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首相の年頭所感に見る違和感
[日本の政治]
2016年1月7日 23時47分の記事

安倍首相の年頭所感や新年の記者会見について報道されています。それらでは「挑戦」という言葉が多用されていますが、その言語感覚は異様な感じがするほどです。また、内容もあまり意味があるようには見えず、実質がない手詰まり感を感じます。

「安倍首相 年頭所感 “挑戦する1年 世界へ指導力”」(2016年1月1日 NHK)

「安倍内閣総理大臣 平成28年 年頭所感」(2016年1月1日 首相官邸)

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果たして首相の年頭所感がこのレベルで良いのか、非常に疑問に思うことが多くあります。
一読して考えることは、まず実質がないと言うことです。また、労働者の所得を増やすと言うことをこれまで言ってきているにもかかわらず、所感においては一言も触れられていません。そこにはかなりの落差を感じます。財界の皆様が一同に声をそろえてこのことを言っているほど、このことは現在において最も重要なことですが、制度を変えることなどの話はもとより、一切、一言も触れていないというのは、まさにやる気が無いと言うことでしょう。したがって、国造りとかそんな発想はそもそも無いと言うことなのです。
この所感を読むと、言葉をろうしても現実は変えることができないという感覚を持ちます。言ってみれば、先の大戦で、日本の至る所で空襲がされているのに、勝った勝ったと言って一億火の玉になれと号令をかけていた状況と同じに見えます。しかし、多くの人はその欺瞞を否が応でも感じているでしょうし、この傾向はこれから強くなっていく一方でしょう。
むしろ、現在の日本は苦しいと言う方向性でこの所感をまとめた方が共感を得たのではないかと思います。しかし、状況が悪いと言ってしまうとこれまでの3年間は失敗と言うことになるので、それを言うことができなかったというのが本質でしょう。だから、「挑戦」という言葉を連呼して国民の視点をほかに変えざるを得なかったと分析します。そして、所感などで「挑戦」という言葉が異様なまでに多くなっているのは、そのまま、政権や首相の焦燥感を示していることと分析します。

これまでの3年間は何をしていたのか?
挑戦、挑戦と言っていますが、第二次安倍政権が発足してからのこの3年間、一体、何をやってきたのでしょうか? 実はこれこそこの所感における最大の問題点です。ただし、実際はこの3年間、十分に「挑戦」をしてきたわけです。アベノミクスがそのよい例でしょう。しかし実質が上がらなかった。実質が上がっていたら、そのことをもっと全面に押し出していたことでしょう。
マクロ経済予測では、アベノミクスのようなマクロ経済政策を打ち出してから、遅くともだいたい2年から2年半で効果が出てきます。既に3年をすぎていますから、効果が出ていないのではなく、どこかで大きな失敗をしているということなのです。ここが実は最大の問題なわけです。このことは、極めて深刻な失敗か、経済にプラスにならない施策が多すぎたということを意味しています。それが「何か」と言うことが、現政権にとっての最大の弱点のはずです。それは簡単に言えば、お金の使い方です。何にこの3年間、お金を使ってきたかが問題なのです。だから、国民の所得向上は言えないのです。その余裕が既に無くなっていると考えて良いと考えます。
このように3年前から始まった現政権の「挑戦」を検証することが必要になっているのが現在です。特に今年は選挙イヤーですから、このことは当然、民主主義の国において政治的に最大級の論点です。この検証無くてして、前へ進めるはずもありません。マクロ経済政策をしてお金を出す政策を行ってきたにもかかわらず、成果が出ていない状況で、さらに同じような政策をすれば将来、さらに大きな損失を招くことになります。政権発足3年となり、政権の政策の検証期に入っているにもかかわらず、「挑戦」や目標を語り、国民の目を現実からそらすことは、完全に空手形を切っているに等しいものです。この「挑戦」という言葉は、非常に無責任なものに見えます。

原油安を利用できなかった
現在、原油が大きく下がっていますが、既にこのトレンドは1年半以上続いていて、ピークから三分の一以下の値になっています。1年前には、この原油安を経済にプラスに結びつける政策を打つことができたはずですが、全く何もしていません。原油安になれば、そのことを説明して、これを好機に変えると国民に言えたはずです。それをしなかったのは、国民や国民経済に目が向いていなかったからでしょう。どこに向いていたのか。それが問題であり、このことはGPIF問題でも同じです。一体何をしてきたのか? 実は現政権は「実質的な挑戦」をして来なかったと思いますし、機動的にも動いてこなかったと考えます。

新しい国造りに挑戦?
安倍首相の年頭記者会見では、「挑戦」という言葉を24回使用したと報道されています。その理由は上記の通りと考えますが、この会見の中で「新しい国造りへの新しい挑戦を始める」と首相が述べたとあります。これまで首相は国造りをして来なかったのでしょうか? もちろん、そうだからこそ経済などでさまざまな問題が生じているのでしょうし、社会基盤が脆弱になっているのでしょう。そして、何より国造りに新しいも古いもありません。いにしえから為政者は国造りと言うことを常に考え、行ってきたわけですから、首相として就任したときから国造りを始めていなくてはなりません。だから、新しい国造りという言葉自体は非常に意味が無い空虚なのものなのです。この3年間の国造りは意味が無いと自ら言っているに等しいものです。国とは「人」のことです。その「人」が政治においてどのようにケアされているか、安寧であるか、それが国造りです。そこに新しいも古いもありません。この言葉は政治哲学がないことを如術に示しているものと考えます。

「『本年は挑戦・挑戦…』首相、挑戦24連発」(2016年1月4日 読売新聞)

GPIF問題
昨年、株価が大きく下落した結果、株式投資への比率を増大させていたGPIFが8兆円以上の損失を計上していたことが報道されました。現状、そのときと同じ株価水準に既になっています。問題は極めて深刻なのではないでしょうか? そして、GPIFにおいて株式投資などへの比率を上げたのはまさに安倍政権の「挑戦」ではなかったのでしょうか? それが、現状、成果どころか莫大な損失を計上しているのではないのでしょうか。それならそもそもの「挑戦」が無謀であったということでしょう。したがって、現状、本当なら挑戦などと言っている場合ではなく、責任の問題が問われる状況のはずです。この上にさらに「挑戦」などあり得るはずもないことと考えます。

この1年、日本が世界の中心?
所感の中で、日本は今年から国連安全保障理事会の非常任理事国になり、サミットが日本で行われるなどの外交日程があるので、「日本が、まさに世界の中心で輝く一年であります」と首相は述べていますが、これはいくら何でも意味がなさ過ぎです。今まで日本は国連安保理の理事国になったことはないのでしょうか? もちろん、あります。サミットが開かれるから世界の中心というなら、来年はイタリアが世界の中心と言うことなのでしょうか? 毎年、各国の持ち回りなのではないのでしょうか。
正直、この部分の実質的な意味は全くありません。それは、安倍政権として外交で世界的に中心となる方向を実は出せていないので、このような表現しかできないのでしょう。ドイツのメルケル首相のように世界の顔として評価されるものが現政権には全くありません。そういう落差は隠しようがありません。
個人的な意気込みとして上記のように首相ご本人が思っているというだけのことで、世界の外交専門家が、所感に書かれていることで日本を世界の中心とは間違っても考えないでしょう。

少子高齢化という構造的な課題という表現
また、所感の中で、「『少子高齢化』という構造的な課題」という表現が出てきます。しかし、この表現は大きな問題があります。実際のところ、高齢化は問題ではありません。高齢化はむしろ政治や社会がうまくいっていると言うことであり、評価すべきことです。そういう良き社会である一方で、少子化が進み高齢者を支えきれいないから問題であるわけです。問題点は少子高齢化ではなく、少子化にあるのです。このような認識があれば、表現は違ったものになったでしょうが、このようになったのは、「少子高齢化」というフレーズが当たり前のように使われてきたので、実はこの問題に対して深く考えてきていないためでしょう。そして、このことの本質は、実はこの所感の文章はあまり考えを掘り下げているものではないと言うことです。それか、現政権の認識レベルを端的に示すものと言っても良いでしょう。
少子高齢化という問題定義は、主に年金の問題です。それならGPIFの問題は極めて大きな問題なのではないでしょうか? このことが第一に語られなくてはならないものと考えます。

国民の多くは挑戦ではなく安定化を求めている
政治における最大の目標は国民の生活の安寧と平和です。これ以外にありません。
政治において挑戦などと言うことは眼目ではないのです。上記のことを実現させることがすべてなのです。それが為政者の使命です。
現状、スタグフレーションの傾向が強くなり、国民の可処分所得は減少しています。これだけの国民の困窮を、政治が「挑戦」という言葉を連呼して、現実から視点をずらしたり、国民に挑戦を呼びかけるなどのことは政治としては大きな間違い、責任逃れです。現状の政治においてのポイントは、言うまでも無く挑戦ではなく、これらの国民が直面している問題を解決することです。
社会や生活に安定や安定感が実感できてこそ、国民は前を向いて歩み始めます。このような状態をつくるのが国の為政者、リーダーであって空を切るような言葉を連呼することではありません。
政治においては、税率を1%あげただけで経済は大きく変わります。それは、政策の微妙な変化でも国民の生活を大きく変えると言うことであり、人の人生へも間違いなく影響すると言うことなのです。国の政治、政策というのは何でもそのような重大さをもっています。間違った医薬品が出回れば人の命に関わります。労働時間や賃金に関してでも同じです。その他、すべての政策は人の命に関わるのです。だから、大変に重みのあることであり、人の命の関わることは何も国防だけではないのです。違いは軍事は明示的に人の命を奪うというはっきりしたものですが、その他はそうではないというだけのことなのです。
だから挑戦などと軽々しく言うのはこの政治の重みを何も考えていないと言うことなのです。安定化が第一なのです。このように政治の重みを考えていないことが現政権の本質と考えます。

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○ 『餓死した英霊たち』

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先の大戦も、現在も日本国民を大切にしない政治。この2冊がそのことを雄弁に物語ります。

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◎ 拙著です

○ 『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』



内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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