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パレスチナ・イスラエル情勢についていかに考えるか その5
[日本の政治]
2023年10月23日 23時58分の記事

本ブログ『パレスチナ・イスラエル情勢についていかに考えるか その4』(2023年10月22日)の続きです。

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10月23日のTBS『ひるおび』を観ていたら、パレスチナ・イスラエル情勢について報じている画面の右上にずっと『双方の犠牲者6000人を超える』というテロップが出ていました。双方の犠牲者が現在進行形で6000人を突破したという表現です。しかし、この表現は明らかにおかしい、もしくは大変に深刻な誤解を与えるものと考えます。
確かに、現在のパレスチナ・イスラエル情勢は、すでに『双方で6000人も犠牲になっている』という大変な事態であることは、この表現で十分に伝わってきます。
しかし、この表現ではハマス及びパレスチナとイスラエルが対等の力関係という錯覚を確実に招きます。『双方』だから、すでにパレスチナ・イスラエル各々『3000人』ずつの犠牲者がでているというように見えてしまいます。
このパレスチナとイスラエルの犠牲者を合計して表示する表現は、この『ひるおび』だけがやっているわけではありませんが、現状においては、この表現は非常に問題がある認識を導き、国民がパレスチナ・イスラエル情勢の本質を勘違いする可能性を大きくさせます。もしくは勘違いさせようとしているのかもしれません。現状は、最低でも双方の数を個別に載せるべきです。それは、どうしてか?
それでは、現状においてのパレスチナ、イスラエルのそれぞれの『これまで』の犠牲者数を観てみましょう。NHKの記事を参照しますが、NHKの記事に書かれているパレスチナとイスラエルの日ごとの犠牲者を以下にまとめました。NHKはけが人や人質の数を報じていますし、ガザ地区の住民100万人の人々が家を追われていることなども報じていますが、それは以下の一覧には記載していません。また、犠牲者数のソースについては、パレスチナ側はガザ地区・パレスチナの保健当局のもの、イスラエル側はイスラエル軍の発表と、NHKは10月8日から23日までの記事において数回明記しています。



日付 イスラエル    ガザ地区     双方
23日 少なくとも1400人 4651人      6000人
21日 なし
20日 少なくとも1400人 3785人      5100人
19日 少なくとも1400人 3400人      4800人
18日 少なくとも1400人 少なくとも3200人 4600人
17日 少なくとも1400人 2808人      4200人
16日 少なくとも1400人 2750人      4100人
15日 少なくとも1300人 2329人      3600人
14日 少なくとも1300人 2215人      3500人
13日 少なくとも1300人 1799人      3000人
12日      1200人 1100人      2300人
11日      1200人 1055人      2200人
10日  少なくとも900人  770人      1600人以上
9日  少なくとも700人  493人     およそ1200人
8日    200人以上  313人      500人以上




ご覧になれば一目瞭然で、10月16日から23日までは、イスラエルのこれまでの犠牲者は『少なくとも1400人』となっており、実は増えていないのです。要するに10月16日以降、イスラエル側に犠牲者は出ていないのです。人質はとられていますが、これが実態なのです。
一方、パレスチナ側は10月16日から23日まで、犠牲者が2000人も増えているのです。しかし、それが日本のマスコミだと『双方』で犠牲者が増えていると表現されるのです。これ、普通に正確ではありませんよね。すでに現在はパレスチナ人が、圧倒的な力を持つイスラエル軍によって一方的に殺されている状況が毎日続いているということなのです。これ、普通に虐殺です。
しかし、そのパレスチナ側の犠牲者を『双方』でと表現すれば、当然、その実態を見失うことになります。
この表現はパレスチナの犠牲者を過小評価させますし、パレスチナ・イスラエルの情勢の本質であるイスラエルが圧倒的な力を有しているという本質を覆い隠して、イスラエルの虐殺を肯定することになるのです。
現状においてパレスチナ・イスラエル情勢での、これまでの犠牲者を『双方』でと表現すれば、この報道を観た人々は、現在もイスラエルの方々が犠牲になっていると勘違いしますし、このような勘違いが、現在すでに行なわれているイスラエルによるパレスチナ人に対する一方的な虐殺を正当化、肯定することになるのです。
すでに10月16日以降は、イスラエルによる一方的な虐殺の状況は、大変な問題です。ハマスがテロリストとか言っている状況ではなく、イスラエルこそがテロリストよりはるかに悪い『人道に対する罪』をすでに侵している存在という状況なのです。
そして、このような実態を見えなくし、人々に誤認識をあたえる表現・報道が、TBS『ひるおび』の『双方で6000人もすでに犠牲になっている』というテロップの意味なのです。
10月7日にハマスが攻撃を開始して、当初は多くのイスラエル側のイスラエル人や外国人の方々が命を落とされました。いまだ多くの方々が人質にとられています。
しかし、10月7日からほぼ1週間で、パレスチナ・イスラエル情勢は明らかに変化し、イスラエル側の圧倒的な力が、膨大なパレスチナ人の命を奪っている状況にすでになっているのです。一方でイスラエル側の犠牲者は出ていないのです。
このような状況がもう1週間以上続き、2000人以上のパレスチナ人がイスラエル軍によって命を奪われているのです。やはり、これ、どう観ても虐殺です。
このような状況を見えなくするのが『双方の犠牲者合計は』という表現なのです。本当に危うい。今後、情勢がどうなるかはわかりませんが、現在においては『双方の犠牲者合計は』という表現が、非常に危ういものであることは間違いないのです。



『パレスチナ・イスラエル情勢についていかに考えるか その6』(2023年10月24日)へ続く。

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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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