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台湾がAIIBに加入!?
[アジア・太平洋情勢]
2015年11月11日 23時40分の記事

11月8日、ロシアの報道メディア・スプートニクスが、「中国政府は台湾のAIIB(アジアインフラ投資銀行)への加盟を承認した」と報じました。知る限り日本のメディアにおいてこのような報道はなされていません。スプートニクスの情報は、プロパガンダの要素を否定できませんが、果たして真偽のほどはどうなのでしょうか。

「中国、台湾のAIIB加盟を承認 」(2015年11月8日 スプートニクス)

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今月7日、シンガポールで、中国の習近平主席と台湾の馬英九総統が会談をしました。歴史的な会談と報じられましたが、会談内容の詳細はあまり伝えられていません。中国と台湾のトップが会談したのは初めてですので、関係が接近していることは間違いありませんが、普通、あのようにわざわざ第三国にまで行って会談を行った以外に全く何もないということはまずないでしょう。
あのような会談がセッティングされるまで事務レベルでは、当然、調整をしますので、会談の実現には、ある程度の時間を要しているはずです。また、会談が行われたシンガポールは、背景に中国の存在があることは、ある意味、国際社会の常識です。昔、親交があったシンガポールの外交官本人が私にそう言ってもいました。そういうことを台湾側も知って現地に行っているわけです。そのシンガポールは、そもそもTPPをリードした国である一方、AIIBの創設メンバー国です。そして、台湾では、来年早々に行われる次期総統選挙で、独立志向の強い民進党の優勢が伝えられています。
そういう状況で中国と台湾のトップの会談であるわけで、単に中国と台湾が接近し始めているというだけではなく、このような場合、むしろ、見方としては、何かに「サイン(署名)」をして状況を固めたと考えるのが、外交において自然であると考えます。
そのような憶測がなされる中で、スプートニクスによる台湾がAIIBに加盟したということが報道されました。つまり、サインをしたわけです。

ポイントになる署名者の肩書
スプートニクスの情報を正しいものとして考えた場合、ポイントとなるのは、AIIBに参加する台湾の署名者である馬英九氏の肩書です。つまり、馬英九氏の肩書が、「中華民国総統」であるのか、「中国国民党主席」であるのかということです。その差は、180度全く違う世界観を持ちます。
中華民国総統であれば、中国が台湾を国として認めたということです。もし、そうであるなら太平洋の西側の状況は新たな一歩を記します。
しかし、それが中国国民党主席ならこれは一つの中国を意味し、国共合作という意味を持ちます。台湾が香港と同様な位置づけになると考えられますが、これは太平洋の西側にこれまでとは全く違う新しい状況が出現することを意味します。同時に来年の台湾総統選挙で、民進党が勝利しても独立という方向性は上辺だけになる可能性があると考えられます。
どちらにおいても、新しい状況が生まれることが確実であるのが、シンガポールにおける中国と台湾のトップ会談とスプートニクスの報道なのです。

どちらなのか
台湾はAIIBに参加する意志があることを今年4月の時点で表明していますが、その時も中国は適切な名称という条件を出しています(「台湾のAIIB参加、中国『名称適切なら歓迎』」2015年4月1日 ロイター)。また、今月7日のシンガポールでの中台首脳会談後の報道を見ても、中国側は一つの中国にこだわっていると同時に、「妥当な形式で中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟することを歓迎する」(2015年11月7日 時事通信)と述べています。4月の状況と変わっていませんが、ただ唯一の違いはスプートニクスの報道なのです。
状況からして、一つの中国、つまり台湾は国民党として署名、もしくは「中国台湾」という形で署名している可能性が大きいものと考えます。一つの中国として台湾は国ではないから、AIIB参加国として発表しないと言うことはあるかもしれません。
しかし、一方で、上記の今年4月と11月の違いは、中国が表向き「一つの中国」を言って体面を保ち、本質は台湾を認めた可能性もあると考えます。台湾の次期総統選挙で民進党の候補者蔡民進党主席が10月6日に来日し、安部首相と会談していますが、この目的が、「台湾民進党の蔡主席が山口来県へ 日米台さらなる関係強化に」(2015年9月29日 産経新聞)ということであることは間違いありません。そうなると中国は台湾を取り込むために台湾を国として認めた可能性もあります。ただ、台湾が国としてではなくAIIB参加に署名をしたなら、なお中国として、同時に台湾の馬英九総統としても状況が確定的になり良いことになります。いずれにせよ、上記の産経の記事にあるような動きが、今回のシンガポールでの中国と台湾の接近を加速させた可能性は大きいものと見ます。一種、藪蛇的な要素がそこにあるように思います。

外交はお金の流れと契約を見るべき
拙書『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015年 ビジネス社)で、国際情勢は、戦争とお金と契約で見るべきと書きました。戦争もつまるところお金の流れに支配されますので、お金(や戦略物資)の流れとそれを取り決める契約が国際情勢の本質なのです。
お金の流れとは、金融と言えますが、一般にある考えとは違うものです。その最たるものは通貨です。通貨は契約によって形作られ中央銀行が発行します。そのお金のやりとりが金融ですが、そもそも金融はこの作られた通貨によってなされるわけです。だから、この通貨ということが最も根本になります。また、国家間におけるお金のやりとりもこの通貨の問題を含めて長期に、そして膨大になされ、それを規定するのが契約(条約など)です。このことが、すべての国際情勢における根本なのです。
日本では、金融と言うとヘッジファンドがどうのこうという視点しか持ち合わせていません。確かにそのために動くお金は巨額ですが、そのお金というのはそもそも作られたものなのです。例えば、そのお金は無効ということになれば、何兆円あろうと単なる紙切れです。したがって、そのお金を作った存在が本元であるのです。ヘッジファンドがどうのこうというのは、単なる日々の話であって、国際情勢の本質ではないのです。このポイントを見逃すと国際情勢はわかりません。
そういう意味で、複数国の拠出金によって成立するAIIBの話は、この根本のお話の範疇のものであり、軍事情勢や国際間の枠組みを形作る非常に根本的なお話になるのです。但し、拙書でも申し上げたように、AIIBは今世界で生じている大変化の本質ではありません。
いずれにせよ、台湾がAIIBに参加したという情報、そしてそうならば、サインにおける台湾の名称が何であるのかということは、国際情勢にかかわる大きなお話になるのです。

今後の推移・影響
この問題は間違いなく米国と日本に関わってきます。特に尖閣問題ということはポイントになります。しかし、この尖閣問題は、一般の日本人が思っている以上に複雑なのです。それはこの問題に日本の政界の台湾人脈がからんで問題として発生している可能性が大きいからです。このことは折しも、米中接近、そして日中関係が正常化に動いた1970年代初頭に発生しています。この件についてはまた後日ふれることにしますが、この問題には情報や経緯が日本の一般に正確に伝わっていないという原因や背景がある可能性があり、その構造はシベリア抑留問題などでもある可能性は大きくあります。
今月のシンガポールでの中台首脳会談やAIIBの台湾参加という情報、そして中東情勢の構図が現在、大きく変化していることなどから考えると、戦後の自民党の外交方針や、それをさらに純粋化しただけの安倍政権の外交方針では今後の状況を乗りきれない可能性があり、大きくその方針の見直しが迫られる可能性が高まっているものと判断します。安倍政権の外交を見ていると、何か焦っているように見え、それが内政で違憲立法の声が上がるなど様々な問題を引き起こしていると考えます。外交防衛で焦っている、もしくは拙速の感が否めませんが、そのつけはいずれ大きな形で日本に返ってくる可能性があり、その実害は安倍氏ではなく国民が受けることにjなることは間違いがないことと考えます。

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内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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