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フランスでの同時多発テロ事件――本質はテロとの戦いではない?
[世界の読み方]
2015年11月16日 23時58分の記事

11月13日夜に発生したフランスでの同時多発テロ事件の犯人に、シリア難民が含まれるとみられる物証について報道がされ(2015年11月15日 AFP)、今回の実行犯がフランス人を含め多国籍に及んでいることが報道されています。シリア難民にISの兵士が混ざっていた可能性は大きく、これは一種のトロイの木馬でしょう。このことは、『ザ・フナイ12月号』(2015年 舩井本社)の連載中の拙論で取り上げました。そして同時にシリア難民に混じってきたテロリストの活動を支えるネットワークがあり、この組み合わせにより今回のテロが起こされた可能性は大きいと考えられます。このことは、本ブログ「レバノンでの大量薬物押収事件に見る戦争と薬物の関係」(2015年11月3日)で指摘したこととも関係するものと考えます。
シリア難民の中に混ざっていたテロリストが実行したかは、現状は物証段階ですが、シリア難民の中にISのテロリストが混ざっていなかったと考えるのは非現実的でしょう。

『ザ・フナイ12月号』(2015年 舩井本社)

「パリ連続襲撃、現場にシリア難民の旅券 『3チームに分かれ襲撃』」(2015年11月15日 AFP)

「レバノンでの大量薬物押収事件に見る戦争と薬物の関係」(2015年11月3日)

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『ザ・フナイ12月号』の拙論では、シリア難民の中にISの兵士が混ざっている可能性を「トロイの木馬」という表現で指摘しました。そして、このことは、シリアの戦乱・混乱が欧州へ飛び火する可能性があることと同義であり、当然予期できたことでもあります。さらにこの混乱は、世界の不安定化につながる要素を多分に持っていますので非常に問題あることと考えます。是非、『ザ・フナイ12月号』をご覧いただければと思います。
もちろん、この「シナリオ」については、バチカンも欧州諸国もロシアも想定しています。そのことも拙論で指摘させて頂きました。
拙論を書いていたのは、今年9月上旬です。その時は、トルコの海岸に打ち上げられたシリア難民の少年の遺体についての報道と深刻化するシリア難民の数と状況が報道のポイントでした。
しかし、大きな流れで見れば、このシリア難民について焦点が当てられた時から、次の「オペレーション(作戦)」がはじまったと考えるべきで、そういう見地から「トロイの木馬」という表現になりました。中東情勢をずっとウォッチしていれば、大局の中でこのように捉えるのは自然なことと考えますし、実際、本文冒頭の報道もそのことを匂わせています。
シリア難民の大半は間違いなく善良な人々であると思います。しかし、その中にテロリストが混じっていることが事態を複雑化、難しくしているわけです。誰がテロリストかわからないこと、そして大量の難民に対してどのように対処するかという二つの課題が欧州に突きつけられているのです。これが今年の「9月」になって動き始めたというのが実相です。時期も、場所も、報道のされ方もすべてがつながっているのです。
今回のフランス同時多発テロ事件の計画性と共に、フランスがこのテロにほぼ無防備であったように見えるのは、警備の「不備」なのか、それとも既に警備の限界を超えているためなのかは現段階ではわかりませんが、非常に特徴的なポイントと考えます。そして、ボーダーレスなEU内でテロリストが比較的自由に行動できる状況があるのに、なぜフランスだけが標的になったのかは、依然として非常にポイントであると考えます。シリアへの空爆はベルギー、オランダ、デンマークも参加しています。今回のフランス同時多発テロ事件が序曲なのか、それともフランスだけなのかは非常に大きなポイントでしょう。

ボーダーレスを志向するTPPに突きつけられた極めて大きな課題
TPPはボーダーレス社会を実現するものです。ボーダーレスになれば経済活動の名の下、EUと同様に人の往来は自由化されていきます。外国人労働者の流入も今よりさらに激しくなるでしょうし、日本人が諸外国に行くことも多くなるでしょう。そのTPPに政府は参加を表明しているわけであって、今回のフランス同時多発テロ事件は、日本政府に極めて大きな課題を突きつけています。今や対岸の火事と考えることができない段階に踏み出しているわけであり、国民の安全が関わりますので、このことに対して政府は明確に答を出さなくてはなりません。
TPPでは外国人投資家が、日本国内の規制に対して発言権が極めて強くなります。安い外国人労働者を日本はもっと入れるべきだという方向になると考えられますが、そうなれば当然、大量の外国人労働者が流入するでしょう。その場合、セキュリティのチェックは可能であるのでしょうか。もちろん、労働者の中にテロリストが混ざっていることは当然予期できます。「トロイの木馬」です。大量の労働者がいる中でしっかりとしたセキュリティのチェックをすれば、当然時間がかかります。その時、もし外国人投資家(とは限りませんが)が、こんなに時間がかかっているようでは経済的に非効率だと言って、セキュリティのチェックの緩和をしろと言えば、恐らくその方向に向かうのがTPPです。ボーダーレスとは国家の機能を弱めるということなのです。
その時、日本は今以上に標的になり、脆弱になるでしょう。優秀な日本の警察をもってしても限界は自ずと見えていると考えます。安全・安心社会が日本の特徴ですが、TPPということでこのことは格段に壊れていく可能性は非常に大きいと考えるのが自然でしょう。したがって、その安全・安心を手に入れるには、今回のフランスの同時多発テロ事件発生後、国境通過を厳格化したように、ボーダーを設ける必要があります。今回のフランス同時多発テロ事件が、TPP参加に前のめりになる日本に突きつけている本質がここにあります。
日本政府のTPPの発言を聞いていれば、良い所ばかりを見ているので、大変に大きな見落としがあるものと思います。これらの他にも間違いなく「見落としている」ものがあるはずです。但し、それが判明した時は皆、そんな見落としがあったことを忘れているでしょう。だから、将来の状況は改善されないでしょう。

2020年のスポーツの祭典でテロを防ぐのは基本的に難しい
今後、2020年までに日本で様々な重要なイベントがありますが、その中で最大なのは2020年の東京でのスポーツの祭典でしょう。これらの催し物で、テロはないかもしれません。つまりテロの標的にならない可能性もあります。もしくは、防ぐことができるかもしれません。
ただ、一度、テロの標的になれば、恐らく防ぐのは不可能と言ってよいほど難しいものと考えます。2020年の祭典で、各競技の運営は、日本の競技団体が仕切ることになると言われています。つまり、競技場についての様々なことを含め競技の運営を競技団体が行うと言われています。そうなると数百人から千人単位の数のボランティアを募って運営をすることになります。したがって、そのボランティアを含めての身元調査ということが間違いなく安全上のポイントになります。
各競技団体の人々は、その競技については専門家ですが、それ以外のセキュリティのことなどについては当然、素人です。そのようなセキュリティへの対処には、身元調査などを含めて当然限界があり、安全確保において人員と質、訓練などで限度を超え、無理があると考えられます。もちろん、警察との連携ははかられなくてはなりませんが、それでも脆弱なポイントは非常に多くあります。
2020年の祭典で、直前にテロリストが飛行機でやってきて、テロに及ぶということはあまり無いでしょう。フランスでの同時多発テロ事件がネットワークが作られ、その上で行われたように、何年も時間をかけて準備をするはずです。つまり、4年半後に迫った2020年の祭典なら、もう既に仕込んでいると考えるべきことなのです。そして、もう一つ忘れてはならないことは、テロが生ずるのは警備が厳しいところとは限らないことです。いずれにせよ、この危険性は1年前から既に予期されていることなのです。
(つづく)

「フランスでの同時多発テロ事件――本質はテロとの戦いではない?」(2015年11月17日)

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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