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《日本の政治》日本の民主主義政治の最大の問題点を示したスガ退陣 その2 (1)
[日本の政治]
2021年9月4日 23時28分の記事

◎ 世襲オーナー政党の非力な使用人スガ氏の実像
以下の西日本新聞の記事では、政権支持率低下などで追い込まれたスガ氏が、総裁選を乗り切るために打った手が功を奏さず、退陣に追い込まれたことが書かれています。そのスガ氏が打った手とは、アベ・麻生両氏(以下、2A)と折り合いが悪い幹事長の二階氏を交替させて、2Aの歓心を買って総裁選を乗り切り延命することです。しかし、結局、スガ氏はその2Aに三行半を突きつけられて、あえなく退陣表明。この記事には、そのスガ氏を『人事権も解散権も封じられた裸の王様』と表現する発言が出てきますが、その表現こそが2Aという世襲オーナーの前では使用人同然のスガ氏の非力さを物語っています。
この記事は、麻生氏の地元紙である西日本新聞のもので、麻生氏の発言を中心に構成されています。ですので、情報としての確度はかなり高いものと考えます。そして、だからこそ、この記事は、昨日の本ブログ「《日本の政治》日本の民主主義政治の最大の問題点を示したスガ退陣」(2021年9月3日)で指摘したように、スガ退陣は日本の民主主義政治の最大の問題点を示し、同時にそれは自民党という世襲オーナー政党での非力な使用人スガ氏の実像を示すものと考えます。それでは、この記事にはどんなことが書かれているかを少し観てみましょう。

「『お前と一緒に沈められねえだろ』退陣表明前夜、“2A”から首相に三くだり半」(2021年9月4日 西日本新聞)

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まず、この記事がポイントにしていることは、見出しにあるように『“2A”から首相に三くだり半』ということで、それがスガ退陣表明の決め手となったということです。2Aとは上述のように麻生・アベ両氏のことで、自民党の世襲オーナーですが、この2Aが2Fと呼ばれる二階氏と対立していると言われてきました。
昨年、アベ氏の突然の退陣からスガ氏の首相就任においては、2Aと2Fの支持があってスガ政権が成立したわけです。そのスガ政権の支持基盤において、二階氏はスガ氏の後ろ盾、しかしその二階氏はアベ・麻生両氏と対立するという構図があったわけです。これは、スガ・二階両氏という関係だけではスガ政権は成立し得ず、どうしても政権維持のために2Aの支持が必要という非常に微妙な実態が、ずっとスガ政権にはつきまとってきたことを示しています。
そして今年になり、自民党総裁選と衆議院総選挙が間近になってきたこの1ヶ月、スガ政権の内閣支持率は20%台と低迷、衆議院総選挙前の自民党総裁選をスガ氏が乗り切ることに陰りがでてきたという事情が、今回のスガ氏の右往左往と退陣表明においてあったわけです。
ですから、スガ氏は総裁選を乗り切るために、2Aと対立する二階幹事長を交替させ、2Aの歓心を買って、支持基盤を2Aに乗り換える、一方で総裁選出馬の可能性がある岸田氏、下村氏、河野氏を出馬させない、もしくは取り込んで、総裁選を無風にしようとした考えたと考えます。そう言う中に、小泉氏などのキーマンの取り込みもあったと考えます。そのことを西日本新聞の記事の以下の部分が現わしています。


首相は安倍、麻生両氏と折り合いが悪い二階氏を幹事長から外すことで歓心を買い、さらに知名度の高い河野太郎行政改革担当相や小泉氏らを要職に起用することで刷新感を演出するはずだった。


アベ氏にとても近い下村氏の総裁選出馬断念の経緯が、以下のように報じられています。


関係者によりますと、菅総理大臣は「総裁選挙に立候補するなら、政務調査会長の職を続けるのは難しいのではないか」と指摘したということです。
このあと下村氏は、自身が所属する細田派の会長を務める細田元幹事長や、安倍前総理大臣と相次いで、対応を協議しました。

「自民党総裁選 下村政調会長 立候補を断念」(2021年8月30日 NHK)


スガ氏が下村氏に総裁選出馬断念を詰め寄り、下村氏がそれを派閥の細田氏、アベ氏にはかって、下村氏は出馬断念表明に至っています。実はここまではスガ氏はアベ氏側に対して強く出ています。その理由は、一般的な見方とは異なり横浜市長選の結果からだと考えますが、この下村氏の出馬断念でスガ氏は政権基盤の基軸を2Aに移せると考えて、そのバーターとして二階幹事長交代ということが8月31日になって報じられることになるわけです。以下の記事には、スガ氏は二階幹事長交代を二階氏に告げたのは、下村氏が出馬を断念した30日とあります。

「菅首相 二階幹事長を交代させる意向固める 二階氏も受け入れ」(2021年8月31日 NHK)

この幹事長交代で、二階幹事長交代論を言っていた出馬意向の岸田氏の存在を消し、2Aの支持を取り付けることができるとスガ氏は考えたと考えます。
こういうことが、この西日本新聞の記事で言われるスガ氏が2Aの歓心を買うと言うことなのです。そして、このことを基軸として、スガ氏は、下村氏、河野氏、岸田氏の出馬を止めて総裁選を無風にして、その流れが変わる前に9月中旬の衆議院総選挙を画策したと考えます。
しかし、このスガ氏の戦略は、この西日本新聞の記事の以下のように、麻生氏に一喝され、アベ氏には三行半を突きつけられてしまい、あえなくジ・エンドということになったわけです。


2日夜。菅義偉首相は、自民党役員人事の一任を取り付けるため、麻生太郎副総理兼財務相と接触した。
同じ神奈川県選出で信頼する麻生派の河野太郎行政改革担当相を要職に起用できないか―。だが、麻生氏は声を荒らげた。「おまえと一緒に、河野の将来まで沈めるわけにいかねえだろ」
首相は説得を試みたが、麻生氏は最後まで首を縦に振らなかった。
もう1人、首相の後ろ盾である安倍晋三前首相にも党人事への協力を求めたが“三くだり半”を突き付けられた。首相が「孤立」した瞬間だった。


私がもし麻生氏からこんなことを言われたらチビっちゃいますね。
いずれにせよ、この一連のスガ氏の動きを観ても、自民党という世襲オーナー政党での非力な使用人スガ氏の実像が見えてきますが、さらにこの西日本新聞の以下の部分はそれを非常に鮮明にさせます。

「《日本の政治》日本の民主主義政治の最大の問題点を示したスガ退陣 その2 (2)」(2021年9月5日)へ続く。

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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