作られた構図 その2 選択肢のマジック | |
[日本の政治] | |
2017年7月2日 23時59分の記事 | |
選挙となるとクローズアップされるのが、候補者のプロフィールや政党、政策、そして時の風などです。しかし、選挙においてもう一つ非常に重要なポイントとしてあるのが“選択肢”です。このことを今日は書きましょう。今回は本ブログ「作られた構図」(2017年7月1日)の続編・補足です。
東京都の区議会議員選挙や市議会議員選挙は、選出される定員が非常に多い大選挙区で、候補者数も極めて多くなります。例えば2年前(2015年)の大田区区議会議員選挙では、定員50名で、候補者数がなんと65人、落選する人の方が少ない選挙でした。このような選挙の場合、ポスターが貼られる公営掲示板は巨大なものになります。そして、その巨大な掲示板を前にして、有権者は誰に票を投じようかと悩むわけです。この傾向は浮動層において顕著になりますが、だからこそ、掲示板に貼られたポスターの出来というものが、ものを言う場合が多くあります。 このような選挙の場合、選択肢が極めて多いので、浮動層の票は、たとえ○○党には入れたくないという強烈な風が吹いていても、分散されていきます。大選挙区の場合、“風”がおきにくいのですが、浮動票が分散される結果、固定票や組織票が十分にある候補者がどうしても上位にランクされて当選していきます。 このような大選挙区の反対が、定員1名、候補者2名というような小選挙区です。上記の区議会議員選挙と全く反対なのが、衆議院の小選挙区や参議院議員選挙での都道府県単位の選挙区です。参議院選挙の地方の選挙区では、区域が全県に及び、定員1名、候補者が2名ということがよくあります。このような選挙の場合、浮動票は限られた選択肢のどちらかに行きます。よって、候補者として立てば、知名度がなくとも数十万票を獲得します。それは候補者云々(うんぬん)ではなく、選択肢が限られているから生じる現象なのです。限られた選択肢で行われるとこのようなことがおきますが、これは商品の購買行動でも同じでしょう。 このような選挙では、例え候補者が無名でも、対立候補に逆風が吹いたり、自らの所属政党に風が吹いたりと、“運が良ければ”、楽な選挙が戦え、当選することがあります。そうなるとその当選した無名の候補者は、『私には何十万票もの投票があり、議員に当選した』と自分自身への思いが膨れあがっていきます。しかし、これを“勘違い”と呼びます。この候補者が、仮に選出される定員が複数で、選択肢が多数ある選挙に、同じ選挙区域で戦っても、当選したときの10%も得票できないものです。このようなことが生じるのは、何よりも選挙において“選択肢”としての枠組みに入っているか、入っていないかという極めて重要なポイントがあるからです。 選挙において、この選択肢の枠組みに入るか、入らないかと言うよい例は、2014年の東京都知事選挙と考えます。この選挙では、得票順に並べると舛添要一氏、宇都宮健児氏、細川護煕氏、田母神俊雄氏の候補者が出馬しましたが、他に12名の候補者がいます。この選挙で特徴と言えるのは、全16名の候補者のうち、上記4名が主要候補者としてメディアで取り上げられたことです。つまり選択肢としての枠組みにこの4名が入ったということです。このことで最もその恩恵にあずかったのが、田母神氏と考えます。もし、この選択肢の枠組みに入っていなければ、順位は変わらなくとも恐らく相当に票は減っていたものと考えます。その数は、田母神氏(約61万票)の後の家入氏(約8万8千票)に近かったものと考えます。 このように選択肢の枠組みに入るか、入らないかで得票数に大きな差が出ることは多々あります。そのような選挙の場合、選択肢の枠組みにおいて最下位の候補者の票数とその次の候補者との票数が極端に違ってきます。場合によっては8対1とか10対1というようなものになります。東京都知事選挙の場合は、常にこの傾向があります。 そうなると、選挙戦で極めて重要になるのが、この選択肢の枠組み、特にメディアによって作られたこの枠組みに入るか、入らないかということになります。そして、それが選挙戦の命運を決めるわけです。まさに公示日、告示日前に、最重要な選挙活動は実質、スタートしているのです。こういう意味でもメディアの選挙報道というのは、極めて責任が重いものなのです。 さて、「作られた構図」(2017年7月1日)では、都議会議員選挙でメディアが自民党と都民ファーストの会という枠組みを作ったことを指摘しました。そのメディアの動きをリテラでは証拠を提示してテレビ朝日と指摘し、私は日本経済新聞の記事中に見いだしました。このような枠組みを作ると、当然、都民の選択肢は選挙前から限定されていきます。そして、その枠組みに入らない民進党、共産党、社会党などへの票は確実に減ります。 ただ、そういう中で、今回、この三党はかなり善戦したと言えるでしょう。明らかに票の流れにおいて、これまでにない動きとなっています。この都議会選挙での最大のポイントはここです。 都民ファーストの会が国政への進出と言うことが言われていますが、国政に出る場合も、この選択肢の枠組みづくりは大いにされるでしょう。そうでなければ、都民ファーストの会が国政選挙で勝つ要因はほぼゼロです。そういう意味で、まず都民ファーストの会のチェックポイントはここにあります。 また、本ブログでは何度も自民党と都民ファーストの会は同じ穴の狢と申し上げてきました。今回の都議会選挙の結果、自民党総裁の責任が言われていますが、安倍首相は責任をとって退陣することはないでしょう。それは、都議会選挙で自民党が惨敗しても、本当の意味での惨敗ではないからです。次のチェックポイントはまさにここにあります。 都政は、都民ファーストの会が主流ということがはっきりしたわけですから、今後は、議会、行政、都民ファーストの会そのものがチェックの対象になることは、健全な都政において必要不可欠なことです。そして、上記2点のチェックポイントも合わせて考えていくことが極めて大事ですし、これらがこれから4年間、みっちりチェックされることです。 先のフランス大統領選挙では、マクロン氏とル・ペン氏の決選投票について、適当な候補者がいないとデモが生じました。これは制度的な選択肢の枠組みで生じたことですが、とても民主的な動きです。やはり候補者の選択肢が人為的に限定されていくようなことに対しては、断固として闘わなくてならないのが、民主主義の要諦でしょうし、それはとりもなおさず都民、国民の生活に直結することなのです。 | |
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