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現在の日本の対ウクライナ政策はアベ政権の『積極的平和主義、自由と繁栄の弧』の一環にすぎない その2
[日本の政治]
2022年3月18日 1時30分の記事

昨日の本ブログ「現在の日本の対ウクライナ政策はアベ政権の『積極的平和主義、自由と繁栄の弧』の一環にすぎない その1」(2022年3月17日)の続きです。

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◎ 日本でウクライナに一番近い政治家はアベ晋三
一般的に、元首相のアベ晋三は、プーチンに近く、『親露』だと言われてきました。そう一番言ってきたのは、筑波大学教授の中村逸郎だと考えますが、それはまったく違います。このプーチンとアベ晋三は正反対で、そのようにずっと申し上げてきました。中村逸郎については本ブログ「《日本の政治》 日本の知性の劣化を非常に感じるテレビ」(2022年2月27日)でも書きましたが、基本的に素人レベルの見解しかないと考えます。よくこのレベルで大学教授ができるなと心底感心します。
いずれにせよ、アベ晋三が近いのはウクライナです。これは以下の2月27日の記事「安倍元首相『ウクライナ国民に連帯』表明」を観ても一目瞭然です。

「安倍元首相『ウクライナ国民に連帯』表明」(2022年2月27日 FNN)

だからアベ政権下で27回の日露首脳会談を行なっても、まったく進まなかったのです。本当は、2013年以降、日露間で平和条約を締結しなければならなかったのですが、アベ晋三がのらりくらりとかわしてしまったのです。そして、そういうところに筑波大学の中村逸郎が、アベ批判をしているようで、実は反プーチンとして日露離反をずっとやってきたわけです。
因みにトランプとアベ晋三が近いと言われてきましたが、それも間違いです。この両者もまったく反対なのです。そのことが一番良く表れているのが、以下のトランプの発言です。上記のアベ晋三の発言とまったく反対でしょう?

「トランプ氏、プーチン大統領称賛 親ロ派地域の独立承認『天才的』」(2022年2月23日 共同通信)

そうなるとトランプとプーチンは近く、その反対はアベ晋三ということになる。さらに言うとトランプの反対はウクライナ疑惑の戦争屋バイデン(ハリス)ですから、必然、この戦争屋バイデン(ハリス)と近いのがアベ晋三ということになります。これが本当の現実。
そういうアベ政権下ではGPIF資金が主に米国の巨大武器産業に流れました。2017年9月17日の東京新聞は「GPIF年金運用  軍事上位10社の株保有 本紙調べ」として報じていますが、その原文は現在ネット上にはありません。東京新聞も随分とヘタレだなと思いますが、以下のリンクにその記事の切り抜きが載っています。

「GPIF年金運用  軍事上位10社の株保有 本紙調べ」(2017年9月17日 東京新聞)

また、同時期の朝日新聞では、以下のようにGPIF資金がクラスター爆弾製造会社(米国)に投下されていることが報じられています。日本人というのはとにかく戦争に気安くお金を出すものです。こういう存在が人類において一番の最悪の存在。日本人はそういう自分をまったくわかっていない。

「GPIF、クラスター爆弾製造の米企業の株保有」(2017年4月7日 朝日新聞)

そして、ウクライナ疑惑がある戦争屋バイデン(ハリス)と近いアベ晋三は、当然、ウクライナに日本で一番近い政治家なのです。そのことが以下のウクライナ人のウドヴィク・ヴィオレッタさん(日本・ウクライナ関係史)が書かれた論文にはっきりと書かれています。
この論文を読むと、現在の日本の対ウクライナ政策が、GPIF資金を武器産業に投下してきたアベ政権の『積極的平和主義、自由と繁栄の弧』の一環であることがはっきりとわかります。尚、この文も今後削除される可能性がありますので、全文を魚拓リンクとともに文末に貼り付けておきます。

「日本とウクライナ――「積極的平和主義」を掲げる安倍政権のウクライナ支援」(2018年1月26日 ウドヴィク・ヴィオレッタさん)
「日本とウクライナ――「積極的平和主義」を掲げる安倍政権のウクライナ支援」(2018年1月26日 ウドヴィク・ヴィオレッタさん)(魚拓)

この論文の前半には、日本・ウクライナの100年以上続く関係のことが書かれていますが、その関係は2014年以降、急激に緊密になり、アベ晋三がそのキーマンであると以下のように書かれています。2014年と言えば、上記の米国がウクライナで政変を起こしたときですが、その米国の動きに合わせてアベ晋三は動いているわけです。考えて観てください。それで『親露』のはずがないでしょう。2014年のクリミアへのロシアの動きは、2014年の米国のウクライナへの策謀への対抗策なのです。


このように徐々に深化してきた日本・ウクライナ関係だが、二国間関係が一番緊密になったのは、2014年に勃発したクリミア危機の後である。

2014年以降、日本政府はウクライナに対してクレジットを含めて約18億ドルの支援を提供した。
首脳会談に関しては、2015年に安倍首相は初めて日本の総理大臣としてウクライナを訪問し、2016年にウクライナのポロシェンコ大統領は日本訪問を行った。



アベ晋三は2018年までに1800億円以上の資金をウクライナに投下しているわけです。日本でウクライナに一番資金を投下しているのは、言うまでもなくアベ晋三なのです。アベ晋三はロシアにもお金を出していますが、それはロシアを欺いてこのウクライナへのアプローチをするためなのは明らかです。これは上掲したアベ晋三のウクライナ一心同体宣言でも明らかです。
そして、この論文には次のように書かれています。冷戦後の日本は、それまでの対米協調路線から新たな外交戦略へ動き出し、アベ政権での「自由と繁栄の弧」(2006年)、「積極的平和主義」(2013年)となり、ウクライナと東欧、EUとの関係強化に動いたと。以下のものです。


1957年、日本は「国際連合中心」「自由主義諸国との協調」および「アジアの一員としての立場の堅持」という外交の三原則を打ち出した。だが、実際には冷戦が終わるまで、「自由主義諸国との協調」とは対米協調であり、対米関係は日本外交のもっとも大事な課題となっていた。
ソ連の解体によって二極システムが崩壊した結果、日本外交の地平が拡大し、日本の首脳は新たな外交の戦略を立てるようになった。そこで、安倍首相がはたした重要な役割を強調したい。2006年に「自由と繁栄の弧」、2013年に「積極的平和主義」というコンセプトが発表され、日本が国際平和に積極的に関与する政策の実現を図るようになった。そうした考え方を背景にして、新たな戦略が実現した結果としてウクライナ支援につながり、日本がグローバル・パワーとしての地位を再確認する機会となったといえよう。
第二に、日本はウクライナとの関係の強化によって、ポスト・ソヴィエト地域における政治的なプロセスの理解をより一層深めることになるだろう。関係強化を通じて、ウクライナのヨーロッパとの長い歴史的関係性が明らかになり、日本はウクライナを旧ソ連ではなく、東欧国として扱うことになるに違いない。最近の「深化した包括的自由貿易協定を含むウクライナとEUとの連合協定」や「ウクライナ人のヨーロッパへ行く際の短期滞在ビザの撤廃」は、それに大きく貢献している。



ここでもアベ晋三の反露姿勢は明確ですが、そもそもアベ晋三の外交戦略が米国追従であるのは上述のジム・ロジャースの言葉などを見れば一目瞭然です。GPIF資金を米国の武器産業に投下していることも同じ意味なのです。その武器が米国のバイデン政権からウクライナに現在提供されているのです。これを『戦争とお金の構造』というのです。
「自由と繁栄の弧」(2006年)、「積極的平和主義」(2013年)の両方ともアベ政権のもので、同政権が米国追従路線であることは私が指摘するまでもないでしょう。冷戦後も日本ははっきりと米国追従路線ですから、この論文は一体何を言っているのかというレベルなのです。
このアベ政権の動きで、プーチンとの平和条約、領土交渉が前へ進むはずがないのです。以下の記事のように、プーチンに対してアベ晋三が北方領土返還後は米軍を置かないと言っても、アベ晋三の米国と連動するウクライナでの動きを観れば、プーチンがアベ晋三を信用しないのは当たり前です。要するに北方領土問題が決着せず、日露平和条約が結べなかったのは、あくまでもアベ晋三の米国と連動した「自由と繁栄の弧、積極的平和主義」の一環としてのウクライナ政策にあるのです。

「北方領土に米軍、プーチン氏警戒 安倍首相『誤解だ』」(2018年11月16日 朝日新聞)

そもそも、アベ晋三には日露関係進展をやる気がない。ウクライナに対してはこの論文に書かれているように、やる気満々です。ロシアに対してはお金を出してやっている感を演出していただけなのです。
ウソがつきまとう同氏らしいのですが、こういうことを本ブログやザ・フナイの連載で2015年からずっと指摘していますが、その実態を理解している人が日本には本当に少ないのには心底驚きます。
そして、この論文の以下の部分には、JICA理事長の北岡伸一の名前が出てきます。同氏は、言わずと知れたアベ晋三とともに憲法改正、集団的自衛権の推進者です。つまり以下に出てくるジョージア、アルメニアとウクライナとは、このようなアベ晋三の「自由と繁栄の弧、積極的平和主義」抜きには語れないものなのです。


また、ウクライナを含めたポスト・ソヴィエト地域における民主化を支援することで、日本は地域全体を安定させる大事な役割を果たしている。途上国における民主主義の定着で中心的な役割を担っているのは、政府開発援助である。
2017年に日本の政府開発援助の実施機関である日本国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長は、初めてジョージア、アルメニアとウクライナを訪問し、ジョージアおよびウクライナにJICAの支所が開設されることになった。ポスト・ソヴィエト地域における日本の国家機関のインフラの拡大および民主化の支援、またウクライナとの関係のさらなる強化は、日本の国益にかない、国際社会においてバランスの取れた外交政策を行う能力を確保するだろう。



このようなことと、上述したジム・ロジャースが指摘した政権転覆を含めたウクライナへの米国の介入をあわせて考えれば、ウクライナの意味がよくお分かりになっていただけると思います。
だからこそ、以下の東京新聞の指摘する『ウクライナ侵攻で勢いづく改憲派 自衛隊明記など念頭に安倍元首相ら』ということになるのです。でも、東京新聞はロシア・ウクライナ情勢の実相を理解できていないのです。だから、アベ晋三を『プーチンと同じ』と言ってしまう。新聞がこの程度ではどうしようもありません。せめてジム・ロジャースにインタビューでもしたらどうかと思います。

「ウクライナ侵攻で勢いづく改憲派 自衛隊明記など念頭に安倍元首相ら 専門家『便乗だ』『プーチンと同じ』」(2022年3月16日 東京新聞)

さらに、以下のように立民の蓮舫は、親ロシアのアベ政権がプーチンを助長させたと国会で自信満々に言ってしまうわけです。立民はすでに終わった政党だと思っていますが、ここまで来るとどうしようもないなと改めて思うしかありません。蓮舫はまったくの勉強不足。ジム・ロジャースの足下にも及ばない。
いつもながらアベ晋三を批判しているようで、実はポイントをずらしたり、肝心なところで追及をやめてしまう立民の体質がこの蓮舫の質問によく出ています。そして、最近の立民は、その批判すらやらなくなってしまったのですから、どうしようもない。話しになりません。

「蓮舫氏が安倍内閣の責任追及『対ロシア大盤振る舞い外交方針はプーチン大統領を助長させた』」(2022年3月17日 日刊スポーツ)

また、以下の記事のようにゼレンスキーの国会でのオンライン演説を自民・立民が実施の方向で調整とあります。上述のウクライナの本当の意味を考えれば、とんでもないことです。最低でもロシア・ウクライナ情勢についての日本の立場は『中立』であり、それが平和国家としての立場です。米国がウクライナを使ってロシアに対峙していることに加担してはならないのです。何でもタカ派的に言動するのはバカの証拠。

「ゼレンスキー大統領 国会での“オンライン演説” 自民・立憲が実施の方向で調整」(2022年3月16日 日本テレビ)

「立民・泉代表『他国指導者の国会演説は影響が大きい』 ゼレンスキー大統領オンライン国会演説に慎重姿勢」(2022年3月16日 TBS)

上記のTBSの記事は立民がゼレンスキーのオンライン国会演説に慎重という記事ですが、結局はやるということが最後に書かれています。

◎ 現実は日本人の想像をはるかに超えるレベルで動いている
以下のクーリエ・ジャポンの記事は、ウクライナ情勢は『アメリカが引き起こした危機』と上述のジム・ロジャースと同じポイントを指摘しています。日本で報じられていることは真実ではないのです。現在の日本のように戦時下においては、少なくてもそう批判的に観なくてはならないのです。そうするのは、何よりも自分の身を守るためです。

「これはアメリカが引き起こした危機 「プーチンは犠牲者だ」世界には親ロシア目線でウクライナ侵攻を報じる国がこれほどある」(2022年3月12日 クーリエ・ジャポン)

ジム・ロジャースは、今回、米ドルの終焉(=基軸通貨の終焉)ということをはっきりと述べています。このことも、これまで私が散々指摘してきたことですが、それがすでに現実に起きているのです。でも、世の中、そんなことは微塵も考えていないでしょう。それが世界とのギャップなのです。
そして3月17日の私のメルマガには、以下のように書きました。


事実として、すでに世界の情勢は日本人の常識では理解できない異次元の動きになっています。ほとんどの日本人は現実を理解できないはずです。しかし、拙著『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015年 ビジネス社)やザ・フナイの連載、勉強会やオンラインセミナーに辛抱強くお付き合いくださったみな様は、上記の現実をお手にとるようにご理解いただけると考えます。



本当に現状、日本人のほとんどの想像を絶する現実が進行しています。現在、最低でもロシア・ウクライナ情勢については『中立』を確立できないと、今後の日本は、コモディティの輸入に極めて大きな支障を来すことに必ずなります。そのときは、米国はすでにあてにできません。必ず、今の日本政府の姿勢とマスメディアの報道姿勢を悔やむことになります。そのときはまず徹底的に責任追及をしましょう。徹底的に。国民民主党とかも。
現在の日本政府と日本のマスメディアのウクライナ・イギリス(アメリカ、イスラエル)側の姿勢は、正しいとは限らないとまず疑って批判的に観る必要があるのです。まずは、世界的な投資家のジム・ロジャースの言葉を追いかけてみてはいかがでしょうか?





日本とウクライナ――「積極的平和主義」を掲げる安倍政権のウクライナ支援
ウドヴィク・ヴィオレッタ(日本・ウクライナ関係史)
2018年1月26日

「日本とウクライナ――「積極的平和主義」を掲げる安倍政権のウクライナ支援」(2018年1月26日 ウドヴィク・ヴィオレッタさん)

「日本とウクライナ――「積極的平和主義」を掲げる安倍政権のウクライナ支援」(2018年1月26日 ウドヴィク・ヴィオレッタさん)(魚拓)

2018年は、日本とウクライナが1992年に国交を樹立してから、26周年を迎える。昨年2017年は、「ウクライナにおける日本年」とされ、両国の関係は徐々に深まってきている。また、主要外交戦略として「積極的平和主義」を掲げた日本は、ロシアによるクリミア半島の併合とウクライナ東部での軍事活動を受け、ウクライナに対して積極的に政治的かつ経済的な支援を行うようになった。
日本がウクライナという遠い国を支援している理由は何なのか、日本とウクライナとの関係の緊密化はグローバルな文脈でどのような意味があるのかと思う人もいるだろう。日本とウクライナとの関係の歴史に触れ、国際政治の文脈において、その二つの質問に答えてみたいと思う。
100年以上続く日本とウクライナの関係
ウクライナは日本人には「穀倉の地帯」や「チェルノブイリ事故があったところ」などとして知られているが、日本人とウクライナ人は20世紀の初めから交流があったことはご存知だろうか。当時のウクライナはロシア帝国の一部であったが、1902年から1934年まで現在のウクライナのオデッサ市には日本領事館があった。
また、20世紀の初めにロシア極東に移民したウクライナ人は、満州にも移動し「緑のくさび(緑ウクライナ)」と言う名の植民地を成立させた。そこで日本人との交流が開始され、政治的な理由などから、ウクライナ人の文化的な活動は日本人にとても歓迎された。それに限らず、日本とウクライナには多くの文化交流があった。1910年代から1920年代にかけて、ヴァスィリー・エロシェンコというウクライナ詩人が日本に住んで活躍していた。また、後に日本の第47代総理大臣となる芦田均は、1917年にウクライナを訪れ、「革命前夜のロシア」という回想録を残している。
第二次世界大戦後、日本とウクライナとの人的交流はさらに緊密になり、1965年にはオデッサと横浜、1971年にはキエフと京都が姉妹都市となった。1986年にチェルノブイリ事故が起きた後、ウクライナ人は日本の民間基金から援助を受け始め、現在まで続くとても重要な二国間協力が始まった。
ウクライナ独立後の日本とウクライナとの関係
ウクライナは1991年に独立し、1992年に日本と公式に外交関係が成立した。1993年には、在ウクライナ日本大使館が、1994年には在東京ウクライナ大使館が開設された。その当時、日本のウクライナに対する政策は、旧ソ地域における戦略の一環となっており、核兵器の廃棄をめぐる支援と経済援助を主な協力分野としていた。
1995年には、クチマウクライナ大統領が訪日し、首脳レベルでの政治的対話が開始された。オレンジ革命を経たユーシチェンコ大統領も2005年に日本を訪れ、ウクライナの民主的なイメージを広めた。1996年には池田行彦外相、2004には川口順子外相がウクライナを公式訪問した。このような交流の結果、二国間関係の基盤が整備され、ウクライナに日本の政府開発援助が提供されるようになった。
2006年、日本は「自由と繁栄の弧」という外交の新機軸を発表し、「GUAM(注1)+ 日本」が設立された。その結果、日本とウクライナはともに民主国家として協力する体制がさらに強化された。2006年麻生太郎外相がウクライナを訪れ、2011年にヤヌコビチ大統領が日本を公式訪問し、「グローバルなパートナーシップ」に関する共同声明が署名された。また、東日本大震災と福島第一原発事故が起きると、ウクライナ政府は日本に放射線測定器や防護マスクなどを送り、ウクライナの放射能学者から日本に対して知識の共有が始まった。
(注1)ジョージア、 ウクライナ、アゼルバイジャンとモルドバの4カ国による国際機関。
転機となったクリミア危機
このように徐々に深化してきた日本・ウクライナ関係だが、二国間関係が一番緊密になったのは、2014年に勃発したクリミア危機の後である。日本政府はウクライナにおけるロシアの行為を批判し、ウクライナの主権および領土の一体性をサポートした。また、ロシア連邦によるクリミア半島の一時的占領を認めず、ロシアに対する制裁を導入した。
さらに、G7でウクライナについての議論をリードし、ロシアを侵略国とする国連総会決議を支援した。具体的には、日本は「ウクライナの領土一体性」に関する2014年3月27日付の国連総会決議、「クリミア自治共和国とセヴァストポリ市(ウクライナ)における人権状況」に関する2016年12月19日付の決議、および2017年12月19日付の改正バージョンを共同提案国として支持した。
ウクライナへの侵攻が始まって以来、日本はウクライナに対し、民主主義の強化、国内改革の推進、クリミア半島、ドネツク州、ルハーンシク州 からの国内難民への支援、インフラの改善、産業施設の近代化などを目的として、金融、技術、人道的支援を積極的に行ってきた。2014年以降、日本政府はウクライナに対してクレジットを含めて約18億ドルの支援を提供した。
首脳会談に関しては、2015年に安倍首相は初めて日本の総理大臣としてウクライナを訪問し、2016年にウクライナのポロシェンコ大統領は日本訪問を行った。
両国に大きな意味を持つ日本のウクライナ支援
こういった日本のウクライナへの包括的な支援は、とても大切なものだ。まずウクライナにとって、現代の大国の一つである日本の支援を受けるのは、クリミア半島の返還、経済的な回復およびウクライナ東部での人道危機の予防にきわめて大きな意味がある。
一方、日本にとっては、ウクライナを支援することに、どうような意義があるのだろう。第一に、それは日本の新しい政策の成果であると言えよう。
第二次世界大戦後、日米同盟が成立し、日本は安全保障の対米依存、経済通商の重視および軽軍備の要素からなる吉田ドクトリンを導入した。それは日本の国際社会への復帰と経済発展に大きく貢献したが、国際舞台における日本の存在感の薄さに繋がった。1957年、日本は「国際連合中心」「自由主義諸国との協調」および「アジアの一員としての立場の堅持」という外交の三原則を打ち出した。だが、実際には冷戦が終わるまで、「自由主義諸国との協調」とは対米協調であり、対米関係は日本外交のもっとも大事な課題となっていた。
ソ連の解体によって二極システムが崩壊した結果、日本外交の地平が拡大し、日本の首脳は新たな外交の戦略を立てるようになった。そこで、安倍首相がはたした重要な役割を強調したい。2006年に「自由と繁栄の弧」、2013年に「積極的平和主義」というコンセプトが発表され、日本が国際平和に積極的に関与する政策の実現を図るようになった。そうした考え方を背景にして、新たな戦略が実現した結果としてウクライナ支援につながり、日本がグローバル・パワーとしての地位を再確認する機会となったといえよう。
第二に、日本はウクライナとの関係の強化によって、ポスト・ソヴィエト地域における政治的なプロセスの理解をより一層深めることになるだろう。関係強化を通じて、ウクライナのヨーロッパとの長い歴史的関係性が明らかになり、日本はウクライナを旧ソ連ではなく、東欧国として扱うことになるに違いない。最近の「深化した包括的自由貿易協定を含むウクライナとEUとの連合協定」や「ウクライナ人のヨーロッパへ行く際の短期滞在ビザの撤廃」は、それに大きく貢献している。
また、ウクライナを含めたポスト・ソヴィエト地域における民主化を支援することで、日本は地域全体を安定させる大事な役割を果たしている。途上国における民主主義の定着で中心的な役割を担っているのは、政府開発援助である。
2017年に日本の政府開発援助の実施機関である日本国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長は、初めてジョージア、アルメニアとウクライナを訪問し、ジョージアおよびウクライナにJICAの支所が開設されることになった。ポスト・ソヴィエト地域における日本の国家機関のインフラの拡大および民主化の支援、またウクライナとの関係のさらなる強化は、日本の国益にかない、国際社会においてバランスの取れた外交政策を行う能力を確保するだろう。
第三に、ロシアによるクリミア半島の併合を受けて、日本は対ロシア制裁を導入し、ウクライナの領土一体性および主権を支援することで、現在の国際秩序を維持した。領土問題を抱えている日本にとっては、武力行使による国境変更を認めないという国際的な立場を成立させることはとても重要だと言えよう。
グローバルな文脈における二国間関係
ウクライナと日本との関係をグローバルな文脈の立場から見ると、以下の意味合いがある。第一に、両国は法の支配、言論の自由、市場経済といった民主主義的な価値観を共有している。とくに、ロシアによるクリミア半島の一時的占領を、法の支配に基づく国際秩序への挑戦とし、その平和的解決に積極的に努力している。
第二に、原発事故を経験したウクライナと日本は(また、日本の場合、原爆の経験もあり)、緊密に協力しながら「核なき世界」を達成しようとしている。そして、原発事故を処理するという経験を持っているこの二つの国は、原発事故へのその後の対応を推進するための協力を促進している。
第三に、ウクライナと日本はさまざまな国際問題に取り組んでいる。たとえば、ウクライナ外務省は北朝鮮による核実験およびミサイル発射につき、北朝鮮に対する強い非難をいち早く表明し、両国が緊密に連携していくことで一致している。また、ウクライナと日本は、国連安保理改革の実現のため全力を尽くしている。
このような理由から、ともに普遍的価値観を重視している日本とウクライナは、両国の国益にもとづく二国間関係の安定的な発展およびさらなる強化に関心がある。政治的な場面での協力を維持しながら、投資、インフラ、農業、省エネ、文化、国際協力など分野での交流がいっそう積極的になり、ウクライナと日本は戦略的なパートナーシップに向かうことになると期待される。それは世界平和の強化にポジティブな影響があり、ヨーロッパとアジア太平洋地域との接近および民族間の国際理解の深化に繋がるだろう。





最終編集日時:2022年3月18日 1時30分

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◎ 必読の書

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◎ 拙著です

○ 『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』



内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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片桐勇治(政治評論家) さん
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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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