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安倍政権の外交政策とイスラム国邦人人質殺害事件
 
2015年2月3日 3時29分の記事

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 イスラム国による邦人2人の人質事件は、最悪の結果となりました。大変に痛ましい結果であり、大変残念に思います。内戦状態の地域に足を踏み入れるリスクをお二人が承知であっても、望まれる結果でなかったことは当然のことだと思います。

 ただ、現状、この事件は、邦人2人の人質事件から国家の外交・安全保障の問題に発展しています。それは国家・国民の命運にかかわる問題ですので、個人への感傷を排除して考えなくてはならない状況であると考えます。

 今回の邦人人質殺害事件では、日本政府のインテリジェンスに大きな問題があることが露呈しました。報道されている政府の対応を見ていても手も足も出ないという状況が感じられ、それは2013年1月に発生したアルジェリア人質事件の時とさほど変わらないレベルと思われるものでした。

 インテリジェンスは外交・安全保障においては要です。その要がなければ、邦人救出ももちろんですが、邦人が被害にあうことを防ぐという根本的な問題をもカバーできません。そういうインテリジェンスのなさが、1月の安部首相の中東歴訪にもあるように私は思います。


○特殊部隊など早すぎる
 2人の邦人を救出できなかったことで、自衛隊などに特殊部隊を創るべきという議論があります。しかし、インテリジェンスなき状態での部隊など、目隠しをして歩くようなもので、自衛官を単に危険にさらし、恐らく命を消耗させるだけになるでしょう。極めて無責任な議論だと思います。インテリジェンス育成には、長い年月がかかります。それは一朝一夕でできるものではなく、今の日本の状況ではまずこれから20年はかかるだろうことと思います。日本はまずインテリジェンスの育成とその管理体制をしっかり構築すべきで、それが出来ない中で部隊の派遣などは単なる無謀でしかありません。インテリジェンスなくしてどうやって派遣部隊は作戦を立てるのでしょうか?

 インテリジェンスなき外交防衛は、翼がない飛行機か、ブレーキのない自動車と同じで、単に威勢がいいだけでリスクを増やすだけの児戯に等しいものだと思います。まず、今の日本はこのインテリジェンスの整備から始めることが先決でしょう。特殊部隊などの話は日本にとっては少なくとも10年は早い話です。


○感情的発言が多すぎる
 2月1日の朝、人質であった後藤さんが殺害されたことが明らかになって、事件としては決着しました。しかし、その後の安部首相やマスメディアの論調を見ると大変に感情的な言論が目立ちます。この種の事件においては、感情的になったほうが必ず負けます。感情的になれば判断を誤りますし、民心が動揺します。安部首相の反応は、一国の首相が動揺していると外からは見られるだけでしょう。それは付け入る隙を与えることになります。同時に、テレビなどのマスメディアで感情的な情報が流れることは、社会を不安定化させ、予想外で様々な問題を発生させます。これもまた付け入る隙を与えることになります。相手がテロリストというならなおさらでしょう。これもまたインテリジェンスなき我が国ということだと私には思えます。大変に危険なことだと思います。


○イスラム国は日本を引きずり込むことを意図しているのは明らか
 日本の対イスラム国姿勢を硬化させないためなら、イスラム国は後藤さんを開放したほうが理にかなっていたはずです。そうなれば日米や日欧の対イスラム国への対応に温度差が生じ、関係が分断されます。敵をまず分断するという兵法の基礎です。しかし、そうせずに後藤さんを殺害し、尚且つこれからは日本人全体をターゲットにすると声明を出しています。それは、そうすることに利を見出しているからで、明らかに日本を引きずり込もうとしているわけです。ここにトラップがあるわけです。

 9.11を契機に米国はアフガニスタンとイラクに介入し、そして疲弊し、ボロボロになりました。イスラム国とアルカイダは今や対立していると言われていますが、イスラム国の元はアルカイダです。そして、現状のイスラム国構成員にサダム・フセインのバース党員が多いといわれています。このような現状を考えれば、9.11で中東に引きずり込まれた米国こそが敗北したとも言えます。

 そして、それがそもそもアルカイダなどの戦略ではなかったかと思います。力がない彼らにとっては世界をまたにかけたゲリラ戦を展開する必要があるわけです。それに米国は引き込まれたわけです。このような様相はベトナム戦争にもありました。泥沼に引きこむことが力なきものが闘う術であることは忘れるべきではないでしょう。


○日本のタカ派右翼政権はコントロールしやすい
 これと同じように、イスラム国が日本を引きずり込むという目的は、日本をもその戦場に組み込み、日本を消耗戦・疲弊戦のゲリラ戦に引きずり込むことであると思います。これには乗るべきではないの当然です。しかし、現在の政権の言葉を聞くと、「テロとの闘い」を連呼して、正に思う壺にまっしぐらの状態です。恐らく、日本のタカ派右翼政権は非常に操りやすいと評価されているものと考えます。このようなトラップを考えて中東への関与を考えるのが、今後の日本が取るべき方向性であると考えます。しかし、今の政権の反応はあまりに直情的すぎるものと思います。これもインテリジェンスの欠如故でしょう。


○現政権は外交・安全保障を扱うにはあまりにも慎重さに欠けている
 1月17日、岸田外相が訪問先のインドで、インド-中国間の領土問題に干渉し、インドを支持した問題を、私は先日、指摘しました。これは外交上行き過ぎた行為であり、南アジアや日本の安全保障上の不安定さを無闇にエスカレートさせるものです。インドはその後、中国、ロシアと外相会談などをしてこの発言で何かが起こることは今のところありませんが、しかし、それはえって岸田発言で日本が孤立化しているとも言えるのです。

 この岸田発言と同時期になされた安部首相の中東でのアクションが、今回の人質事件というリアクションを生じさせ、結果は最悪となりました。そして、さらに、人質事件が発生した同日の1月20日、岸田外相は今度はベルギーでロシアのクリミアについての対応を北方領土と絡めて批判しています。領土問題と宗教上の問題は相手国を刺激するものであるのは当然です。それを行く先々で外相が発言するというのは異常事態で、正気とはやはり思えません。軽率も良いところでしょう。

 今回の人質事件で人質になったお二人についての政府対策室は、昨年の11月中までにできていたことを政府は認めています。その時は、誰によってお二人が被害を受けているかはわからなかったかもしれません。しかし、今年の1月の首相中東歴訪では相当な慎重さが要求されるのは、わかりきったことだったでしょう。フランスでの襲撃事件以来、欧州・中東が緊張化している中ではなおさらです。そのくらいの慎重さを日本政府はもってもらわないと困ると思います。そして、それでいて今回の人質事件の結末のように解決する手段を日本政府・現政権は何も持たなかったわけです。これは憲法のせいではなく、現政権の慎重さの欠如と無鉄砲さが原因です。現状認識と自らの力を認識していない証拠で、彼を知らず我を知らない稚拙な外交です。


○今回の人質事件は、1月の首相、外相の訪問先での発言とセットで考えるべき
 この1月の首相、外相のアクションの結果は、まず外相のアクションによって日本の隣国であるロシア、中国を敵に回すがごとく硬化させ、故にその両国の影響が強い朝鮮半島をも日本に敵対させる構図を作り出しています。日本にとっては正に三正面と対峙する最悪の状況を、米国の軍事プレゼンスが低下している中でつくりだしました。そして、その中でテロとの闘いということを言っているわけで、私からしたら正気の沙汰ではない、かなり無謀な状況を作り出していると思います。正にインテリジェンスがない単なる無鉄砲といえるのが現政権の外交防衛政策です。

 これはかなり危険な状況で、これは明らかに責任問題でしょう。しかし、自民党からは何の批判も出ないという状況で、自民党議員がこの危ない状況に何も感じないことを非常に危惧します。


○オリンピックを本当にやる気があるのか
 1月の安部首相の中東歴訪での発言と今回の人質事件で、2020年の東京オリンピックに対するテロの可能性が高まったとメディアで言及する人がいます。確かにそのとおりでしょう。しかし、それだけではなく、岸田外相のアクションから考えれば、2020年のオリンピックに中国とロシアがボイコットする可能性をも作り出しています。そういうことを岸田外相は考えていなかったのでしょうか? 非常に慎重さに欠けていると思います。極めて現政権のやっていることはちぐはぐです。世紀の祭典を成功裏に終わらせ、日本の外交にとってプラスになるようにするには大変な慎重さが必要ですが、そのようなことを全く感じさせないどころか、失敗させようとしているとしか思えません。もしくは、ただやりたいようにやっているだけで、相手のリアクションへの考慮がない無鉄砲な外交と言わざるをえないでしょう。

 そしてテロの可能性が日本や日本人に対して高まっている一方で、どうして外国人労働者の受け入れ拡大などということが平然と言われるのか全くわかりません。政権中枢が迷走していると正直に思います。現政権は外交・安全保障を扱うにはあまりにも慎重さに欠け、緊張感にも欠けているものと考えます。極めて危険なことだと思います。


 『アルゴ』という映画があります。1979年にイランで発生したアメリカ大使館占拠事件について描いたのものですが、このアメリカ大使館占拠事件は、ホメイニ革命を目前に出国したパーレビ国王を受け入れるという米国のアクションによって、イランのアメリカ大使館を占拠するというリアクションを招きました。映画の中では、パーレビ国王を受けれたことは間違いだったと米国政府の職員がいう場面があります。外交というのは相手がいるものであって、アクションがあればリアクションがあり、そのリアクションを考えなければならないのは当たり前のことでしょう。安倍政権の外交防衛政策には相手の反応を考えない極めて島国的な思考があるように思います。

 シリアとイラクという内戦状態の地で、昨年、拘束された2名の日本人は、今年1月の安倍首相の中東諸国訪問時でのアクションによって、イスラム国の人質の取引材料にされるというリアクションに至りました。残念ながら拘束された2名の人質は殺害され、さらにターゲットは日本人全体というものに広がりました。安部首相のアクションは、その前と後では様相を異にするリアクションを招いています。そして、安部首相は自らのアクションに対するリアクションへ対応することはできませんでした。

 さらに同時期の岸田外相のアクションは、日本に近接する国々の態度を無闇に硬化させ、日本の安全保障を非常に不安定にしています。そのような中でテロとの闘いというのは極めて無謀なことでしょう。現政権の外交・安全保障は非常に無茶なものだと思います。そして、この方向性と状況には日本は対応できないものと考えます。むしろ、自滅への道を歩み始めたと私は思います。

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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