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《日本の政治》日本の民主主義政治の最大の問題点を示したスガ退陣 その2 (4)
[日本の政治]
2021年9月7日 0時26分の記事

昨日の本ブログ「《日本の政治》日本の民主主義政治の最大の問題点を示したスガ退陣 その2 (3)」(2021年9月6日)の続きです。

「《日本の政治》日本の民主主義政治の最大の問題点を示したスガ退陣 その2 (1)」(2021年9月4日)

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◎ 横浜市長選
では、スガ政権を追い込んだと言われる横浜市長選はどうか? 実はこの市長選にはとても謎が多いのです。8月31日のオンラインセミナーでは、この選挙の実相をお話ししましたが、この選挙には特に大きな謎があります。それは、この選挙に負ければスガ政権、自公政権が追い込まれるのに、なぜ、スガ氏が全面的に応援した小此木氏に自民党は一本化できなかったか、ということです。それは、言い換えれば、なぜ小此木票を割ることになる現職の林氏が出馬し、そのことに加担する自民党内の動きが生じたのか、ということであるのです。明らかに墓穴を掘るものです。
実際、小此木氏と林氏の票を足すと山中氏の票を上回りますから、林氏が出馬しなければ小此木氏は当選していて、さらにスガ氏の基板は安定、スガ氏は自民党総裁選への弾みがついたはずなのです。
しかし、そうはならずに林氏が出馬し、スガ氏の足を引っ張ったわけです。つまり林氏出馬は、当然、スガ降ろしの話しであって、それを画策するのはスガ・二階両氏以外で、スガ氏以上に力がある人物がやったということになるのです。それは言うまでもなくアベ氏と考えるのが自然です。常識的に。
このことが、スガ氏が下村氏の総裁選出馬について、出馬断念せよと下村氏とアベ氏に強気に出ることができた要因でしょう。横浜市長選で反党行為をしたではないかと言える立場にスガ氏はあったと考えます。
このアベ氏のスガ降ろしの動向は、以下の高市氏が総裁選出馬を決めた経緯が書かれている記事にもはっきりとあらわれています。記事には高市氏が「2月から安倍さんの部屋に通い詰めて、勉強会を何度もやってきた」と書かれていて、当然、このことは、その時からアベ氏がスガ氏を切る意向を持っていることをはっきりと示しているのです。ですから、使用人のスガ氏は、地位を維持するためにどうしてもアベ氏の歓心を買うことに腐心するとうことになるわけです。

「『わたし出たるわ』安倍氏にタンカ 高市氏“総裁選出馬”への舞台裏語る」(2021年8月29日 日本テレビ)

言うまでもなく、上記記事にあるように、高市氏がアベ氏にタンカを切って総裁選に出馬することなんぞできるはずもなくと考えるのは自然です。高市氏もスガ氏と同じ使用人にすぎないと考えるのが常識的判断と考えます。いずれにせよ、この記事を観ると、「原発・正力・CIA: 機密文書で読む昭和裏面史(新潮新書)」(2008年 新潮社 有馬哲夫著)という本を想起せざるを得ません。まず間違いないと考えます。本ブログ「《日本の政治》日本の民主主義政治の最大の問題点を示したスガ退陣」(2021年9月3日)で、自民党とCIAの関わりについて書きましたが、そういうことを忘れてはならないのです。

◎ 影の総理=アベ氏
このアベ氏の実像については、上記で触れた週刊現代の9月3日の記事「安倍晋三『菅おろし』の全内幕…『主人はお芝居がうまいから』と昭恵夫人は笑った」の後編である「菅義偉はハメられたのか…?安倍晋三の“再々登板”に向けた「菅おろし」の全内幕」(2021年9月3日 週刊現代)に書いてあります。何と書いてあるか? 以下のようにすでにアベ氏は影の総理と書かれています。


総理官邸から、衆議院第一議員会館12階の狭い事務所へ戻った安倍のもとには、来訪者が引きも切らない。安倍の出身派閥・清和研の自民党議員が話す。
「議連の提言書を確認してもらったり、今はコロナで延期になっていますが(政治資金)パーティーの講師を頼んだり、地元の選挙応援に来てくれるようにお願いしたり。電話一本入れれば気軽に会ってくれるし、暇なのか二つ返事で引き受けてくれる。体調が悪い素振りも全くない。
官僚も、もう来年度予算の概算要求について安倍さんに根回しを始めています。いまや安倍さんが『影の総理』ですよ」


数日前の9月3日に出された記事において、アベ氏は影の総理と言われているわけですから、ずっとスガ政権下でそうであったわけです。ですから、上述したようなアベ政権から続く滅茶苦茶な新型コロナウイルス対策、そして、東京五輪の強行開催ということが起きるのです。
しかし、その影の総理は使用人スガ氏を降ろそうとした、だからこの記事に「菅おろし」という見出しがつくわけです。そして、このスガ降ろしが上述の横浜市長選での林氏出馬に端的に表れ、また今年2月からの高市氏との勉強会にも表れているわけです。
以下の記事のように、スガ氏については昨年の8月13日にすでにワンポイントということが言われています。このような流れはずっとあったわけです。このことと、スガ氏が行った、岸博幸氏を内閣府参与に(7月9日)、夏野剛氏を内閣府規制改革推進会議議長(8月23日)とする明らかな駆け込み人事は、何らかの形で関係するものと考えます。アベ氏の意向に沿うという意思表示をして、アベ氏の歓心を買い、それでもって延命しようとしたのかもしれません。
いずれにせよ、この二人は駆け込み人事になったことは事実です。

「安倍嘔吐説、岸田低空で囁かれる菅ワンポイント登板 『ポスト安倍』をめぐる自民党内の構図が変化」(2020年8月13日 新潮社フォーサイト)

この週刊現代の記事には、アベ氏の使用人については以下のように書いてあります。


総裁選まで1ヵ月あまり、カードも揃ってきた。
「安倍さんのお墨付きを得ようと必死の岸田、嫌われ者だが仕事はできる『隠し球』茂木(敏充外相)、保守派の子分・下村(博文政調会長)、そして元清和研で『安倍ガールズ』の高市(早苗前総務相)。どれも強くはないけれど、派閥をまたがっていることに意味がある」(前出・自民党ベテラン議員)
このうち誰が総理になっても、安倍は構わない。別にリーダーシップを発揮してくれる必要もない。自分の言うことを聞きさえすればいいのだ。


「自分の言うことを聞きさえすればいいのだ」というのは使用人と言うことです。そして、その使用人はスガ氏のように歓心を買うためにあれこれやっても、最終的にはあえなく切られるということに過ぎないのです。それが、現在の日本の首相の実態なのです。民主主義? まったくそんなものはないのです。少なくとも世襲オーナー政党の自民党ではありえないと考えます。
この週刊現代の記事中にある昨年のアベ辞任についての実相についての見解は違いますが、その他は色々なポイントが書いてある記事と考えます。
アベ氏が影の総理としてスガ氏はその使用人としてこれまで来たわけで、政策的には完全にアベ・スガ自公政権ということになていたわけです。

◎ 以下のこともアベ氏の歓心を買うためと考えられる
このようなことが、長崎原爆の日の平和祈念式典について朝日新聞が指摘した以下のようなことに繋がっていくのでしょう。

 
「長崎原爆の日」の9日、菅義偉首相が就任以来初めて長崎市の平和祈念式典に臨んだ。「首相が代われば、政策も……」。地元の被爆者らは注視したが、前政権からの型通りの言葉に隔たりは埋まらなかった。
昨年、安倍晋三首相(当時)の広島と長崎の式典あいさつが酷似していて、「コピペ」などと批判を浴びた。今年の菅首相のあいさつも、広島と同じ文言が随所にみられた。さらに「(この地が)美しく復興を遂げたことに、私たちは改めて、乗り越えられない試練はないこと、そして、平和の尊さを強く感じる」などと、昨年の首相あいさつと全く同じ部分もあった。

「前首相と全く同じ文言も…『見捨てられた』長崎の被爆者」(2021年8月9日 朝日新聞)

スガ氏は、アベ氏の歓心を買い、保身のために、アベ氏の路線を忠実に踏襲したということです。このことは、スガ氏が長崎の式典に遅刻したことにもはっきりと現われていると考えます。さらに、8月6日の広島での原爆死没者慰霊式・平和祈念式で首相挨拶の原稿読み飛ばしも、やはり基本的に同じことと考えます。

「長崎式典遅刻も広島原稿飛ばしも事務方のせい…菅首相に『最低の上司』と批判殺到」(2021年8月10日 FLASH)

また、スガ政権発足後にすぐに起った日本学術会議の人事問題。これも基本的には同じでアベ氏の歓心を買うためと考えられますし、先月のアフガニスタンへの自衛隊輸送機の派遣もまた同じではないかと考えます。
世襲オーナーの前では、派閥をもたないスガ氏レベルでは結局は使用人、総理総裁を延命しようとして、がんばって世襲オーナーの歓心を買おうとしたけれど、まったくの無力。冒頭に取り上げた西日本新聞の記事にあるように『裸の王様』と表現される結末になったと考えます。記事には以下のようにあります。


首相側近はテレビで首相の辞意を知り、こう嘆いた。「人事権も解散権も封じ込まれた総理総裁なんて見たことがない。最後は裸の王様だったよ」

「『お前と一緒に沈められねえだろ』退陣表明前夜、“2A”から首相に三くだり半」(2021年9月4日 西日本新聞)
 


世襲オーナーの前では派閥を持たない自民党議員では、結局はスガ氏と五十歩百歩、ほとんど同じかそれ以下でしょう。ということは当然、高市氏も同じで、スガ氏以下と言うことです。アベ氏にタンカなんか切るはずはないと考えるのは当たり前と考えます。

◎ 小泉氏の発言
このように観てくると、スガ氏退陣表明に際して、小泉氏が発した以下の言葉の意味は違って見えると考えます。


ただ一方で「もっと自分の言葉で語っていただきたかったし、国民の皆さんの批判もその通りのことがいっぱいある」とも指摘した。

「小泉進次郎氏、涙浮かべ『感謝』
首相の退陣意向に」(2021年9月3日 共同通信)



『スガ氏には自分の言葉で語っていただきたかった』という小泉氏の言葉は、裏返せば、スガ氏はこれまで自分の言葉で語ってきてはいなかったということになります。それは使用人としては当然のことで、上述のことを示していると考えます。それでは、スガ氏は誰の言葉を語ってきたのか? それ言うまでもなく、上述したように世襲オーナー・アベ氏の言葉と考えますし、だからこそスガ政権は大失敗したというのが、この小泉氏の言葉から考えられることです。
スガ氏が退陣表明を行った際、これからは新型コロナウイルス対策に専念(専任?)すると述べたのも、このように観てくるとアベ氏に対する含みがあるように見えます。

「《日本の政治》日本の民主主義政治の最大の問題点を示したスガ退陣 その2 (5)」(2021年9月8日)へ続く。

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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