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トランプ大統領誕生2
[日本の政治]
2016年11月10日 14時40分の記事

今朝(11月10日)のテレビのワイドショーを見ているとトランプ次期大統領の話題で持ちきりです。トランプ氏の人物像、言動、そして日本の政界にトランプ氏とのコネクションがあるかないか、そういうことがメインになっていました。そこに識者なる人が登場して安倍政権は今年の9月からトランプ氏とのコネクション造りに動いていますから盤石で、全然、大丈夫ですと言わんばかりの発言をしていました。
しかし、そこには明らかになぜトランプ氏が大統領に選ばれたかという最も根源的な視点はありません。そのことがポイントであり原因であって、その結果がトランプ次期大統領であるのです。部分的な指摘で反駁することが有効と考え、構造分析ができない日本のエリートの悲しき、そして危うき知性をまさに見た思いがしました。

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今後のトランプ氏の施策は、彼が今回の選挙結果をどう受け止めているかということが極めて大きなポイントです。それは米国人の反応を彼がどう受け止めているかということであり、それはとりもなおさず米国の現状がいかなる状況にあるかと言うポイントに帰結します。そしてその極めて根底的で、大きな問題が、米国だけのものか、それとも世界的なものなのかという領域にまで拡大する最大のポイントであると考えます。そしてこのことは明らかに日本の今後の行く末を考える上で非常に重要なポイントなります。

稲田防衛大臣がトランプ大統領と言うことを「想定内」と二度繰り返して記者会見で述べています。しかし、99%二者択一の大統領選挙の結果、即ちどちらかが必ず勝つ選挙と言うことを想定することは、実は子どもでもできるレベルのことでしょう。この稲田氏の発言と安倍政権は今年の9月からトランプ氏とのコネクション造りに動き盤石という発言も、本質はこのポイントが安倍政権のアキレス腱になるという認識があるからと考えます。安倍首相の言動にもそのことが如実に表れています。
稲田氏の発言を考えれば、その発言において想定外とは、例えば米大統領選挙で独立系の候補が勝利するとか、もしくはイチロー選手が大統領になるとか、はたまた宇宙人がなるとかそのレベルのものでしょう。二者択一ですから想定していないこと自体がおかしいのです。
しかし、安倍自民党政権のTPPに関する対応を見れば、明らかにヒラリー大統領、そして残りのオバマ政権時のTPP発効ということを「想定」して動いていたことは明白です。11月4日に特別委員会での採決をしていなければとこのようなことはなかったのですが、今となっては時既に遅しです。ルビコン川を渡ってしまったと言うことです。こういう状況において「想定していた」という稲田氏の発言は非常に空虚な無意味なもので、いつもながら発言の軽さを印象づけるには十分なものでした。今国会における安倍政権と自民党のTPPに対する対応は、今後、長く語り継がれる大きなポイントになることは間違いありません。現状の安倍自民党政権は日米関係を強化するには明らかに反対の動きをしています。そして、何よりも完全に時代状況にマッチしていません。その時代状況がいかなるものかすら理解していないものと考えています。

『パークアベニュー 格差社会アメリカ』
トランプ氏は選挙戦最終盤、ミシガン州で「今日は我々の独立記念日だ。労働者階級が逆襲する日だ」(2016年11月8日 毎日新聞)と述べています。この言葉は非常に象徴的で、トランプ氏の選挙戦の核心でしょう。そして、これが米国民の本音であり、現状の米国の核心でしょう。さらに、米国民は一体何から独立しようとしているのか、これが最大のポイントで、今後の世界の趨勢と考えます。
『パークアベニュー 格差社会アメリカ』(2016年)という番組があります。NHK−BSで何度も再放送されていますが、2012年に制作された番組です。内容を簡単に言うと米国における格差の構造を描いたものですが、富める者が財力を使って自分たちに有利な制度をつくりだし、そしてそのお金に政治家も流れるというものです。実際、日本でも全く同じだと私は考えますし、国民のために動く政治家が非常に少なくなっているのが日米の偽らざる実情と考えます。政治家は所詮、家内制手工業の域を出ないレベルの個人事業主に過ぎません。財力を前にすると手も足も出ませんが、人々のために政治を行っているという志がなく、ポストだけを求める政治家は容易にこの財力になびきます。それは日米どちらも変わらない性であると考えます。
いずれにせよ、『パークアベニュー 格差社会アメリカ』は極めて秀逸で、一見の価値がありますが、この番組で描かれていることが現状の米国人の民心のベースになっていると考えます。ウォール街(金融資本、軍産複合体、石油資本)とそれになびく政治家ということに米国人の多くは気がつき、それを拒否しているものと考えます。だからこそ既存の政治家でないトランプ氏というのが選択肢になっているものと考えます。
選挙戦において最後の演説というのは、以後メッセージを発することができないので、やはりその候補者の最も核心的なメッセージが発せられます。上記のトランプ氏の言葉は、まさにこの米国の構造を見据え、そのことを拒否する民衆にぶつけた、米国の現状を極めて鮮明に示すものです。米国民が独立するとういのはまさにこの構造からであるのは間違いないでしょう。
これは決してトランプ氏に限ったことではないでしょう。米国民主党の大統領選挙候補の指名を最後までクリントン氏と争ったサンダース氏とその支持者にも同じ要素が鮮明にあります。今年の大統領選挙の核心はまさにここにあると考えますし、米国民の民心のこの構造への反意が極めて大きいことを示しているのが、トランプ氏とサンダース氏に関わる現象の本質と考えます。
そして、何よりこの米国民が反意を示す構造の最たるものが「TPP」なのです。だからTPPについては日本以上に米国では反対が強いというのは当然のことなのです。それは米国人がその実態をわかっていると言うことなのです。
このような状況において、明らかに日本人の大方にとって利益にならないTPPを日本が進める、それもTPPに反対するトランプ氏が大統領に選出されてからもそれを行うということは、日本は米国の民衆の敵と自分で言っているようなものでしかありません。安倍自民党政権はその烙印を押そうとしているわけですから、非常に日本にとっては危険な方向に動いていると考えます。二重の意味で日本人にとってマイナスのことを安倍政権は進めています。
この状況が米国に伝われば明らかに民衆は日本に対して敵意を持ちます。そういうことをしているにもかかわらず、首相をはじめ閣僚からは日米関係の強化ということが言われるのは、明らかに支離滅裂、矛盾、迷走していると言えるでしょう。国内外の政策において安倍政権の方向性は既に昨日に破綻しています。安倍政権の米国に対する認識は極めて甘く、明らかに危険なのものになっています。国益を考えれば、そして日米関係を強化するのなら、日本は政権を変えて、新しい方向性を打ち出さなくてはなりません。

国境を越えた利益集団
TPPに対して米国民の反対が大きくあると聞くと、TPPが米国の日本に対する隷属化ではないということがわかります。実は郵政民営化もこれと同じで、米国の日本に対する敵対的行為が本質ではありません。その実態は日米を股にかける利益集団の利益のためなのです。それは上記の『パークアベニュー 格差社会アメリカ』で言えば、ウォール街(金融資本、軍産複合体、石油資本)とそれになびく政治家であるのです。もちろん、この構造が日本にもあると言うことです。これをグローバリズム、新自由主義と呼びます。当然、日米両国民の利益を考えてこの利益集団は動いているわけではありません。だからTPPが成立しても、郵政民営化が成立しても米国民の利益になってはいないのです。もちろん、日本のためにもなっていません。
この利益集団の最も明らかな存在が日米財界人会議なるものもなのです。そして、この利益集団の象徴的な政策がTPPで、それに米国人は「No」と言ったのです。
ですから、TPPで言われた中国包囲網なるものも単にTPPを正当化する絵空事でしかなく、中国との戦争を肯定する理由でしかないでしょう。米国人からすれば、そんな作られた戦争は私たちとは関係ない、軍産複合体などを儲けさせるだけと考えるのは今や当然と言えるでしょう。もちろん、これは日本人にとっても同じことです。しかし実際、安倍政権は中国包囲網などは構築できていません。

資本主義の終焉
このような米国人の民心が形成された原因は何かと言えば、それは端的に資本主義の終焉です。もちろんこれは共産革命を意味しませんし、そしてナショナリズムも、保護主義も意味しません。
資本主義はフロンティア(周辺)から富を吸い上げて活況を呈してきました。しかし、今やそのフロンティアはほぼなくなりました。中心が吸い上げる周辺がなくなったと言うことです。そうなると資本主義は、資本の拡大のために自らの内部から富を吸い上げます。その結果生じるのが現状、問題となっている「格差」なのです。それが1%対99%という議論であり、日本で言えば非正規労働者の激増ということなのです。そしてこの中に本当の意味での戦争の構造もあります。
そして、この構造の拡大版がTPPでしかないないということで、それを米国人はしっかりとわかっていると言うこと以外にありません。
即ち安倍政権のやってきたことでは経済は良くならないと先に米国は判断しているわけで、それは正しい認識でしょう。実際、安倍政権の言動とは裏腹に日本での消費は非常に落ち込んでいます。
こう考えると、トランプ氏の米国とメキシコの間に万里の長城を造ると言ったり、排他的な移民政策などは、その意味することは大方の予想に反して行くものと考えます。問題の本質は表面的な話にはないと考えます。
この十月、世界は大きく変わっています。そのことは今月末に発売になる『ザ・フナイ 2017年1月号』で書きました。そして、その変動の最たるものがこのトランプ次期大統領と考えます。第二次大戦後の構図・構造は確実に崩壊しています。この変動にもはや安倍政権では対応できないのは明らかです。そして、これまでの感覚では日本の舵取りはできないのです。

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内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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