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構造的な問題を解決しない限り復活はない
[日本の政治]
2019年8月5日 23時51分の記事

本ブログ「残された切り札は少ない」(2019年8月3日)では、メガバンクなど様々な大手企業のリストラを書きました。取り上げたメガバンクでのリストラとともに、ATM相互解放ということを観ると、力を落としているメガバンクが、提携関係を強化して生き残りをはかっていると考えるのが正しいと考えます。そこにはかつてのメガバンクの面影はすでにありませんし、ATM相互解放という表現も、言葉づかいの問題と考えます。
8月3日のブログでは以下のように書きました。

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このように見ると、そもそも雇用環境は良好なのかという疑問符が当然つきます。そして、大手がこの状態ですから、記事にならないだけで、関連する産業や子会社や下請けなどに問題が波及していることが当然予想されます。


大手企業の大規模リストラなどはマスメディアが取り上げますが、規模が大きくないと報道はなかなかされません。しかし、マクロ的な動向でその記事にならない動向は読めます。以下の二つの記事は、先日取り上げた大手企業の大規模リストラと関わる現在の日本の経済状況を示しているものと考えますし、すでに構造的に日本経済は大きな問題を抱えていると考えます。

「製造業、3社に2社減益 4〜6月 電機・機械が不振 本社集計」(2019年7月30日 日本経済新聞)

「7月の消費者心理、14年の増税時並み水準に悪化」(2019年7月31日 日本経済新聞)

上の方の記事では、日本の上場企業のうち、製造業の3分の2が最終減益となったと書かれています。上場企業ですからそれらの関連企業や下請け企業にも広汎に同様の厳しい状況はあるでしょう。
この記事では、その要因として中国景気の減速が繰り返しいわれています。しかし、これは正鵠を失する指摘と考えます。もちろん、中国の景気は要因と考えますが、それを要因として挙げていることは、それだけ日本経済が中国に依存していることを表していますから、その依存体質にそもそも問題点があることになるわけです。それは中国だけではないでしょうが、ここにそもそもの問題点があると考えます。グローバリズムを政権や経済界が極度に強調していることを見てもそれは明らかです。
また、輸出やグローバル市場への過度な前のめりの政府と経済界の姿勢は、もう一つの重要なポイントを示唆しています。それは、国内の社会環境や状態が軽視されているということです。グローバル市場での競争力ということのために、日本の社会環境や国民生活が犠牲になり、実質賃金が伸びていなかったり、再分配が行われていなかったりと様々な問題となっているわけです。贅沢は敵だといった戦前とさして変わりません。現状の日本はそういう意味で半奴隷工場となっています。そのようなところに外国人労働者を入れても、さらに状況を悪化させるだけで、日本人と外国人の労働者双方にとっての悲劇をいっそう拡大させるだけなのです。そもそも構造的に大きな問題がそこにあります。
そして、ひとたび、依存している他国経済が悪くなると、一気に企業の業績が落ち込み、回復の見通しが立たないという状態に追い込まれるわけです。
ちょうど一年前の講演会で、中国経済は減速すると述べたら、反論されたことがありましたが、今や同じように反論する人はほとんどいないでしょう。実際、ザ・フナイ2016年9月号ですでに将来の中国経済の減速を述べていますし、その前から様々なところでそのように申し上げています。
私でもそのように3年以上前から予測できるのですから、大企業の経営者や経済団体、日本政府(安倍政権)は当然、3年前から手を打っていなければなりません。しかし、そうしていないから、今、その影響を被っているわけです。

国内的な複合不況
上記日本経済新聞の記事の二つ目では、内閣府による7月の消費動向調査で、前月比0.9%マイナス、10ヶ月連続で前月を下回っていると報じています。上記の日本の経済状況と構造的問題を観れば、すでに消費動向に影響が現われていることははっきりとしています。
ただ、問題はこれだけではなく、記事では物価上昇しているのに実質賃金が伸びていないことをいっています。これは完全にスタグフレーションですが、安倍政権はこれまでインフレ政策をして、実質賃金や可処分所得が伸びる政策をまったくしてきませんでした。したがって、状況は安倍政権によってつくられた官製不況であるのです。それが上述の依存体質が合わさっているわけです。
このような状態が、消費税増税前に生じているのですから、状況は深刻ですし、今後、消費が回復傾向に転ずることは現状で考える限りは難しいでしょう。
もうすでにアベノミクスが失敗したというのは当たり前のことであって、実態は安倍政権によって日本経済や日本国民の生活が破壊されているといる状況なのです。クールジャパンなんていっていられる状況ではすでにありません。
この日本経済新聞の二つの記事をみて、同紙が現状を包括できているのかと少し疑問に思います。同紙は当然、上述の大手企業の大規模リストラについても承知しているでしょうが、包括的に現状を捉えていると記事を読んでいて感じません。また政府の消費者心理の基調判断も甘いと感じます。

日本の競争力を落としのは
上述のように安倍政権ではグローバル市場での競争力ということのために、日本の社会環境や国民生活を犠牲にしてきたと考えます。安倍政権というより小泉・竹中構造改革からで、まさに自民党の政策といるものです。
かつて日本の製品に国際競争力があったのは、国内を軽視したからではなく、重視したから生じたものと考えます。内需が強くて、国内の競争で生まれてきた製品に国際競争力があったわけです。消費が堅調であることによって、その消費から生まれる製品へのフィードバックが国際的な競争力を生み出してきました。
しかし、国際競争力のためにといってコストをカットし、再分配や実質賃金・可処分所得が伸びる政策せず、結果、内需が衰え、日本から生み出される製品に競争力がなくなっているのが実情でしょう。国内消費が落ちて、国際競争力がなくなったということですし、世界に通用する良い製品を生み出す土壌を砂漠化してしまったということです。そして、それを経済界や自民党政治が招いたということです。グローバリズムへの無批判の信奉が、自らを弱めたということです。
これは構造的なもので、政策的なものが多分にあります。そして経済界の不明が拍車をかけていると考えます。経済界やグローバリズムの信奉者である安倍首相、経産省の責任は非常に重いと考えます。

もう一つの構造的な問題
もう一つの構造的な問題として、戦後経済構造の崩壊があります。戦後経済構造を朝鮮戦争の構造と呼んでいますが、このことが当然あります。この当事者も実は自民党、経済界、そして経産省なのです。この構造に代わる新たな構造をつくらなければならないのが現状です。
そのためには、まず消費税減税か廃止、再分配、国内環境の整備、実質賃金と可処分所得が伸びる政策が最初のスタートでしょう。消費の活性化なくして、日本経済の復活はあり得ません。ただ、その復活を果たしたときに主役になっているのは、かつてとはまったく異なっています。

後手後手、ちぐはぐ
8月5日も、先週2日から引き続いて日経平均などが大きく動いています。この状況で財務省、金融庁、日銀が緊急会合を開いたと以下のように報じられています。

「政府・日銀、円高・株安を警戒=1日に続き緊急会合」(2019年8月5日 時事通信)

この記事では1日も同様な会合を開いたとありますが、本ブログ「自ら危機をつくり出すことを忘れている」(2019年8月1日)で取り上げたように、同じ1日に安倍首相はリーマンショック級のことは起らないだろうとの見通しを示し、予定通り消費税増税をすると報道されています。まさに政府内で完全に思考がちぐはぐになっています。同ブログで8月2日に生じたらどうするのかと書きましたが、財務省、金融庁、日銀はなんの手も打っていなかったということは、現状います。だから、また5日に再会合しているわけです。
ただ、この再会合も大きな地震が起きたときに政府が開く緊急会合と同じ類いに見えます。為替や金融の世界的な動きは、政府がしっかりと把握してくれなくてはならないのですが、まさに地震に遭遇したという感覚で動いています。それでは遅すぎで、やっている感を出して世論対策をしているだけに見えてしまいます。ザ・フナイ9月号では、最終回ですが、8月がポイントのになることを書いています。政府に打つ手がない可能性がありますが、すでに遅すぎる対応と考えます。このように緊急に鳩首しても本質的に日本が抱える構造的な問題は解決されません。現状は安倍政権で完成された問題ある構造の上に、大きな波が覆い被さって状況を悪化させているというのが実相と考えます。
いずれにせよ、自国経済の問題はまず他国に要因を求めているうちはダメでしょう。しっかりとした構造を再建することが、今の日本では急務です。そのためにはまず国民の生活に眼を向けなければなりません。



最終編集日時:2019年8月6日 15時16分

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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