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裸の王様?
[日本の政治]
2016年4月22日 23時34分の記事

中国の古典に貞観政要(じょうがんせいよう)というものがあります。古来から帝王学の教科書と言われ、マキャベリの『君主論』とならぶ帝王学の最高峰です。古来日本でもよく読まれ、徳川家康や北条政子が愛読したと言われています。

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貞観政要は、唐の基礎を確立した太宗の言行録ですが、太宗死後、史官の呉競が再び太宗のような立派な政治を望み、太宗の言行を編纂して中宗に献じたものです。この貞観政要の中で諫義太夫(かんぎたゆう)というものが出てきます。これは皇帝に過失を指摘したり、アドバイスをしたりと諫言を直言する役割の諫臣のことです。政治を行うために諫言、苦言、直言を傍らに置くということですが、このような存在をシステムとして意識的に置くことによって政治のバランスをとり、政治に柔軟性を持たせ安定させ、建設的な政治を実現させるということです。人間の能力には限界がありますし、為政者が常に正しいわけでもありません。そして往々にして権力者は自己肯定に走りがちになります。特に権力への執着が強ければ、その傾向が強まります。そして、何よりも間違った施政や権力者が自己肯定に走っていることが放置されれば、社会は大変な状況に陥っていくわけです。そして、その状況は確実にその権力者を失墜させます。このようなことを抑止するために諫義太夫という存在を作り上げたわけです。
太宗はこの諫義太夫を宿敵の右腕であった者を登用します。そのことが貞観政要に書かれているわけですが、このようなことを当たり前のようにする太宗の懐の広さ、器の大きさが、唐の基礎を造り上げる政治を可能としたのでしょう。善政というものには必ずしっかりとした理由があります。

振り返って現在
振り返って現在のわが国の政治を見ると諫義太夫は存在するのでしょうか。安倍首相の意を汲んで発言してる政治家はとても多く見られます。自民党においては誰も安倍首相に異を唱えません。公明党も反対しているようで、ほとんど存在感を出せていません。また、野党も与党をチェックするのではなく、野党を攻撃するという自らの存在意義を否定する政党まであります。また一方でネットには盲目的に安倍政権を擁護する言葉が見られます。マスコミもしっかりとした批判をしていないように思います。こう見ると与党や社会を見渡して安倍政権応援団が非常に目立ちます。諫義太夫や諫臣は減り、いなくなっています。このような状況は政治においては非常に危機的な状況で、社会に大きな災いを招く可能性が大きくなっているものと考えます。そして、必然、政権の寿命も短くなるでしょうし、失墜後、諫臣なき政治集団は世間からは見捨てられていくのは必定でしょう。

「裸の王様?」(2016年4月24日)へ続く。

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片桐勇治(政治評論家) さん
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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