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NHK『欲望の資本主義2023』を少し観て
[日本の政治]
2023年1月7日 19時11分の記事

本日(2023年1月7日)、昼食をとりながらテレビをザッピングしていたら、元日にNHKで放送された『欲望の資本主義2023』の再放送をやっていました。

・ 『BS1スペシャル 欲望の資本主義2023 逆転のトライアングルに賭ける時<前編>』(2023年1月1日 NHK)

・ 『BS1スペシャル 欲望の資本主義2023 逆転のトライアングルに賭ける時<後編>』(2023年1月1日 NHK)

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この番組は前後半の二部構成ですが、私が観たのは後編の最後の30分程だけで、すべては観ていません。
番組ではマリアナ・マッツカートさんという方が出て色々と資本主義などについて話していました。しかし、どうも話が堂々巡りで、新しい思考の展望が見いだせていない感じが非常にありました。彼女の話し方はとても自信満々なのですが。。。
番組ではケインズとシュンペーターを対比させて議論を進めていました。これもありきたりなのですが、『市民社会、政府、企業』という3セクションの関わりで資本主義社会を語っていました。
この番組を漠然と観ていて、どうしてこんなに話が陳腐で、未来への展望がないのだろうかと、少し考えました。そして、見いだしたことは、この陳腐さの原因になっていることは『公共(Public)』についての本質的な概念が見いだせていないからという結論でした。
番組では『公共』・『共通善』などの言葉が出てくるのですが、そのことについての考察が表層的、従来通りすぎるのです。
しかし、この公共を『人類の生存』に置き換えれば、新しい展望が見えてくるのにと正直思います。むしろ、『人類の生存』に関わるから『公共』・『共通善』なのです。『命』をあくまでも守ることが『公共』であり、『共通善』。したがって、今の日本政府には公共性は極めて希薄。無論、民主主義からも逸脱している。
この公共についての概念、わかりきっているようで全然、我々はわかっていないのです。番組ではマリアナ・マッツカートさんという方が、『政府の役割はまったく行なわれていないことを行なう』というような珍回答を語っていましたが、それは完全に間違ってはいませんが、核心ではないのです。
公共とは『人類の生存』に関わるから、最優先されなければならず、だからこそ誰もそのための施策をやっていなければ、公共を代表する政府がやらなくてはならないということなのです。この『生存』という要素が見いだせないと、『公共』とは陳腐なもの、優先順位の高さを見いだせないものになってしまうわけです。
だから、この番組のように『公共』と『起業家精神』が同列に置かれるような『思考』になってしまうわけです。これは『公共』と『起業家精神』のバランスをとっているのではなく、物事の優先順位を見いだせないがための思考的・思想的迷走なのです。だって、人類の生存なくして起業家精神も何もないじゃないですか。
このような思想的迷走の結果は、いずれ『公共のための戦争』などが言われるようになり、結局、生存とは反対の『殺し合い』をするようになる。このことは経済分野でも起きます。
そういう20世紀型の思考が、マリアナ・マッツカートさんの発言に観られるし、番組の思想にも観られると正直思いました。だから陳腐で未来を展望できない。


○ しかしとても良い部分もこの番組にはある
しかし、一方で、この番組ではとても良いコメントを出していました。後編の最後のほうで『ヒゲのおじさん』が出てきますが、非常に良いコメントをしています。このヒゲのおじさんは誰なのかと思って調べたら『ジャック・アタリ』さんなのですね。名前は知っていましたが、これまで注目をしてきませんでした。番組での彼の言葉をそのまま以下に引用します(下線は片桐)。


日本には影響力があるはずです
ですが日本をすばらしい国だと
思いつつも言わせてもらえば
日本は自らの歴史を振り返り
過去の敵と協調をする時だと思います
そうすれば日本はアジアで
大きな影響力を保てるでしょう

日本が1930〜1940年代の
敵と和解すればね
中国 韓国 ベトナム
インドネシア フィリピンとです
過去の全ての敵と仲直りすべきです
フランスとドイツも
お互いのために和解しました
日本も中国やベトナムと
心から関係を回復し合うことが重要です
ミャンマーやフィリピン
インドネシア 韓国ともね




下線部はまさに私がザ・フナイの連載で何年も前から申し上げてきたことです。そしてそれは、法王フランシスコの『一致は対立に勝る』です。このことについては本ブログ『4つの原理』(2020年1月18日)に書きました。ここでのポイントは『多様性(SDGsとやらがいう遙か前から言っている)と生命の平等』、共通善、『全体は個のために、個は全体のために』です。
話を戻します。ジャック・アタリさんの言葉には、『ロシア』がありませんが、当然そこには『ロシア』が入ります。ジャック・アタリさんがロシアに言及していないのは、意図してのものかどうかは別としても、彼は『全ての敵』との和解と言っていますから、ロシアが入るのは当然です。
むしろ、近代以降、日本がもっとも敵対してきた、事実としては『敵対させられて』きた国はロシアです。いまだに平和条約すら結べていません。その実相はそうさせてもらえないからです。英米によって。
いずれにせよ、このジャック・アタリさんの言葉を放送しただけでも、この番組の価値は大変にあったと考えます。それほど良いものです。
上述のように、このジャック・アタリさんと同じことを5年以上前からザ・フナイの連載でメインとして言ってきました。同時に上述した生存という公共・共通善の核心についても連載で1年以上をかけて説明してきました。ですから、必然、『資本主義』についてもザ・フナイの連載では中心的なテーマとしてお話しをさせてもらっています。
もちろん、ザ・フナイ2023年1月号から3月号での舩井勝仁さんとの巻頭対談では、これらすべてのキーワードについて語っています。昨日(1月6日)に3月号の初稿の見直しを提出したのですが、このNHKの番組を観て、何ともタイミングが良いなと正直思いました。
このような番組が出てきたことはとても評価すべきことと考えています。そして、このジャック・アタリさんの世界観から言えば、すでに55年体制、冷戦構造の自民党政権は賞味期限切れということに当然なります。それが時代の趨勢なのです。
しかし、今の日本ではジャック・アタリさんの『過去の敵と協調をする時だと思います そうすれば日本はアジアで大きな影響力を保てるでしょう』ということがわかっていない人が圧倒的に多すぎます。多すぎて、本当に不幸なことです。本当に。
このジャック・アタリさんの言葉とまったく同じことをザ・フナイの連載で再三再四申し上げてきましたが、残念なことに、どうしてもこのことを理解していただけないのです。本当は日本が中心になれるのに。とてもとても残念なことですし、今や逆に暴走しています。そして誰も止められないでいます。
軍事費を今の10倍にしたところで、日本はアジアで尊敬はされない。そうしても、また過去と同じことをやり始めたとただ軽蔑されるだけ。そして、先の大戦と同じくまた国土が荒廃し、人々が苦しみ、滅亡の憂き目にあうだけです。


○ 自分の頭で考える
番組では、このジャック・アタリさんの言葉のあとに、今度は森嶋通夫さんの『なぜ日本は没落するか 』(岩波現代文庫 2010年〔1990年〕)を題材にして話を進めています。森島さんのこの本を読んだことはありませんが、この本には2050年の日本の没落が書いてあり、その没落を回避するために、森島さんは『アジアの人々との協調と自分の頭で考える』ことを言っていると番組では紹介されています。
まさに森嶋通夫さんの言うとおりでしょう。
しかし、自分の頭で考えるためのしっかりとした教育や歴史学などのラジカル(根源的)な知識が、今の日本にあるのだろうかと正直考えます。そういう根源的に見直したしっかりとした知識の確立から始めないとどうしようもない状況にすでになっています。今の世界情勢についての解説も、はっきりいってほとんどはプロパガンダです。NHKのも含めて。
でも、現在の日本の知識は、そのプロパガンダと整合性があるものになっています。つまり、自分の頭で考えるための知識が虚像なのです。だからこそ、ラジカル(根源的)に突き詰めた本当の知識の確立が必要なのです。
上記、ジャック・アタリさんの言葉には、過去の敵として協調すべき相手に『ロシア』がでてきません。それは、現在のロシア・ウクライナ情勢があって、番組上、ロシアを抜いているということになっているのではないでしょうか? 無論、これもプロパガンダ。
しかし、このロシア・ウクライナ情勢をラジカル(根源的)に見つめれば、ロシアが悪いわけではないという必然の結論に至ります。実際、この番組に出ているエマニュエル・トッドはそのことはわかっています。このとは本ブログ『ペロシ邸襲撃という事件の本質は世界情勢を考えないとわからない』(2022年10月30日)などに書きました。
そして、このように根源的に自分の頭で考えたとき、上掲したジャック・アタリさんの言葉にたどり着くのです。
NHKは根源的に考えているのかもしれませんが、その思考でいまだ行動ができないところがあるようです。あと、この番組の資本主義への考察は、いまだバブルのときの世界観が先行していて、資本主義の本質と人類社会の本質について、根源的に考えられていないと考えます。これは反省点。もう、そういう新しい時代の世界観を出して良いときです。
人類の生存を考えれば、資本主義はいずれにせよ限界に来ています。そして、変えることができない優先順位は、人類の生存が先で、資本主義が先ではないことです。人類あっての経済なのです。こんなことは当たり前のことです。
そして、このように考えれば、必然、アジアの人々との協調し、自分の頭で考え、平和をリードし、人類の生存に寄与するという結論にたどり着くのです。

いずれにせよ、とにかくこの番組は評価します。

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内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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