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TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?
[日本の政治]
2016年2月6日 23時56分の記事

本ブログ「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月4日)の続きです。

「世界と日本はどうなる? 仏学者E・トッドの“予言”」(2016年2月1日 TBS)
「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月7日)
「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月4日)

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トッド氏については今回の番組ではじめて知りましたが、非常に面白いと思います。他にも以下のように述べています。

テロは先進国内部の問題
トッド氏は、テロの脅威について、それは先進国の外からではなく、先進国の内部から生まれていると述べています。このことは、先進国の社会がうまく機能していないことが大きな問題としてあり、その原因を探るべきと指摘しています。その通りでしょう。
これと同じ趣旨のことを、本ブログ「テロとの闘いに関する一つの見方」(2016年12月6日)「銃乱射テロに関してオバマ米大統領、異例のテレビ演説」(2016年12月7日)や、「人権抑圧的な発言は多いが危機感は皆無」(2016年11月25日)などで指摘しました。
トッド氏は、このインタビュー後半において、先進国の病はエゴイズムやナルシズムと述べています。これもまさにその通りで、これを一言で言えば、本ブログで指摘したとおり、「行き過ぎた消費性向の問題」なのです。つまり消費的な快楽主義ということを起点として人間が動いていることが、自我の極端な肥大化であるエゴイズムやナルシズムという、先進国の病になっていくのです。当然、そこには人との繋がりが希薄になるという状況が生まれます。これがテロの病巣なのです。このことに対する処方箋は消費と反対の「生産(協働)」に思考の起点を置くことでなくてはなりません。
日本では90年代にオウム事件などテロ事件がありましたが、彼らの行動の本質は、快楽やナルシズム、エゴイズムです。それは宗教ではありませんし、そこでの「教義」は、これらを拡張・起動させるスイッチでありツールでしかありません。つまり本質は「万能感」というナルシズムであり、エゴイズム、快楽であるのです。このオウム事件と同じ構造が、実は他の先進国の中にもあるということが、トッド氏の指摘でもはっきりとわかるわけです。
昨年、日本の現政権は中東情勢などを理由にテロとの戦いと言い「外」へ視点を向けました。もちろん外の脅威はありますが、しかし、本当に目を向けるべきは「内」であるわけです。特に日本は90年代において既に大変なテロ事件を経験してるわけで、このことから本当は「内」への対処ということをすぐに考え、メッセージを出す必要があったわけです。
現政権が昨年初めに金切り声を上げるように声高に言った「テロとの戦い」も、その実相は、自ら情勢を分析し、自分の頭で考えての結果ではないですから、外に目を向けるだけをポイントとする極めてピント外れなことになるわけです。トッド氏が指摘する先進国におけるテロの経験がそもそも日本にはありますから、それに対処するノウハウもあると昨年中に言うことは当然できましたし、世界に対するアピールや貢献もできたでしょう。憲法改正ばかりを考えて、そのために様々な理由を無理に挙げているからこのようになると考えます。憲法改正のために外の脅威を必要以上に言っているわけですが、そこには現実感はなく、当然、対処能力も皆無と言って良いでしょう。実際、テロ情報収集に外務省が新たに動いたのは昨年の年末です。それもあまり効果が期待できるほどのものとは考えません。これらのことの本質は、完全なる「思考停止」で、このような思考停止の政治に、安全の確保、世界への貢献などできるはずもないと考えます。
問題は明らかに内にあり、残念ながら日本にはその経験があるにもかかわらず、外のことだけを強調するのは、明白にそこに思惑があるからです。これが基本的な現政権の思考であり、本質です。そして、その当然の結果として、現実に対応した政策を全くしていないものと考えます。国会答弁を見ていても以前どこかで聞いたような「ああ言えばこういう」式の答弁で実がなく、また国民との対話もできていません。このようなことも、上記の政権の思考に原因があるものと考えます。

不平等は社会基盤を壊す
トッド氏は、テロの温床として不平等を上げています。特に教育においての不平等が、再階層化と不平等の固定化を招いていて、このことは先進国共通のことと述べています。確かにそうでしょう。政治家においても肩書きとしての学歴が選ぶポイントとなっています。このような基準はあまり意味のないことと思いますが、このような価値観がすり込まれています。
また、教育の不平等は所得の格差を生み、今やこのことで先進国共通に見られる貧富の差が明らかに問題となっています。貧しいものがさらに貧しくなっていくことによって、生存するだけがやっとの状況に追い込まれ、子供を生み・育てることも難しくなっています。したがって、社会における生命の継続性は弱くなっているわけですし、当然、社会基盤が崩れているのですが、中産階級がかなり衰退していることからもわかるとおり、明らかに行き過ぎた格差を生み出す構造が、本質的に社会の中心となっているのです。
そして、この行き過ぎた構造は、上述したエゴイズムやナルシズムなど消費性向がもたらしているものと考えます。つまり、自分は金持ちになりたいという欲求が利用され、貧しくとも自分だけは金持ちになるという心情がこの格差の構造を支持、受け入れてしま、この不平等の構造を作り上げることを助長していると考えます。よく若者が、自分は貧しいのに、羽振りが良い金持ちに夢を投影し、その心情が利用されるようなことがありますが、それと同じでしょう。
構造的な不平等は、社会を確実に崩壊させます。そして、社会の体力を確実に奪っていきます。治安や社会の不安定化を生み出します。そして、このようなことが先進国に共通して生じていると言うことです。そこには、当然、先進国に共通する原因があるわけです。その一つは上述したきたことです。
しかし、もう一つ極めて重要な共通点は、グローバル資本主義というものです。ローマ法王フランシスコもこの不平等については極めて警鐘をならしていますが、同時にグローバル資本主義に対して強く批判をしています。法王は現在の世界の状況を喝破している分けですが、先進国で共通の現象が確認されるということは、そこに確実に共通の要素があるわけで、それがグローバル資本主義や新自由主義であるわけです。だから、法王フランシスコはトリクルダウンという世界中で新自由主義者が言っている不平等を助長する政策を批判するわけです。
トッド氏はこのようなことには言及していませんが、不平等を生み出す構造を法王フランシスコと同じように問題視するということは、その本質を突き詰めれば、確実に同根を見いだすことは間違いないでしょう。そして、このことはもちろん日本も例外ではありません。
ですから、現在、世界で生じていることのほとんどは、文明の衝突でも、宗教対立でもないのです。むしろ、文明の衰退や文化・宗教性の衰退なのです。これが本当の意味で重要なポイントであるのです。だから、先進国で同じような現象が起きるのです。
このような状況で教育は非常に重要なポイントですし、また道徳的観点も必要です。しかし、現在の政権や自民党が推し進めているような単なる復古主義で80年前に戻そうというような「道徳なるもの」は全く意味がないでしょう。馬鹿げているとしか言い様がありません。道徳の意味や宗教の存在の意味が全くわかっていない証拠でしょう。道徳や宗教は、社会における生命の継続性を実現させるために、時代時代において常に考えられていくものなのです。
「TBS『NEWS23』の仏学者トッド氏へのインタビューは秀逸?」(2016年2月7日)へつづく

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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