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軽減税率について考える
[日本の政治]
2015年12月12日 23時47分の記事

ここ最近、連日、軽減税率のことが報道されています。これは政府連立与党の自民党と公明党による消費税の軽減税率を巡る協議のことですが、一定の合意を得たと報道され、「外食」は軽減税率の対象から外されるということです。しかし、これでは「外食」は今後割高になるというメッセージを出しているようなもので、一種の官製風評被害といえるものを作り出すのではないかと考えます。消費税が再度上がれば間違いなく消費は低迷するでしょう。その中でこのようなメッセージが出されていれば、より一層、外食への消費が落ち込むことは容易に想像できます。

「軽減税率対象『外食除く生鮮・加工食品』で合意」(2015年12月12日 NHK)

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これだけ長い期間、連日、報道されるほど議論しているのに、一体何を目指しているのでしょうか。現在の政権与党の政治、経済、国民生活についてのビジョンが見えませんし、そのための優先順位が見えません。国民の「食」をいかにするか、消費や経済の循環をいかにするのか。そういうものが見えず、ただ注目をひく派手な議論をしているようにしか見えません。社会基盤や経済基盤をいかにするかというビジョンなくして税制などいくら議論しても無駄ではないかと考えます。
消費税を8%から10%へ増税すれば、それは3%から5%、そして5%から8%へ増税したときよりも遙かにマイナスのインパクトが大きいものと考えます。
それは、本ブログ「消費税について考える」(2015年11月22日)で書いたように、消費税を3%から5%へ引き上げた1997年からずっと消費税が経済・社会へマイナスに作用しているからです。その上さらに5%から8%へ引き上げ、その影響がさらに深刻化していますから、8%から10%に引き上げればその負のインパクトは過去2回の増税時より大きいのは明らかです。間違ってもこれまでの流れがこの増税によって改善されることはありません。
日本が直面している問題に対していかに対処するか、いかに基盤を整え良い方向に道筋をつけていくかと言うことが全くこの軽減税率の議論からは見えませんでした。民主党政権時に成立した消費税増税に関して基本的には何も変わらずにそのまま進むことへの躊躇すら見えません。それは、当時、この増税は民自公の「大連立」なるもので成立したものですから仕方がないのかもしれません。しかし、その方向性でこのまま進んで、日本の経済や社会に光明が見えるかは甚だ疑問に思います。このことは、今、新しい基軸が日本には必要になっているということを意味していると考えます。

自公両党の思惑
政治においては焦点を一点に注がれるようにして、他の論点や全体的な視点を打ち消す手法がよく使われます。対立はそのために作り出されることがよくあります。今回の軽減税率での議論はまさにこれではなかったかと考えます。
公明党は安保法制より、公約として掲げてきたこの軽減税率にウェイトをおいてきたと言われています(「公明『10%と同時に軽減税率』 政権公約発表、安保法制丁寧に」2014年11月27日 静岡新聞)。それなら今回の軽減税率は実現して当然でしょうし、それは安保法制とのバーターと考えられます。そして、これは来年の参議院選挙(もしくはダブル選挙)へのバーターでもあると考えられます。いずれにせよ、公明党が今回の軽減税率を実現させたということが重要であり、そして、自民党も渋々ながらそれを認めたというメッセージがポイントではないかと考えます。
来年の選挙では、自民党にとって公明党の選挙協力が不可欠ということは疑いの余地がないことでしょう。公明党の協力なくして戦えないと言うことですが、しかし、公明党も連立与党として自民党と組まなくてはやってはいけないのではないでしょうか。仮に公明党が下野したとして、どのように国会で戦い、政策を実現させ、選挙で議席を確保していくのか、道筋は見えないでしょう。恐らく自民党よりも厳しい現実に直面するであろうと考えます。そのようなリスクを公明党が選ぶとは考えられませんし、安保法制の時の公明党の動きを考えれば間違いないことと考えます。もう既にこの両党は一心同体なのであると考えます。
そう考えると、今回の軽減税率の派手な議論は、明らかに来年の選挙が視野に入ったものと考えます。

財源とばらまき
今回の軽減税率に関しての報道を見ていると、軽減税率実施に伴う1兆円から1.3兆円の穴埋めの「財源」と言うことが自民党から盛んに言われました。しかし、先日のCOP21で、毎年1.3兆円の支援を安倍首相は表明しています(「安倍首相、「1.3兆円支援」表明」2015年12月1日 毎日新聞)。その他、インドに対して1.5兆円規模の借款を表明し、インドは日本の新幹線を導入すると発表しています。他にもばらまきと言われるほど海外へ税金が出ています。しかし、これらについて自民党から「財源」という言葉を一度も聞いたことがありません。
それらの費用は必要であるし、見返りもあるという声があるかもしれませんが、国民への減税も必要であり、見返りも当然、あります。むしろ、それこそが日本にとってまず必要なことでしょう。気候変動対策や途上国支援などは必要ですが、それらのことができるのは、国民経済や社会基盤がしっかりと整っているからこそです。自らの足下がしっかりとしていないで、他を救済するなどできません。また外交的な成果もあげられません。度重なる増税によって国民経済は疲弊し、社会基盤は崩れ始めています。そのことに何もしないばかりか、増税を疑問もなくしようとしています。国民生活が安定し、消費が活性化されてはじめて国の財源が確保されます。国民こそ声高にこの本質的な「財源」を言うべきでしょう。そのことへのアプローチが全く見られずに、減税への財源を声高に言う政治姿勢に非常に疑問を持ちます。恒久財源などと言える段階ではないでしょう。
軽減税率における自民党からの「財源」という議論は、国民を信頼しない、国民への非常に冷たい視線をそこに感じます。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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