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杭打ちデータ改ざん・マンション傾斜問題はTPPで構造化する可能性
[日本の政治]
2015年11月2日 23時50分の記事

杭打ちデータ改ざん問題、マンション傾斜問題についての報道が連日なされています。横浜の傾斜マンションでは、行政が指摘するまで問題にはならず、販売会社の対応は社会的には見られませんでした。杭打ちデータの改ざんに関しては、その数や実態に唖然とします。そこには、モラルの問題、無理な工期、コストの無理な切り詰めなど様々な問題が背景にあるでしょう。先週、平日午後放送の関西系のあるワイドショー番組では、今回のような問題があっては、TPPでインフラなどの日本から海外への輸出が自由化されるにもかかわらず、日本にとって大きなダメージであるという趣旨のことが言われていました。果たしてそうなのでしょうか。

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かつての日本において杜撰な工事は間違いなくあったでしょう。ただ、今回の種々の問題を見ていると、かつてのものとの差を感じます。現在の問題は、人材の教育の不備、市場化、合理化などここ20年、社会で主流をしめた経済の合理性の追求にその根源があるものと考えます。そのことを物語る最大の要因は、正に問題の当事者企業が、業界においてトップの企業であるということです。いかがわしい企業による杜撰な工事や対応ではないということなのです。
そして、今回の問題を概観すれば、経済の合理性の追求が、現実に対応できていない不合理を生み出している構造があります。だから、経済の合理性を追求した一流企業でこのような問題が生ずるわけです。このことは、結果として経済の合理性の追求が、計り知れない損失をもたらすという極めて皮肉な状況を招いています。グローバル化の弊害の一端と私は考えますし、日本の企業がその健全性を維持するための生態を失い始めている兆候と私には見えます。
このような状況において、市場のグローバル化を大規模にすすめるTPPが導入された場合、一層、日本企業の状況は悪化するのではないでしょうか。日本の企業の輸出も促進されるかもしれませんが、同時に日本にも多くの外国企業が入ってきます。その時、一層の合理化とコスト削減などが生じるでしょう。そうなれば、今ある様々な問題は改善されることなく、悪化の一途をたどるはずです。良い仕事をするから少しコストが高いものを発注するということは、えこ贔屓ととられ、市場の原則に反すると判断されることもあるでしょう。
先日、米国とインドネシアで日本の新幹線と中国の高速鉄道の受注争いがありましたが、日本は両方ともに受注を逃しました。普通に考えて、日本の新幹線のほうが実績も質も上でしょう。しかし、受注を逃したのは、決め手となるはずのアドバンテージが評価されず、コストなどの問題がポイントとなったからです。そして、TPPとなれば、これと同じことが多く生じるでしょう。日本国内でも同様な状況は生じるでしょうし、日本企業の置かれている状況はさらに厳しくなるのは必至です。
そうなれば間違いなく、今回の杭打ちデータ改ざんやマンション傾斜などの問題を生じさせたと考えられる構造はさらに鮮明になる可能性は十分です。
そのような状況では、当然、政府・行政の監視や規制の強化が必要になります。しかし、TPPにおいては、そのようなものは非関税障壁として排除されていきます。この20年間、米国が日本に散々要求してきたことですが、その集大成がTPPですから、市場における政府の役割は弱くなっていき企業の存在は大きくなります。公共性や公正性がどこまで担保できるかという問題は必然的に生じるでしょう。
TPPで、今回のような問題が生じる可能性は高くなると容易に想像できます。そして、この市場の状況に耐えられない企業は淘汰され、独占・寡占という状況も生じやすくなり、そこではさらなる公共性・公正性の問題が必ず浮上すると容易に考えられます。日本のマスコミもTPPに関して、少し甘く見すぎているように思います。

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◆この記事へのコメント(投稿順)
1. 尾下義男 2015年11月7日 5時44分 [返信する]
お世話になります。
危機管理アドバイザー尾下と申します。
先般、いばらき防災大学で、「耐震診断と家屋転倒防止対策」を講義した際にマンションの(杭打ち)傾きについて、受講生から多くの質問が出ました。
現在、社会問題化しているマンションの(杭打ち)問題。コンプライアンスの原点は、『公正・適切な企業活動を通じ社会貢献を行なう』とい思想と理念があります。
 特に、上場企業や企業ブランドを売りものにする企業で、法の不備をつくような行為を繰り返し行なえば、世間の企業ブランドに対する影響力は大きくなります。
 これらの企業には、他の企業模範となるべく、積極的に法令や条例以上の企業倫理・社会貢献の遵守し、『常識が法である』という行動が求められます。利益追求から、国民の安全・安心を第一に考える企業が最後に生き残ることを肝に銘じなければなりません。尾下拝


 


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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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