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この勘違いはあり得ない (2)
[日本の政治]
2021年7月30日 0時45分の記事

昨日の本ブログ「この勘違いはあり得ない (1)」(2021年7月29日)の続きです。

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さらなる問題がある
以下のリテラの記事は、検査について非常に重要な指摘をしています。


かたや五輪関係者を対象にした検査は7月1日からすでに約24万件もおこなわれたというが、都民対象の検査数は7日間移動平均で1日1万件にも満たないのである。

「菅首相『五輪中止ない』の理由『人流減った』『新たな治療薬確保』は大ボラ! 夜の渋谷では人流増加、新治療薬は対象が限定的」(2021年7月28日 リテラ)


検査の種類がいかなるものかは書かれていませんが、都民の非常に限られた検査リソースが五輪によって削がれている可能性があるのです。
7月27日時点での大会関連の海外からの入国者は3万9209人(7月29日 共同通信)です。日本人も入れればもっと増えます。その検査数は1日1万件以上。一方で都民は約1400万人。以下のブログ記事には7月22日の東京都における検査数が2430件だけと書かれていますし、その下のNHKの7月23日の記事でも少ない検査数について言及されています。五輪開催で休日などにおける都民の非常に限られた検査リソースが奪われている可能性があります。
とすると、実際の感染者数は、発表されているよりはるかに多いという可能性があります。実際、無症状感染者がいますから、実数は数倍になる可能性があるのです。

「東京都の行政検査数、7月22日は驚きの2430件だけ!新たな感染者は1359人 34日間連続の前週比増」(2021年7月23日 情報速報ドットコム)

「東京都 新型コロナ 1359人感染確認 4日連続1000人超」(2021年7月23日 NHK)

五輪の医療従事者は7000人
以下の記事のように五輪開催に7000人の医療従事者関わっていますが、この感染爆発・オーバーシュートが生じているときに、これは明らかに都民・国民のリソースを削っているわけです。パンデミックの状態での強行開催によって、このような都民にとって非常に危険な状況が生まれているのです。この一件だけでも、IOCから一言、都民・日本国民に対して謝意があってしかるべきではないかと考えます。なのに『私には関係あーりません』なんて言っている場合ではないでしょう。

「医療従事者7000人」(2021年7月23日 毎日新聞)

「無観客も…医師ら7千人 医療体制は維持」(2021年7月22日 日本テレビ)

以下の東京新聞の記事には、看護師500人のボランティア要請に対しての病院関係者の抗議の声が載っています。
それだけではなく、この記事には杜撰な『バブル』の実態、そして、大会関係者・バブル内への感染のリスクについても書かれています。

 
◆「大会関係者の感染多い」
 選手や関係者を外部と遮断する「バブル(泡)方式」には「いろんな穴がある」と指摘。選手村も「共同で部屋やトイレを利用する時点で感染症対策としてなっていない」と語る。「医療従事者の基準から見れば、大会関係者の感染が多い。政府の言う安心・安全は疑問だ」
 警備のために兵庫県警から派遣された機動隊員6人がコロナに感染したことにも触れ「東京の感染状況では、大会関係者が感染し、選手村の中にウイルスが持ち込まれるなど、バブルの外から中に持ち込まれる可能性がある」と危ぶむ。
 東京五輪・パラリンピック組織委員会によると、28日までに選手と大会関係者計169人が検査で陽性となっている。
◆看護師確保難しく
 立川相互病院は4月30日に「医療は限界 五輪やめて! もうカンベン オリンピックむり!」と窓に張り紙をした。五輪に看護師500人のボランティア派遣を要請するとのニュースがきっかけだった。

「『五輪やめて』の病院副院長 『ぎりぎりの状態だ…無観客でも賛成できない』」(2021年7月28日 東京新聞)


以下の記事のように五輪関係者の入院が報じられています。当然、それは感染爆発・オーバーシュート時における、五輪関係者の都民の医療リソースの使用ということになります。
そして、何よりも、今後、感染者が現状のペースで増えれば、都民だけではなく、五輪関係者のケアもできなくなるという最悪の状況が出現します。それが目前に迫っているのが、1日3000人以上の感染者という数なのです。これが、五輪開催という楽観バイアスから感染防止行動の喪失という結果で生じているということなのです。

「入国した五輪関係者 3人が都内の医療機関に入院」(2021年7月29日 NHK)


まったく無能なシンクタンク
以下の6月11日の東京新聞の記事には、政府が三菱総研に委託した感染者数の試算(6月時点)が掲載されています。この試算では、オリ・パラを予定通りに開催した場合には、8月下旬時点で都内の感染者は約1000人/日で、中止や延期など開催しなかった場合よりも約200人多くなるという結果になっています。
開催しない方が感染を抑えられるという結果は正しいものですが、感染者数があまりにも楽観的です。あり得ないほどです。
この試算での7月29日の正確な数字はわかりませんが、記事のグラフを見ると400人/日を切っています。そして、現実の7月29日の都内の感染確認者は3865人。約10倍の開きがあります。これこそパラレルワールド、異世界の試算です。
もし、6月11日の時点でオリ・パラ開催をすれば都の感染者数は1日あたり3865人になるという正確な数字が公表されていれば、確実に開催は来年へ再延期されていたことでしょう。まさに無能なシンクタンクに政府が試算を委託したことによって、滅茶苦茶な状況になっているわけです。当然、三菱総研にもこの感染爆発・オーバーシュートの責任の一端はあります。
このことを観ていると、太平洋開戦時、日米で経済格差が10倍あったのに、『大丈夫だ、戦争はやってみなければわからない』(楽観バイアス)と言って、その格差を無視して、真珠湾攻撃に踏切り、滅亡した愚を思い起こします。まったく愚かです。それからまったく何も変わっていない日本人。
もしかしたら、三菱総研は開催ありきでデタラメな試算を、スガ自公政権のためにつくったのかもしれません。その可能性はあると考えますが、そうでなければ、トンデモナイ無能ということになるわけです。まったく当てにならないシンクタンクですが、どちらにしても基本的には頭が悪いというに過ぎないと考えます。

「五輪開催で感染者が急増、東京1日1000人に…政府が試算 パラリンピック開幕を直撃」(2021年6月11日 東京新聞)

「無謀な太平洋戦争…開戦時、『日米経済格差』はこんなに拡がっていた」(2018年8月15日 現代ビジネス)

このように考えてくると、開催が無観客でなければ、さらに大変にことになっていたのは、火を見るより明らかです。ただ、問題の本質はそこではなく、そもそも開催を来年に再延期をすべきなのに、それをしなかったことにあるのです。来年に再延期をしていれば、現状、東京都の感染爆発・オーバーシュートもなく、かなり感染者数が抑えられていたわけです。それは、『三菱総研の試算』(笑)でも確認できます。
スガ自公政権と小池都政が、来年への開催再延期する政治的責任を放棄、さらに感染に対してまったくの無策だからこそ、感染爆発・オーバーシュート、さらに無観客で多くの人が歓迎しない滅茶苦茶なオリンピックになったわけです。やはり、このことは万死に値します。リスクをさけて、来年の開催にして、歴史に残る素晴らしいオリンピックにしなければならなかったのです。やろうとすればできたのですが、それをやろうともしなかった。この科は大変なものなのです。

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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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