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改めて思う TPPの非民主性
[日本の政治]
2016年11月4日 20時31分の記事

TPP法案が特別委員会で抗議の中、採決が行われたと報道されています。

「TPP法案、賛成多数で可決 特別委、抗議の中採決強行」(2016年11月四日 朝日新聞)

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本日は三笠宮殿下の葬儀にあたる「斂葬の儀」がとり行われた日です。その日に、国論を二分し、世論調査などでも慎重審議を求める声が過半数をゆうに超える状況のTPP法案の採決を行うというのは、明らかにTPPが国より大事な何かということでしかないでしょう。このような日に、このような採決を行うべきではないと考えますが、自民党安倍政権はどうも皇室を蔑ろにしているように思えることが多く、時として不快感を持つことがあります。
また米国をはじめ他国もTPPに対しては態度が不透明になっている中で、何を急いで決めなくてはいけないのか甚だ疑問です。既に外交安全保障面でTPPは時代の趨勢に取り残され、日本にとってプラスになるポイントはほとんどゼロになっていると考えます。それを強行するのは断末魔の自殺行為であると考えますが、それを推進したのが誰かと言うことは確実に歴史に残ります。
TPPが非民主的であることはこれまで何度も様々な場所で申し上げてきました。間違いなく非民主的で、国民にとってはプラスにはなりません。だからこそ、これからは格差が広がっていくと言うことが、TPPを推進する政権に近しい竹中平蔵氏から平然と言われるのは必然的であるのです。
世論調査ではTPPの慎重審議を求める声は6割を越えます。その中でTPPを前進させるのですからかなり無理な政治的判断がそこにはあります。なぜ、そうなるかと言えば、このTPPが日本国民の利益に沿ったものではないからです。だからこそ強行に進める必要がないときに強行に進めるということが起きると考えます。
2012年の衆議院選挙において『TPP 断固反対』と書かれた自民党のポスターは有名ですが、それから程なくして自民党はTPP推進という本質を表し、今や日本が率先してTPPをうたっています。これでは、政党の政策をうたうポスターには何を書いても、国民への約束違反にはならないという、政治の弛緩と崩壊を認めることになり、それは政治の崩壊を確実に招きます。
自民党のTPPに対する考えは云々と言い訳がなされるのでしょうが、『TPP 断固反対』は、“TPP、断固反対”という意味であるのが、日本人同士のコミュニケーションというものです。
TPPでは聖域を守ると言って、どうなったのかよくわかりませんが、それ以上にTPPに伴う日米間の二国間協議では明らかに譲歩だけが行われています。この譲歩がなされた項目が『聖域』と規定されていなかっただけで、日本にとっては明らかに不利益でしょう。そのように譲歩したのは、米国の政治家が日本から譲歩を勝ち取ったと米国民に言うための日本からの譲歩と言われていますが、正直言えば、日本側も米国から譲歩を勝ち取ったと言う必要が当然あります。しかし、それは一つもなされていません。
既に米国との関係をこれまでどおり続けることが、国益になるかを証明しなくてはならない時代になっています。先日のフィリピンのドゥテルテ大統領の発言を見てもこれは明らかです。現政権はほぼ思考停止で、何も国のためには動いていないものと考えます。
このような状況があるのに、採決を決行したというのは、これだけでも非民主的と言えます。
しかし、これだけではありません。米国大統領選挙も終盤にさしかかり、民主・共和両党の候補者の支持率が拮抗しています。そして、この両者ともTPPには反対しています。それでオバマ大統領が在任中に米国連邦議会でTPP承認を進めるという記事が出ていますが、果たしてこれが可能なのか非常に疑問です。
実際、米国大統領選挙と同時に連邦議会の下院選挙と上院選挙(三分の一)が行われます。民主・共和両党の大統領候補者は、そのような連邦議会選挙においては両党の代表者ですから、その二人ともTPP反対を唱え、それが集票の要素になっているので、上下議会の選挙に影響しないとは考えられません。米国連邦議会の議員の独立性ははるかに日本よりありますが、だからといって党の代表者が大々的に掲げているTPP反対の姿勢が議員選挙に全く無関係と言えないでしょう。なぜなら、繰り返しになりますが、TPP反対が集票の要素になっているからです。
そうなると大統領選挙結果だけではなく、上下両院議員選挙がなされてすぐにTPP賛成、議会で承認という方向になるのは普通は無理ではないかと考えます。もし、そのような方向になるのであれば、確実に米国民の選択、大統領選挙と両院議員選挙でTPPに対する判断が全く反対になると言うことになります。これでは、明らかに民意が反映されておらず、大統領選挙という最上位の選択においてのTPP反対という民意は意味をなさないことになります。これは明らかに民主的ではないということになります。
大統領がTPPに対して反対していても、そして連邦議会の選挙がこれから行われるにしてもTPPに関しては既に結論が決まっていますよ、というのがオバマ氏が在任中にTPPに承認を得るという情報が物語る実像です。これはTPP断固反対と言った政党がTPPを一番推進している姿と全く同じですが、米国も既に民主主義、政党の主張と行動は明らかに分裂して、国民は何ら確かな選択権を持ち得ないということを如実に表しています。
日本において報道されているようなオバマ政権時にTPPを米国で承認するという情報は、TPPに前のめりになっている日本側が明らかに米国の民意を無視しているということになりますし、米国の政治プロセスを蔑ろにしているということになります。このことは確実に今後の日米間の歴史に刻まれます。これで米国と良好の関係を築けるのかというのがそもそも根底的なポイントとして現状、浮上し、安倍政権によってつくり出されています。
TPPとは国と民意を超えた何かというのが本質で、それは明らかに国家と民主制を否定するものであるのです。日米両国民のプラスには何もならないのがTPPと心から考えます。

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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