意味不明で破綻している外交 | |
[日本の政治] | |
2016年5月1日 23時57分の記事 | |
第二次安倍政権が発足して、当初、外交に関しては「価値観外交」ということが言われていました。価値観外交とは自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済などについて価値観を共有するという外交と言うことです。
しかし、国内を見れば、自由や民主主義の源泉である報道の自由についてはランキングを下げており今年は72位(国境なき記者団)までに後退していることは周知のことで、ランキングにおいて「多くのメディアが自主規制し、独立性を欠いている」と指摘されています。同時に先日来日した国連「表現の自由」特別報告者のデビッド・ケイ氏による報告でも、日本の報道の自由に対する懸念は強まったとあり、「ジャーナリストからは、日に日に圧力を感じているという声も挙がっていて、日本は報道の独立性を担保するために何らかの対応を取るべきだ」(2016年4月19日 NHK)と指摘されています。また、自民党の憲法改正草案での基本的人権に対する姿勢にも疑問の声が上がっていたりもします。さらに市場経済についても、為替相場や株式市場での政府の介入があるのではないかと見られています。 まさに価値観外交と他国に対して掲げていることが、国内的に全くなされていないという大変な状況になっているわけです。昨今、安倍政権から価値観外交という言葉が聞かれなくなりましたが、これは上記の基本的人権や民主主義などの価値観を安倍政権は既に重くみないということなのでしょうか。そのような状況が日に日に強まっているように考えます。 ゴールデンウィークは毎年、閣僚や議員の外交や外遊が多くありますが、ここ数日間は岸田外相の訪中が報道されています。 昨年1月、岸田外相はインドを訪問し、その際、インドと中国の領土問題に言及しインドを支持しています。自国の領土問題ならいざしらず、このような他国間での領土問題に干渉することは本来すべきことではないと考えますし、当時、本ブログ「問題あるインドでの岸田外相発言」(2015年1月21日)で、このことは批判しました。 そのような経緯があっての今回の外相訪中なわけですが、これまで中国は当然、拒否し続けてきたわけです。それは当然といえば当然でしょう。それでも今回、中国は受け入れたわけで、中国は今回、かなり寛容に振る舞っているものと考えます。それでも、昨年1月の岸田外相の発言があって、今回、岸田外相が訪中していることから、今回の訪中は明らかに敗北と見るべきでしょう。昨年の発言から考えれば、普通なら失笑の対象になることです。これは自ら招いた避けることができた不必要な敗北で、国益を損なうことは間違いありません。という状況の時に、海上自衛隊がフィリピンに練習機(航空機)を貸与するということが報道されています。 「フィリピン軍に自衛隊機を貸与へ 中国けん制狙い」(2016年5月1日 テレビ朝日) これは南シナ海における係争について中国が焦点であるのは当然でしょう。岸田外相が訪中して、一方でこれでは単に中国を挑発しているだけでしょう。アメとムチを使い分けて、というように考えているかもしれませんが、本当にアメとムチを使い分けることがそもそもできるだけ考えているのかと考えます。現状、中国との係争を拡大させたいというメッセージしか受け取れないように考えます。それはこれまでの経緯から考えて良いこととは考えません。日中関係安定化に尽力しているお方もいるわけです。 昨年1月の岸田外相の外遊で、インド訪問のあと欧州ベルギーで、今度はロシアとウクライナの紛争でクリミア半島がロシアになったことについて、これをロシアの力による現状変更で、これは北方領土についても同じと述べています。これに対してロシアが猛反発しています。 しかし、このような背景があって、今月の安倍首相のロシアへの非公式訪問であるわけです。2013年4月に安倍首相は訪露していますから、今度はプーチン大統領かロシアの首相が訪日するのが順番であると考えますが、それが今回は安倍首相のロシアへの非公式訪問ということであるわけです。明らかに岸田外相訪中と同じに意味になっており、その種は昨年の1月に岸田外相によってまかれているわけです。今回のように中露と関係安定化を安倍政権が模索する形になっているのですから、昨年1月の岸田発言のようなことがなければ、もう少し対面を保ち国益にかなう形で、このような外交ができたと考えます。非常に国益を損なっているものと考えますし、しかし、一方で本当に安定化を考えているのかと思えることも上述したようにあるわけです。まさに外交戦略が意味不明で破綻していると考えます。このような状況で岸田外相の外交の評価が高いというのはかなり違和感があることと考えます。このような外交を評価すると大きく国益をそこなうものと考えます。 | |
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