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消費税について考える
[日本の政治]
2015年11月22日 23時56分の記事

消費税を3%から5%に引き上げたときから、デフレに陥り、経済が縮小傾向に入ったと指摘していたのはエコノミストの菊池英博さんなどでした。既に10年以上前からこの方たちは、そう主張しています。菊池先生は国民新党のブレーンでしたので、長らくお仕事をご一緒させて頂きましたし、私も菊池先生の見解に同意します。
そのような見地からすれば、消費税を5%から8%に引き上げれば、当然、経済への悪影響があるのは何よりも明らかなことであり、一種自殺行為と呼べるものでした。

『増税が日本を破壊する』(菊池英博著 2005年 ダイヤモンド社)
『消費税は0%にできる』(菊池英博著 2009年 ダイヤモンド社)

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昨年の消費増税実施後、内閣府が公表した景気ウオッチャー調査で、景気判断の状況は大きく落ち込みましたが、一方で景気の先行き判断の上昇が過去最大となったと当時、報道されていました。しかし、実際には昨今、日本経済のリセッションが内外で言われ、その時以来、景気は上向いていないわけです。当然といえば当然の帰結です。「一時的」にせよ景気が落ち込む施策を行って、その後、景気が上がると考えること自体、かなり無理がある考え方です。ずっと異次元の金融緩和をしてきていてこの状況ですから、事態は深刻と考えたほうが良いでしょう。そして、今の日本の問題は、その当然の帰結を、当然と考えられないところにあり、つまるところこのことの本質は何も考えていないということです。
この当然の帰結の中で、GDPが2期連続のマイナスを記録、景気後退局面(リセッション)を意味する現状で、景気対策のために補正予算を組むというのは、かなり問題がある考え方でしょう。原因を作り出して、その対策をしますということですから、血迷っていると言えば血迷っています。この思考の構図はTPPでも同じです。TPPで農家や中小企業がマイナスの影響を受けるので対策をしますと政府が言っていますが、その原因を作ったのは政府です。

歳入の基本は租税収入
かつて東京銀行ローマ支店長であった菊池先生は、世界経済の表裏を知り尽くした方で、経済政策や経済的事象について様々な角度から分析なさる方です。
そのような方が、「増税が日本を破壊する」とか、「消費税は0%にできる」と述べるていますが、これは別に不思議でもなんでもないことです。
歳入は基本的に税収によってなされ、財政赤字が深刻化すればさらにその傾向は強まります。税金を収めるのは国民ですから、その国民経済が疲弊すれば、税収は上がりません。財政赤字が深刻化すれば、国債などでの資金調達は厳しくなるので、国家財政において国民経済からの租税収入のウェイトは増します。それなら、最も注目しなければならないのは、国民経済の健全性であり、それが損なわれれば国家は破綻するのは自明です。
しかし、以前から消費税を20%などにしないと国家財政が破綻するという議論がありますが、そもそもそんなに高率にすれば、国民経済が破綻しますから、「国家財政が破綻する前に」、国家財政は破綻するのです。どちらを優先しなくてはならないかは実に明らかなことなのです。
積極財政政策や金融緩和を行うのは、将来へ向けて国民経済の基盤を作らなくてはならないからで、それがこの3年間でできなかったのですから、事態は極めて深刻なのです。アベノミクス第二ステージと言っていますが、焦点をずらしているだけでしょう。しかし、いかに焦点をずらしても現実が変わるわけではありません。いずれその現実は、自民党政権を押しつぶしていくことでしょう。

有能な政治家の必要性
このような判断ミスや思考の破綻が起きているのは、政治家が経済と言って企業経済しか思い浮かばない状況に起因しているからと分析します。このことはバブル期を境にして顕著になったと考えます。国や社会というのは企業経済だけで成り立っているわけではありません。企業経済を支える基盤があって初めて企業経済も成り立ちます。しかし、上辺だけの企業経済だけを見て政策を行い、社会の基盤を無視すれば、当然、経済も社会も崩壊していきます。それが、現在の日本ではないでしょうか。
今日本に必要なのは、改革ではなく基礎づくりなのです。今の日本の政治は短期的な企業の収益を上げることには貢献しますが、長期的な収益を上げる基盤づくりは行っていません。そのような社会に外資は投資もしないでしょう。普通、投資をするのは日本の法人税が安いからではなく、そこが儲かると判断できるからです。だから、現在、日本で言われている外資誘致の話は、長期的なものではなく、短期的なものと考えたほうが自然でしょう。それは、日本にとってはプラスにはなりません。
消費税増税は、民主党政権時、民主・自民大連立ということで行われました。この状況は、政界の大半が、消費税の経済への悪影響を踏まえていなかったことを意味します。私は在籍していませんでしたが当時、国民新党はこのことで分裂しました。ということは、消費税を批判してきた国民新党といえども内部には理解できない人がいたわけです。
外交でも同様ですが、経済においても新機軸を打ち出せる政治家の登場が必要になっています。残念ながらまだその勢力はありません。もしくは頭角を現してはいません。国民にとって不幸なことは、正にこのことでしょう。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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