすれば、世界にとって本当に良い迷惑であると思わざるを得ません。

中東の混乱で原油価格が落ちるというのは、やはりおかしい
中東の混乱で原油が落ちるというなら、中東の混乱を嫌気して代替エネルギーに変えるからと言うことなのでしょうか。しかし、そのようなことは、一夜にして生じることではないですから、現状を説明するものにはならないでしょう。いずれにせよ、原油安は日本にはプラスのことですから、現状をうまく利用すれば経済にとっては明らかにプラスになるはずです。
『ニュース23』の、日経平均株価の下落は、原油安に原因があり、その原油安は中東の混乱にあるという解説は、中東の混乱が日経平均株価の下落に結びついているという解説です。しかし、中東は和平へと動いています。その解説は、「サウジアラビアとイランの問題」のように、中東の混乱は悪いことだから、それを解決するために、日本は出て行かなくてはいけないということを、言おうとしているのでしょうか。しかし、それは、現状、和平を実現しつつある中東において、かえってマイナスでしょう。そして、それは明らかに原油上昇を招きます。
このような論調はサウジアラビアなど石油資本に同調しようとしているのでしょうか。それとも政権と歩みを一にすると当たり前のように言われているマスコミですから、そのことを示すことなのでしょうか。それとも単なる知性の劣化なのでしょうか。少なくとも変化の時代に知性がついていけない状況は間違いなくあるでしょう。これまでと同じ位相で考えていれば、間違いなくそのような劣化は生じます。いずれにせよ、よく言われている政権と寄り添うマスコミと言うことが生じるのは、普通に考えて知性の劣化であることは間違いないでしょう。

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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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